第13回カリキュラム(ver1.0)
広義CRM(再顧客化・再接触・SNS上での想起):一度の購入/来店を「次の行動」につなげて、KGI(利益)を安定的に積み上げる
(文房具カフェ/文房具カフェオンラインストア/ユウセイ堂の例)
第13回は、CRMを「配信ツール」ではなく再顧客化/再接触/想起まで含めた“広義の設計”として捉え、
一度の購入・来店を次の件数につなげて、KGI(利益)を安定的に積み上げる考え方を整理します。
0. まず第12回(粗利/貢献利益と基本指標)の要点を簡単に復習(3分)
第12回は、施策やKPIを「売上」ではなく 粗利/貢献利益で判断できるようにする回でした。重要ポイントは以下です。
- KGI(利益)=件数(客数/注文件数)× 1件あたり利益(粗利/貢献利益)
- SNS(IMP/ER/CTR)、EC(CVR/AOV)、店舗(客単価/回転/稼働)の基本指標は、最終的にこの式へ接続できる
ここまでで「利益を計算してKGIに落とす」準備はできました。
ただし実務では次の問題が残ります。
- 新規獲得だけだと波が大きく、KGI(利益)が安定しにくい
- せっかくの購入・来店が“単発”で終わると、次の件数が積み上がらない
- SNSや接点があっても、時間が経つと忘れられ、必要な瞬間に思い出されない
そこで第13回は、CRMを「狭い意味の配信ツール」ではなく、
再顧客化/再接触/SNS上での想起まで含めた“広義のCRM”として扱い、件数を積み上げる設計を学びます。
1. 今日のゴール(この回でできるようになること)
- 広義CRMを 「再顧客化」「再接触」「想起」で説明できる
- 3チャネル(店舗/自社EC/モール)それぞれで、
“次の行動”を定義し、そこへつなぐ接点を設計できる(仮説でOK) - 第12回の式(件数×1件あたり利益)に接続して、
CRM施策を「利益に効く打ち手」として理解できる
この回のキーメッセージ
- CRMは「配信」ではなく次の行動につなげる設計
- 成果はリピート/再顧客化/想起の3つで整理すると混乱しない
- まず次の行動を1つに決める(チャネルごとに違う)
- 効果は増えた件数 × 1件あたり利益で概算できる
今日のアウトプット(軽量版)
- 担当チャネルの「次の行動」定義(1つ)
- 再接触の理由(コンテンツ)3つ
- 接点(SNS/商品ページ/購入後/店内など)ごとの置き方
- 上流・中流・下流の指標セット(8個以内)
2. 広義CRMとは何か:リピートだけでなく「再顧客化・再接触・想起」まで含める
この回で扱うCRMは、一般に言われる「顧客関係管理ツール」や「メール配信」だけではありません。
“お客様との関係を、次の行動につなげる設計”全体を指します。
2-1. 今日のCRMを3つの成果に分ける(混乱しないための整理)
① リピート(Repeat)
- 定義:最近利用したお客様が、もう一度利用する(来店・購入・閲覧・お気に入り等)
- 狙い:2回目・3回目を増やし、件数を積み上げる
② 再顧客化(Reactivation)
- 定義:しばらく離れていたお客様が、戻ってくる(再購入・再来店・再閲覧)
- 狙い:「眠っているお客様」を起こし、件数を取り戻す
③ 想起(Recall / Top-of-mind)
- 定義:必要な瞬間に、SNSや記憶の中で「そういえば文房具カフェ/ユウセイ堂…」と浮かぶ状態
- 狙い:比較・検索の場面で“候補に入る”確率を上げる(AIDMAのMemory、AISASのShareとも接続)
ポイント
リピートと再顧客化は「行動」ですが、想起は「選ばれる土台(記憶・印象)」です。
想起が弱いと、いざ必要な時に検索・比較の土俵にすら上がれません。
2-2. 再接触(Re-contact)は“手段の設計”
再接触は成果ではなく、上の3つ(リピート/再顧客化/想起)を生むための“接点設計”です。
再接触の代表例(ツールというより接点)
- SNS投稿(想起の継続、作品理解・作品愛の伝達、体験の想像)
- 検索で見つかる情報(商品ページ、Q&A、比較、Googleマップ)
- 通知・告知(発売/受注開始、イベント、再入荷、予約枠)
- 購入後接点(同梱物、購入メール、開封体験、使い方、関連商品)
- 店舗体験(次回に行く理由、写真・共有のきっかけ、イベント導線)
- モール内機能(お気に入り、フォロー、レビュー、再購入導線)

3. どの順序で考えるか:CRMを“利益(KGI)につながる設計”にする手順
おすすめは次の 6ステップです。
Step 0:KGI(利益)に接続する前提を置く(第12回)
- KGI(利益)=件数×1件あたり利益(粗利/貢献利益)
- CRMは「件数」を増やす打ち手になりやすい、という立ち位置で捉えます。
Step 1:「次の行動」を1つに決める(最重要)
チャネルごとに“次の行動”が違うため、ここが曖昧だと設計が散ります。
- 店舗:2回目来店(または予約)
- 自社EC:次回コラボの購入(または発売前の通知登録)
- モール:同カテゴリの再購入/関連商品の追加購入/フォロー・お気に入り
Step 2:顧客状態を3つに分ける(運用を簡単にする)
- 新規(初回)
- アクティブ(最近利用している)
- 休眠(一定期間利用がない)
実務メモ
厳密な期間より「社内で共通の線引き」を決めることが重要です。
Step 3:再接触の“理由(コンテンツ)”を用意する
再接触は頻度を上げるほど良いわけではありません。鍵は「接触の理由」です。
理由の代表例(御社と相性が良いもの)
- 新作・企画(行く/見る理由ができる)
- 作品理解・作品愛が伝わる裏側(想起が強くなる)
- 不安を減らす情報(合致確認、正規性、条件明確)
- 使い方・楽しみ方(満足→共有→想起の循環)
- 次に迷わない導線(再購入がスムーズ)
Step 4:再接触の“場所(接点)”を決める
同じ内容でも、場所が違うと効き方が変わります。
例:SNSで想起を作り、詳細は商品ページ/Q&Aで不安を潰し、最後に購入導線へ。
Step 5:測る指標を「3段」で置く(第12回の基本指標に接続)
- 上流(想起・再接触):IMP/ER/CTR、フォロー、保存、指名検索の兆し
- 中流(再行動):再来店、再購入、通知登録、予約、再閲覧
- 下流(KGI):件数×1件あたり利益 → 粗利/貢献利益
Step 6:小さく試す(第11回の実験設計と接続)
CRMも「一気に仕組みを作る」より、
再接触の理由×場所×タイミングを小さく試して、勝ち筋を残すのが現実的です。

4. 学ぶ意欲が上がる「成功パターン」:広義CRMが効く典型(ミニケース3つ)
※特定企業の内部施策ではなく、一般に再現しやすい成功パターンとして整理します。
ミニケース① 購入後の“満足の言語化”が、次の想起と共有を生む
- 開封・使用・背景の理解が深まると「語れる」状態になり、SNS共有が自然に増える
- 学び:購入後接点は「次の獲得」を作れる(AISASのShareに接続)
ミニケース② 「不安を先回りして減らす情報」は、再購入を早める
- 次回も同じ不安(合致・届く・条件)が出る
- それを短時間で解消できる状態にすると、再購入がスムーズになる
- 学び:モールやECは“買う前の不安”が再来するので、CRMでもRTBが効く
ミニケース③ 「次に戻る理由」を定期的に作ると、忘れられにくい
- 季節企画、限定企画、連載コンテンツなどで「次に見る理由」ができる
- 学び:想起は偶然ではなく、理由と頻度で設計できる
5. 御社の前提(ターゲット・約束)をもう一度確認
第13回も前提は固定します(第4回以降と同じ)。
① 文房具カフェ(実店舗)
- ターゲット:表参道/原宿エリアで、休日に「ちょっとおしゃれで特別な体験をしたい」と思っている20代女性
- USP(例):休日の“おしゃれで特別”を叶える文房具体験
② 文房具カフェオンラインストア(自社EC)
- ターゲット:「買い逃したくない」「正規ルートで安心して買いたい」
+(a)作品理解が感じられる(b)作品愛が感じられるデザインが非常に良い - USP(例):作品理解と作品愛が“デザインに出ている”、安心して買えるコラボ
③ ユウセイ堂(モール型)
- ターゲット:「モールで検索・比較して、早く確実に買いたい」
+(a)期待した商品が届くか(b)探している商品と合致しているか の不安なく満足して買いたい - USP(例):合致確認ができ、期待通りに届く“安心な買い物”
6. 御社の例:チャネル別に「次の行動」→「再接触の理由」→「接点」→「指標」を整理(仮説例)
ここは理解を助けるための仮説例です。
実務では、まず “次の行動”を1つに絞ると設計がまとまります。
6-A. 文房具カフェ(実店舗):再来店+SNS想起を中心に設計
1) 次の行動(まず1つ)
- 2回目来店(または予約)(「また行きたい」を“予定に入れる”まで落とす)
2) 再接触の理由(お客様が嬉しい/満足につながるもの)
- 企画の更新:今行く理由(季節、コラボ、イベント)
- 体験の想像ができる:滞在イメージ(誰と/何をする/どんな写真が撮れる)
- 来店前不安の低減:混雑、予約、所要時間、料金の分かりやすさ
3) 再接触の主な接点(例)
- SNS(Instagram中心):企画告知+体験の雰囲気+“次回予告”
- Googleマップ:営業時間・混雑・予約導線・写真
- 店内:次回企画の案内、写真スポット、共有しやすい導線
- 来店後:次回企画の告知(SNSでの想起を作る)
4) 見る指標(第12回の基本指標に接続)
- 上流(想起):投稿のIMP、保存・シェア、プロフィール遷移
- 中流(再行動):予約ページ到達、予約完了、イベントページ閲覧
- 下流(KGI):来店数×客単価×粗利率(または貢献利益)
6-B. 文房具カフェオンラインストア(自社EC):再購入+発売前想起を中心に設計
1) 次の行動(まず1つ)
- 次回コラボの購入(または、その手前の「発売・受注の通知に確実につながる状態」)
2) 再接触の理由(お客様が嬉しい/満足につながるもの)
- 買い逃し不安を減らす:発売・受注・締切・発送の見通し
- 作品理解・作品愛が伝わる:企画背景・意図・デザインの見どころ
- 購入後満足の強化:開封体験、使い方、こだわりポイント(語れる材料)
3) 再接触の主な接点(例)
- SNS:制作背景の連載、見どころの短尺
- ECサイト:発売/受注カレンダー(あるいは分かりやすい告知導線)
- 購入後接点:同梱物(背景・次回予告)、購入後メール(注意事項+楽しみ方)
- レビュー/投稿:購入後の満足が可視化される接点(想起の増幅)
4) 見る指標
- 上流:SNSの保存・シェア、CTR、サイト流入
- 中流:再訪率、発売告知ページ閲覧、CVR(再訪時)
- 下流(KGI):注文件数×1注文あたり貢献利益(第12回)
6-C. ユウセイ堂(モール型):再購入+合致不安の再発を潰す設計
1) 次の行動(まず1つ)
- 同カテゴリの再購入(または関連商品の追加購入)
- モール内では お気に入り・フォローも「再接触の土台」として価値が高い
2) 再接触の理由(お客様が嬉しい/満足につながるもの)
- 次回も迷わない:合致確認が速い、買い間違い不安がない
- 期待通りに届く安心:説明と運用の一貫性
- 比較が楽:判断ポイントが整理されている
3) 再接触の主な接点(例)
- モール内:お気に入り、フォロー、再購入導線、Q&A、比較情報
- 商品ページ:合致チェックリスト、注意点、関連商品(補助情報)
- 購入後:レビュー(満足の可視化)、次回に迷わない情報(説明の整備)
4) 見る指標
- 上流:検索結果CTR、商品ページ閲覧
- 中流:CVR、Q&A閲覧、返品理由「不一致」、低評価レビュー率
- 下流(KGI):注文件数×貢献利益/注文(モール手数料等含む)
7. ミニ演習(5分):CRM施策がKGI(利益)にどう効くか、式で考える
第12回の基本形を使います。
基本式
KGI(利益)=件数 × 1件あたり利益
例:自社ECで「再購入(リピート)件数」が月に +80件増え、
1注文あたり貢献利益が 2,600円だとすると、
- 利益増分=80 × 2,600=208,000円
このように、CRMは「件数」を積み上げる施策なので、
“増えた件数×1件あたり利益”で効果を概算できるのが実務上の強みです。
8. よくある失敗(広義CRMで起きがちなこと)
- 再接触の回数だけ増える:理由(コンテンツ)が弱いと、見られない/離れる
- チャネルの“次の行動”が曖昧:店舗・EC・モールで同じCRMをやろうとして散る
- 想起(Memory)を軽視:短期のCVRばかり見て、候補に入る力が育たない
- 不安(RTB)を置く場所が違う:特にモール・ECは「合致」「条件」「届く安心」が再発する
- 測る指標がない:上流(想起)・中流(再行動)・下流(利益)を最低限つなぐ
9. ChatGPTへの質問例(この回は合計5つ)
使い方:まずは ①〜③(担当に近いもの1つ)だけでOK。余裕があれば④⑤。
① 文房具カフェ:再来店とSNS想起を含む“広義CRM”設計
あなたは社内マーケ講師です。 前提ターゲット:表参道/原宿エリアで、休日に「ちょっとおしゃれで特別な体験をしたい」20代女性。 文房具カフェ(実店舗)の広義CRMとして、 1) 「次の行動」(例:2回目来店/予約)を1つ定義 2) 再接触の理由(企画更新・体験想像・来店前不安の低減など)を3つ 3) 接点(SNS/Googleマップ/店内/来店後)ごとのメッセージ案を各2つ 4) 上流/中流/下流で見る指標(最大8個) を提案してください。
② オンラインストア:再顧客化(休眠復帰)と想起(発売前)を両立する設計
あなたは社内マーケ講師です。 前提ターゲット:買い逃したくない/正規ルートで安心して買いたい+作品理解・作品愛(デザイン)が重要。 文房具カフェオンラインストア(自社EC)について、 「アクティブ」「休眠」の2状態を想定し、 - それぞれに対する再接触の理由(何を届けると嬉しいか) - SNS/サイト/購入後接点での具体施策 - “買い逃し不安”を減らす情報設計(どこに何を置くか) を整理してください。 最後に、CRM施策の効果を「増えた注文件数×貢献利益/注文」で概算する例も添えてください。
③ ユウセイ堂:再購入を増やすための「次回迷わない」設計(合致不安の再発を潰す)
あなたは社内マーケ講師です。 前提ターゲット:モールで検索・比較して早く確実に買いたい/合致不安・届く不安をなくしたい。 ユウセイ堂(モール型)について、 1) 次の行動(再購入/お気に入り/フォロー等)を1つ定義 2) 再接触の理由(次回迷わない、比較が楽、届く安心)を3つ 3) 商品ページ上で追加すべき情報(RTB)を「合致」「届く安心」で分けて提案 4) 指標(検索CTR、CVR、返品理由不一致、低評価率など)を最大8個 をまとめてください。
④ 3チャネル横断:全社として“想起”を作るコンテンツ柱を設計
文房具カフェ(店舗)/オンラインストア(自社EC)/ユウセイ堂(モール)を横断して、 SNS上の想起を作る「コンテンツの柱」を3本提案してください。 条件: - 作品理解・作品愛が伝わる - 安心(正規性/合致/届く)につながる - 店舗の“特別体験”にもつながる 各柱について、投稿テーマ例を各5個ずつ挙げてください。
⑤ 理解チェック:広義CRM(再顧客化・再接触・想起)クイズ
今日のテーマ「広義CRM(再顧客化・再接触・想起)」について理解チェック問題を5問作ってください。 形式:○×2問、選択式2問、短答1問。解答と解説付き。 例は、文房具カフェ/オンラインストア/ユウセイ堂から必ず入れてください。
10. 理解チェック(3問・5分)
- 「リピート」「再顧客化」「想起」は、それぞれ何が違う?(一言ずつ)
- 再接触の回数を増やしても成果が出ないのは、どんな時?(原因を1つ)
- CRM施策の効果を利益で概算する基本式は?(第12回の式で)
11. 今日のまとめ(3行)
- 広義CRMは、リピート/再顧客化/想起をつくるための「再接触の設計」。
- まずチャネルごとに “次の行動”を1つ決め、理由(コンテンツ)×接点×タイミングで組み立てる。
- 効果は (増えた件数)×(1件あたり利益)で概算でき、KGI(利益)に接続しやすい。
次回予告(第14回)
次回は 行動経済学・行動心理 に進みます。
第13回で設計した再接触・想起の接点に対して、
「なぜ迷うのか/なぜ不安になるのか」を踏まえ、不安を減らして前に進める“効かせ方”(表現・情報順序・選択肢設計など)を整理します。