第12回カリキュラム(ver2.0)
粗利/貢献利益の実務計算:SNS・EC転換率・店舗の客単価/回転の基本指標から、KGI(利益)を“計算で”達成する道筋を作る
(文房具カフェ/文房具カフェオンラインストア/ユウセイ堂の例)
第12回は、改善施策を「売上」ではなく粗利/貢献利益で判断できるようにし、
SNS・CVR・客単価/回転などの基本指標から、KGI(利益)を“計算式”で分解して到達方法を作ります。
0. まず第11回(検証と実験)の要点を簡単に復習(3分)
第11回では、改善施策を実験として設計し、何が効いたかを切り分ける型を学びました。
- 仮説を1本(If→Then)にする
- Primary / Secondary / Guardrail を置く
- A/B・前後比較・準実験で「比較」する
ただし、実験でCVRなどのKPIが改善しても、利益が増えているとは限りません。
そこで第12回は、施策を「売上」ではなく、粗利/貢献利益で判断できるようにし、KGI(利益)につなげます。
1. 今日のゴール(この回でできるようになること)
- 売上・粗利・貢献利益の違いを説明できる
- チャネル別(店舗/自社EC/モール)に、1回(1注文/1来店)あたりの貢献利益を計算できる
- SNS・EC転換率・店舗の客単価/回転などの基本指標から、
KGI(利益)を“分解式”で表現できる
この回のキーメッセージ
- 売上=良いではない(利益が残るかが重要)
- 粗利だけだとブレる → 貢献利益(1件あたり)で見る
- KGI(利益)=件数 × 1件あたり利益
- 基本指標(SNS/EC/店舗)を計算でKGIにつなぐ
今日のアウトプット(軽量版)
- 売上/粗利/貢献利益の整理
- 自分の担当チャネルの「1件あたり貢献利益」計算テンプレ
- KGI(利益)を分解式で書いた“式ツリー”
- ダミー数値で計算演習(後で自社数字に置換)
2. まずここを整理:売上・粗利・貢献利益(実務で必要な最小セット)
2-1. 売上(Sales)
- 売上=お客様からいただいた金額の合計
- ただし「売上が増えた=良い施策」とは限りません(利益が残らない場合がある)
2-2. 粗利(売上総利益)
- 粗利=売上 − 売上原価
- 粗利率=粗利 ÷ 売上
ポイント
まず粗利が分かると、「値引きすると何が起きるか」「原価が高いと何が起きるか」が判断しやすくなります。
2-3. 貢献利益(“1件あたりで実際に残る利益”として使う)
ECやモールでは、注文が増えるほど増えるコスト(変動費)が多いため、粗利だけだと判断がブレます。
そこでこのカリキュラムでは、実務判断のために次を扱います。
- 貢献利益(例)=粗利 −(注文ごとの変動費)
- 例:決済手数料、送料負担、梱包資材、モール手数料、出荷作業費(外注費)など
呼び方について
呼び方は社内で「実質粗利」「注文あたり利益」でも構いません。
重要なのは、1注文(または1来店)あたりで、どれだけ残るかを見える化することです。

3. 基本指標(SNS・EC・店舗):KGIに効く“レバー”を理解する
ここから「KGI(利益)を作る材料」になる基本指標を整理します。
3-1. SNSの基本:インプレッション/エンゲージメント/CTR
- インプレッション(Impressions):表示された回数
- リーチ(Reach):見た人数(同じ人に複数表示されても1人)
- エンゲージメント(Engagements):反応(いいね、保存、コメント、シェア等)
- エンゲージメント率(ER):Engagements ÷ Impressions
- リンククリック数:サイトへ遷移した回数
- CTR(クリック率):リンククリック数 ÷ Impressions
使い分け(実務的な見方)
- 「興味が出ているか」を見る → ER(作品理解・作品愛が伝わっているかの兆し)
- 「サイトへ送れているか」を見る → CTR(EC/予約導線につなぐなら重要)
3-2. オンライン(EC/モール)の基本:転換率(CVR)と周辺指標
- セッション(Sessions):サイト訪問数(商品ページ閲覧の母数)
- CVR(転換率):購入件数 ÷ セッション
- カート投入率:カート投入数 ÷ セッション
- 購入完了率:購入完了数 ÷(カート投入数 など)
- 客単価(AOV):売上 ÷ 注文件数
ポイント
CVRは結果。改善の原因を掴むには、カート投入率/購入完了率なども見ると切り分けしやすい(第9回と接続)。
3-3. 実店舗の基本:客単価と回転数(+席数・稼働率)
- 客単価:売上 ÷ 客数
- 客数:来店人数(席数ビジネスでは「席が何回回ったか」に強く影響)
- 回転数:1席(または1テーブル)が、一定時間で何回利用されたか
- 稼働率:席が埋まっている割合(混雑時間帯の“取りこぼし”を可視化)
店舗の基本形(まずこれ)
売上=客数 × 客単価
客数(目安)=席数 × 回転数 × 稼働率

4. 基本指標からKGI(利益)へ:分解式で“到達方法”を作る
第8回で扱った「KGI」を、今回は利益(粗利/貢献利益)として置き、基本指標で分解します。
ここが第12回の核心です。
4-1. 共通の考え方(まずこれだけ覚える)
KGI(利益)の基本形
KGI(利益)=件数(客数/注文件数)× 1件あたり利益(粗利/貢献利益)
その「件数」をさらに分解すると、チャネルごとのレバーが見えます。
4-2. 文房具カフェ(実店舗)のKGI分解(例)
- KGI(例):月間 粗利(または貢献利益)
- 分解式(例)
- 月間粗利=月間売上 × 粗利率
- 月間売上=客数 × 客単価
- 客数=席数 × 回転数 × 稼働率
→ 店舗で効くレバーは、ざっくり言うと
客単価/回転数/稼働率/粗利率 のどれを動かすか、になります。
4-3. 文房具カフェオンラインストア(自社EC)のKGI分解(例)
- KGI(例):キャンペーン期間の総貢献利益
- 分解式(例)
- 総貢献利益=注文件数 × 1注文あたり貢献利益
- 注文件数=セッション × CVR
- セッション(SNS由来のイメージ)=インプレッション × CTR
→ 自社ECで効くレバーは
CTR(流入)/CVR(転換)/客単価/1注文あたり貢献利益(原価・送料・手数料) です。
4-4. ユウセイ堂(モール型)のKGI分解(例)
- KGI(例):月間 総貢献利益
- 分解式(例)
- 総貢献利益=注文件数 × 1注文あたり貢献利益
- 注文件数=商品ページ閲覧数 × CVR
- 商品ページ閲覧数=表示回数(IMP)× CTR(検索結果→商品ページ)
→ モールで効くレバーは
検索結果CTR/CVR/モール手数料・返品等を含む貢献利益 です。
5. 計算演習:粗利/貢献利益を“実際に計算”して、KGIまでつなげる(10〜15分)
以下は練習用のダミー数値です。
まずは自分で計算し、必要なら電卓 or ChatGPTで確認してください。
演習0(SNSの基本):ERとCTRを計算する(1分)
ある投稿の実績が以下だとします。
- インプレッション:120,000
- エンゲージメント:3,000
- リンククリック:1,200
問
- エンゲージメント率(ER)は?
- CTRは?
演習1:文房具カフェ(実店舗)—「客数×客単価×粗利率」で1日粗利を計算
前提(ダミー)
- 席数:40席
- 営業時間:10時間
- 平均滞在:2時間 → 回転数=10 ÷ 2=5回
- 稼働率:75%
- 客単価:2,200円
- 粗利率:55%
問
- 1日の客数(目安)
- 1日の売上
- 1日の粗利
- 月22営業日なら、月間粗利はいくら?
演習2:文房具カフェオンラインストア(自社EC)—「1注文あたり貢献利益」と総貢献利益を計算
前提(ダミー、1注文あたり)
- 販売価格:5,500円
- 売上原価:2,200円
- 送料負担:400円
- 梱包資材:80円
- CS等の変動費:50円
- 決済手数料:売上の3%(=5,500×3%)
さらに、期間中の集客・転換が以下だとします。
- セッション:30,000
- CVR:2.2%
問
- 1注文あたり粗利
- 1注文あたり貢献利益
- 注文件数
- 総貢献利益
- CVRが2.5%に改善したら、総貢献利益はどれだけ増える?(1注文あたり貢献利益は同じとする)
演習3:ユウセイ堂(モール型)— モール手数料込みで貢献利益を計算し、CTR改善の効果を見る
前提(ダミー、1注文あたり)
- 販売価格:3,200円
- 売上原価:1,500円
- モール手数料:売上の10%(=3,200×10%)
- 梱包資材:70円
- 出荷作業費:60円(※送料は購入者負担として0円とする)
集客・転換(ダミー)
- 表示回数(IMP):200,000
- CTR(検索結果→商品ページ):2.0%
- CVR(商品ページ→購入):4.0%
問
- 1注文あたり貢献利益
- クリック数(商品ページ閲覧の目安)
- 注文件数
- 総貢献利益
- CTRが2.4%に改善した場合、総貢献利益はいくら増える?(CVRと貢献利益は同じとする)
解答例(自己採点用)
先に自分で解いてから見てください。
演習0
- ER=3,000 ÷ 120,000=2.5%
- CTR=1,200 ÷ 120,000=1.0%
演習1
- 客数=40席 × 5回 × 75%=150人
- 売上=150 × 2,200=330,000円
- 粗利=330,000 × 55%=181,500円
- 月間粗利=181,500 × 22=3,993,000円
演習2
- 粗利=5,500−2,200=3,300円
- 決済手数料=5,500×3%=165円
貢献利益=3,300−400−80−50−165=2,605円 - 注文件数=30,000×2.2%=660件
- 総貢献利益=2,605×660=1,719,300円
- 注文件数(改善後)=30,000×2.5%=750件 → 増分90件
増分利益=2,605×90=234,450円
演習3
- モール手数料=3,200×10%=320円
貢献利益=3,200−1,500−320−70−60=1,250円 - クリック数=200,000×2.0%=4,000
- 注文件数=4,000×4.0%=160件
- 総貢献利益=1,250×160=200,000円
- CTR2.4%→クリック4,800→注文192件(増分32件)
増分利益=1,250×32=40,000円
6. よくある失敗(粗利/貢献利益と基本指標でつまずくポイント)
- 売上だけ見て判断してしまう(手数料・送料負担で利益が消える)
- “1件あたり利益”が見えていないため、施策の効果が議論で終わる
- SNSの指標を見ても、CTRやCVRに接続できていない(KGIにつながらない)
- 店舗で「来店数」を追うが、回転数・稼働率・客単価のどれを動かすかが曖昧
7. ChatGPTへの質問例(この回は合計5つ)
使い方:まずは ①〜③(担当に近いもの1つ)だけでOK。余裕があれば④⑤。
① 文房具カフェ:店舗の「粗利KGI」を分解式で作る
あなたは社内マーケ講師です。 文房具カフェ(実店舗)について、KGIを「月間粗利」に置きます。 月間粗利を「客数×客単価×粗利率」で分解し、 客数をさらに「席数×回転数×稼働率」で分解した“計算式ツリー”を作ってください。 また、どの数字を改善すると効きやすいか(優先レバー)を3つ提案してください。
② オンラインストア:1注文あたり貢献利益のテンプレを作る(自社数字に置き換え)
あなたは社内マーケ講師です。 文房具カフェオンラインストア(自社EC)について、 「1注文あたり貢献利益」を計算するテンプレ(項目リストと計算式)を作ってください。 含めたい項目:販売価格、原価、決済手数料、送料負担、梱包資材、CSの変動費。 最後に、貢献利益を上げる代表的な改善方向を5つ挙げてください(値引き以外も含めて)。
③ ユウセイ堂:モール手数料込みで貢献利益を計算し、CTR/CVRの改善効果を試算
あなたは社内マーケ講師です。 ユウセイ堂(モール型)について、 「総貢献利益=IMP×CTR×CVR×貢献利益/注文」という簡易式でモデル化してください。 さらに、CTRを0.4pt、CVRを0.5pt改善した場合の効果を、 式の形で示し、どちらが優先になりやすいかも説明してください(前提は仮でOK)。
④ 3チャネル横断:KGI(利益)を共通フォーマットで見える化
文房具カフェ(店舗)/オンラインストア(自社EC)/ユウセイ堂(モール)について、 各チャネルのKGIを「月間の粗利(または総貢献利益)」に置いた場合の 最小KPIセット(5個以内)を提案してください。 KPIは「上流(SNS/露出)」「中流(CTR/CVR)」「下流(1件あたり利益)」の視点で整理してください。
⑤ 理解チェック:粗利・貢献利益・転換率のクイズ
今日のテーマ「粗利/貢献利益と基本指標(SNS・CVR・客単価/回転)」について理解チェック問題を5問作ってください。 形式:○×2問、選択式2問、短答1問。解答と解説付き。 例は、文房具カフェ/文房具カフェオンラインストア/ユウセイ堂から必ず入れてください。
8. 理解チェック(3問・5分)
- 粗利と貢献利益の違いは何?(一言で)
- 自社ECで「CVRが上がったのに利益が増えない」典型原因を1つ挙げると?
- 店舗の売上を増やす打ち手を、客単価/回転数/稼働率の観点で1つずつ言える?
9. 今日のまとめ(3行)
- KGI(利益)=件数×1件あたり利益。まずは粗利/貢献利益を計算できるようにする。
- SNS(IMP/ER/CTR)、オンライン(CVR等)、店舗(客単価/回転/稼働)という基本指標を、KGIに接続する。
- 以降の施策・実験(第11回)も、KPIだけでなく利益が増えているかで判断できるようになる。
次回予告(第13回)
次回は リピート設計(CRM) に進みます。
第12回で「1件あたり利益」と「件数の作り方」を押さえた上で、
2回目・3回目につなぐ接点(店舗/自社EC/モールそれぞれ)を設計し、
KGI(利益)を安定して積み上げる考え方を整理します。