第4回カリキュラム(ver1.4)
ポジショニング/価値提案:一文の「約束」を“刺さる表現”と“信じられる根拠(USP/RTB)”に落とす
(文房具カフェ/文房具カフェオンラインストア/ユウセイ堂の例)
第4回は、第3回STPの「P(ポジショニング)」で作った“一文”を、
顧客に刺さる表現(USP)と信じられる根拠(RTB)に変換して、実務で使える形に整える回です。
0. まず第3回(STP)の要点を簡単に復習(3分)
第3回では STP を学びました。
- S(Segmentation):顧客を“ニーズや行動が近いグループ”に分ける
- T(Targeting):その中から「優先して狙う層」を選ぶ(=すべてを同時に追わない)
- P(Positioning):選んだ層にとって「自分たちは何者か(どう選ばれるか)」を一文で決める
ただし、STPのPで作った“一文”は、次の理由で実務で使いづらくなることがあります。
- 伝えたい要素を盛り込みすぎて、結局の違いが伝わらない
- 競合と同じ表現になり、比較したときに弱く見える
- 「本当にそうなのか?」という 納得材料(根拠)が不足する
そこで第4回は、前回のP(ポジショニング)を顧客に伝わる形へ整えます。
この回でやること(まとめ)
顧客への約束(価値提案)を、短く・強く(USP)し、
信じられる根拠(RTB)をセットで用意する
簡易セルフチェック(30秒・頭の中でOK)
- あなたの担当(店舗/自社EC/モール)で、最も強い“顧客の状況”は何ですか?
- その状況の顧客に対して、一文で約束を言えますか?
(言いにくい場合、今日の内容がそのまま改善ポイントになります)
1. 今日のゴール(この回でできるようになること)
- 価値提案(Value Proposition)/USP/RTBの違いを、短く説明できる
- 御社の3つ(文房具カフェ/オンラインストア/ユウセイ堂)それぞれで、
「約束(USP)」と「根拠(RTB)」のセットのイメージが掴める - 明日から使える粒度で、担当チャネルについて
「一文の約束」+「根拠3つ」 を言語化できる(仮説でOK)
この回の中心テーマ
- STPのP(立ち位置)を「顧客が嬉しい言葉」へ翻訳する
- USPで一行に圧縮する(主張を一本化)
- RTBで不安を消す(信じられる根拠を揃える)
今日のアウトプット(軽量版)
- ターゲット状況を1つに固定(STPのT)
- 価値提案(約束)を一文
- USP(25字目安)
- RTB(根拠)3つ
2. 価値提案とは何か:STPのPを「お客様にとって嬉しい/満足」な言葉に変換する
価値提案(Value Proposition)を最短で言うと、次の通りです。
価値提案の定義(最短)
お客様に向けた「当社を選ぶと、どんな点が嬉しいか/どんな満足が得られるか」という約束
ポイントは、社内の言葉ではなく お客様が“嬉しいと思う点・満足につながる点” の言葉で書くことです。
社内表現(例:高品質、こだわり、丁寧)だけだと、比較場面で伝わりにくくなります。
例(社内表現 → お客様が嬉しい表現)
社内表現寄り:
「こだわりのコラボ商品です」
お客様が嬉しい表現:
「買い逃しの不安なく、正規ルートとして安心して買える。しかも作品理解と作品愛がデザインから伝わる」
3. 似た言葉を整理:ポジショニング/価値提案/USP/RTB(差し替え版)
ここでは、4つの言葉を「何が違うのか」「どういう順番で考えるのか」が混乱しない形で整理します。
結論から言うと、4つは “決める対象”が違うものです。
3-1. 4つの概念の違い(何を決めるか/どこに効くか)
| 概念 | 何を決めるものか(要点) | 視点(誰の頭の中の話か) | アウトプットの形 |
|---|---|---|---|
| ポジショニング | 競合と比べたときの 立ち位置(比較された時に、何で選ばれるか) | 市場・比較の視点(競合含む) | 「当社は◯◯として選ばれる」 |
| 価値提案(Value Proposition) | お客様が感じる 嬉しさ/満足 を約束として言語化(何が解決され、何が満たされるか) | お客様の視点 | 「◯◯なお客様に、△△な満足を提供する」 |
| USP | 価値提案を 一本の主張に圧縮(最重要メッセージを1本にする) | お客様の視点(最初に目に入る一行) | 「結局、当社の売りはこれ」1行 |
| RTB | そのUSPを信じるための 根拠(裏付け) | お客様の不安・確認の視点 | 仕様/ルール/体制/実績などの箇条書き |
要点
- ポジショニング:比較されたときの勝ち方を決める(競合が前提に入る)
- 価値提案:お客様が嬉しい/満足できる内容として約束を言語化する
- USP:価値提案を1行に要約し、伝達力を最大化する
- RTB:その1行を信じてよい理由を揃え、不安を減らす
3-2. どの順序で考えるか(実務でブレにくい手順)
おすすめの順番は、次の 5ステップです。
(※第3回STPで「ターゲット」は仮置きできている前提で進めます)
Step 0:ターゲット(STPのT)を固定する
「誰に向けた話か」が曖昧だと、以降すべてがぼやけます。
今回は、御社が指定するターゲット設定をそのまま使います(後述の第5章)。
Step 1:ポジショニングを決める(比較の場での立ち位置)
「比較されたとき、当社は“何で”選ばれるべきか?」
→ 競合が言いにくい勝ち筋を置くほど強くなります。
Step 2:価値提案に翻訳する(嬉しさ/満足の言葉へ)
「その立ち位置によって、お客様は何が嬉しくなり、何に満足できるのか?」
→ 購入前の不安がどう減り、購入後の満足が何によって増えるか、まで落とします。
Step 3:USPに圧縮する(主張を1本に絞る)
「最初の一行で言うなら何か?」
→ 言いたいことが増えるほど伝わりにくくなるので、ここで一本化します。
Step 4:RTBを揃える(信じられる裏付け)
「その主張を、どうやって証明できるか?」
→ 特にEC/モールでは、購入前不安(正規性、合致、期待通りに届くか等)を減らす決定打になります。
Step 5:整合チェック(強すぎ/弱すぎを調整)
- RTBで支えられないほどUSPが強くなっていないか
- USPが弱すぎて競合と同じ言葉になっていないか
4. 学ぶ意欲が上がる「成功事例」:強いブランドは“約束+根拠”が一体になっている(ミニケース3つ)
ここでは「約束と根拠がセットだと強い」という感覚を掴むために、一般に知られる例を挙げます。
ミニケース① Dyson:強い約束を、技術説明で裏付ける
- 約束(USPのイメージ):吸引力が落ちにくい/よく吸う
- 根拠(RTBのイメージ):技術・構造・性能の説明、比較の見せ方
学び
主張が強いほど、根拠がないと“誇張”に見える。根拠があると“納得”になる。
ミニケース② FedEx:刺さる「状況」を特定し、約束を一文で固定する
- 約束(USPのイメージ):「翌朝までに必ず届けたい」状況に応える
- 根拠(RTBのイメージ):夜間仕分け・輸送オペレーションなど、実現方法の説明
学び
「誰の・どんな状況」に向けた約束かが明確だと、一文が強くなる。
ミニケース③ Netflix:不安を消す約束を置き、機能で根拠を積む
- 約束(USPのイメージ):いつでも視聴できる/いつでも解約できる
- 根拠(RTBのイメージ):複数デバイス、オフライン視聴、解約手順の明確さ
学び
デジタル領域はRTBを「機能・ルールの明示」に落としやすい。ECの商品ページでも同じ発想が使える。
5. 作り方(軽量版):今日覚えるのは “一文+根拠3つ” だけ
この回は「完成品を作る」より、「型を理解して使える」状態を目指します。
ステップ1:ターゲット状況を1つに固定(STPのT)
※ここを、御社の前提に合わせて 明確に設定します(本カリキュラムの共通前提)。
① 文房具カフェ(実店舗)
- ターゲット設定:
表参道/原宿エリアで、休日に「ちょっとおしゃれで特別な体験をしたい」と思っている20代女性
② 文房具カフェオンラインストア(自社EC)
- ターゲット設定:
「コラボ商品を買い逃したくない」「正規ルートで安心して買いたい」人 - かつ、購入満足のポイントとして
- (a) 作品に対して深い理解が感じられる
- (b) 作品愛が感じられるデザインが非常に良い
を重視する層
③ ユウセイ堂(モール型)
- ターゲット設定:
「モールで検索・比較して、早く確実に買いたい」人 - かつ、次の不安をなくし、納得して購入したい層
- (a) 間違いなく自分が期待した商品が届くのか
- (b) そもそも自分が探している商品と合致しているのか
→ これらについて 不安なく、満足して買えることが重要
ステップ2:価値提案(約束)を一文にする
型はこれで十分です。
価値提案の型
(誰に)〇〇な人へ、(嬉しい/満足)△△ができる。だから(結果)□□になる。
ステップ3:USPに圧縮(主張を一本化)
価値提案の中から「最重要の違い」だけ残します。
ステップ4:RTBを3つ用意(根拠の種類を揃える)
店舗/自社EC/モールで、RTBの“効きどころ”が少し違います。
- 店舗:体験の設計(空間・接客・過ごし方)
- 自社EC:作品理解・作品愛が「説明とデザイン」に出ていること、正規性・安心
- モール:商品同定(合致確認)と誤配送/誤認防止、情報の明確さ、運用品質
6. 御社の例:3チャネルの「約束(価値提案)→USP→RTB(根拠)」が対応する形で見る(仮説例)
ここは理解を助けるための 例(仮説)です。
実際には、社内の事実(運用ルール、企画背景、実績等)に寄せるほど強くなります。
6-A. 文房具カフェ(実店舗)
ターゲット(前提)
表参道/原宿エリアで、休日に「ちょっとおしゃれで特別な体験をしたい」と思っている20代女性
価値提案(約束)1文(仮)
「休日に表参道・原宿で“少し特別な体験”を求める20代女性に、文房具カフェは文房具を軸にしたおしゃれな滞在体験を提供し、気分転換と満足度の高い時間を作ります。」
USP(最重要メッセージ)1行(仮)
「休日の“おしゃれで特別”を叶える文房具体験」
RTB(信じる理由)— USPに対応させて3つ(例)
- RTB1:体験が“特別”になる設計
体験の流れ(選ぶ・試す・過ごす)が成立する導線・仕掛けがある(仮説) - RTB2:“おしゃれ”の説得力(空間・見せ方)
写真・会話のきっかけになる要素や、居心地の設計がある(仮説) - RTB3:行く理由が更新される(企画性)
コラボ/イベント等により「今行く理由」が生まれる(仮説)
対応関係の見方
USPが「おしゃれで特別」→ RTBは
“特別の根拠(体験導線)” と
“おしゃれの根拠(空間・見せ方)” と
“行く理由の更新(企画性)” を揃える、という設計です。

6-B. 文房具カフェオンラインストア(自社EC:コラボグッズ)
ターゲット(前提)
「買い逃したくない」「正規ルートで安心して買いたい」
+「作品に対する深い理解が感じられる」「作品愛が感じられるデザインが非常に良い」を重視する層
価値提案(約束)1文(仮)
「買い逃したくないファンに、文房具カフェオンラインストアは“正規ルートとしての安心”と、“作品理解・作品愛が伝わる高品質なデザイン”の両方で、納得度の高い購入体験を提供します。」
USP(最重要メッセージ)1行(仮)
「作品理解と作品愛が“デザインに出ている”、安心して買えるコラボ」
RTB(信じる理由)— USPに対応させて3つ(例)
- RTB1:「作品理解」が伝わる材料
企画背景・デザイン意図・モチーフの説明など、作品理解が見える情報がある(仮説) - RTB2:「作品愛がデザインに出ている」材料
ビジュアル・仕様・ディテールで“らしさ”を感じられる設計(説明と画像)がある(仮説) - RTB3:「安心して買える」材料
販売期間/受注条件/注意事項/発送目安/問い合わせ等が整理され、不安が残りにくい(仮説)
対応関係の見方
USPが「作品理解」「作品愛」「安心」の3要素を含むため、RTBもそれぞれに 1本ずつ根拠を立てると説得力が出ます。
(この時、USPが長くなりすぎる場合は、最重要要素を1つに寄せてUSPを短くし、RTB側で補うのが実務的です)

6-C. ユウセイ堂(モール型)
ターゲット(前提)
「モールで検索・比較して、早く確実に買いたい」
+「期待した商品が届くか」「探している商品と合致しているか」の不安なく、満足して買いたい層
価値提案(約束)1文(仮)
「モールで商品を検索・比較し、早く確実に買いたい人に、ユウセイ堂は“探している商品と合致していることが確認できる情報”と“期待通りに届く運用”で、不安なく満足して購入できる体験を提供します。」
USP(最重要メッセージ)1行(仮)
「合致確認ができ、期待通りに届く“安心な買い物”」
RTB(信じる理由)— USPに対応させて3つ(例)
- RTB1:「合致確認」ができる材料(買い間違い防止)
型番・仕様・サイズ・対応条件など、判断に必要な情報が明確(仮説) - RTB2:「期待通り」が伝わる材料(誤認防止)
注意点・比較ポイント・写真の整備により、誤解が起きにくい(仮説) - RTB3:「届く安心」を支える材料(運用・配送)
検品・梱包・出荷・問い合わせ対応が安定している(レビューや評価につながる)という裏付けがある(仮説)
対応関係の見方
USPが「合致」×「期待通りに届く」→ RTBは
“合致判断の材料” と
“誤認防止の材料” と
“運用品質の材料” を揃えるのが合理的です。

7. よくある失敗(この回の落とし穴)
- USPが抽象的:「高品質」「丁寧」「安心」だけでは差が伝わりにくい
- USPが複数:伝えるテーマが増えるほど、結局どれも印象に残らない
- RTBが“気持ち”中心:「こだわり」「厳選」だけでは納得材料になりにくい(具体が必要)
- チャネル間で約束が不整合:店舗は体験を約束しているのに、発信は価格中心、など
- 顧客の状況と約束がズレる:買い逃し回避の顧客に、安心の根拠が提示されない、など
8. ChatGPTへの質問例(この回は合計5つ)
使い方:まずは ①〜③(担当に近いもの1つ)だけでOK。余裕があれば④⑤。
※枠内をドラッグ選択してコピーしてください(折り返し設定済み)。
① 文房具カフェ:価値提案→USP→RTBを1セットで作る
あなたは社内マーケ講師です。 表参道の「文房具カフェ」について、以下を“仮説”で作ってください。 前提ターゲット:表参道/原宿エリアで、休日に「ちょっとおしゃれで特別な体験をしたい」と思っている20代女性。 1) ターゲット状況(来店動機)を3つ 2) 最優先ターゲットを1つ選ぶ(理由も一言) 3) 価値提案(約束)を1文(60字以内) 4) USP候補を1つ(25字以内) 5) RTB(信じる理由)を3つ(事実ベースの書き方で) 最後に、事実確認が必要な前提を5つ挙げてください。
② オンラインストア:作品理解・作品愛(デザイン)+安心をセットで設計
あなたは社内マーケ講師です。 「文房具カフェオンラインストア(コラボグッズ)」について、 前提ターゲット: - コラボ商品を買い逃したくない - 正規ルートで安心して買いたい - 作品に対する深い理解が感じられる - 作品愛が感じられるデザインが非常に良い を重視する層。 このターゲット向けに 1) 価値提案1文(60字以内) 2) USP(25字以内) 3) RTBを3つ(例:企画背景の説明、情報設計、運用、体制、実績など) を作ってください。 加えて「不信につながる表現・条件・表記の例」も3つ挙げてください。
③ ユウセイ堂:合致確認と“期待通りに届く”不安をなくす
あなたは社内マーケ講師です。 「ユウセイ堂(モール型)」について、前提ターゲット: - モールで検索・比較して、早く確実に買いたい - 間違いなく期待した商品が届くのか不安 - 探している商品と合致しているのか不安 これらについて、不安なく満足して買えることを重視する層。 このターゲット向けに 1) 価値提案1文(60字以内) 2) USP(25字以内) 3) RTBを3つ(商品ページで示せる形) を作ってください。 最後に、RTBを「合致確認(買い間違い防止)」と「届く安心(運用・配送)」に分類してください。
④ 3チャネル横断:メッセージの整合(食い合い防止)
文房具カフェ(店舗)/オンラインストア(自社EC)/ユウセイ堂(モール)で、 価値提案・USPが食い合わないように整合させたいです。 各チャネルの「主張(USP)」を1つずつ提案し、3つがつながる理由も説明してください。 さらに、全社共通の“ブランドとしての約束”を1文で作ってください。
⑤ 理解チェック:価値提案/USP/RTBのクイズ
今日のテーマ「価値提案(Value Proposition)・USP・RTB」について理解チェック問題を5問作ってください。 形式:○×2問、選択式2問、短答1問。解答と解説付き。 例は、文房具カフェ/オンラインストア/ユウセイ堂から必ず入れてください。
9. 理解チェック(3問・5分)
- 「ポジショニング」と「価値提案」の違いを一言で言うと?
- USPを“1本に絞る”メリットは?
- RTBが弱いと、何が起きやすい?(店舗/自社EC/モールのどれかで例を1つ)
10. 今日のまとめ(3行)
- 第3回のSTPで作った「立ち位置(P)」を、今日の回で 価値提案→USP→RTB に落とすと、顧客に伝わる形になる。
- USPは主張、RTBは裏付け。セットにすると、購入前の不安や迷いを減らし、満足につながりやすい。
- 御社は、店舗=休日の“特別体験”/自社EC=作品理解・作品愛×安心/モール=合致確認×期待通りに届く、というように 状況別に約束と根拠を設計するとブレにくい。
次回予告(第5回)
次回は 4P / 4C に進みます。
第4回で固めた「約束(USP)と根拠(RTB)」を、
商品・価格・販路・プロモーションの具体施策に落としていきます。