コース内容
Marketing Basic Lecture
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東光ブロズのマーケティングベーシックレクチャー

第14回カリキュラム(ver1.0)

行動経済学・行動心理学 “ライト導入”:CJM・ファネル・RTBを「なぜ止まるか」の補助レンズで強化する
(文房具カフェ/文房具カフェオンラインストア/ユウセイ堂の例)

第14回は「心理学を深掘りする回」ではありません。これまで作ってきた
USP/RTB、CJM、ファネル、実験、粗利/貢献利益を、より“効く形”に整えるための
補助知識(6つだけ)を導入します。

所要時間
30〜45分(読む15〜20分+確認/ミニ演習10分+理解チェック5分)

※この回は「暗記」ではなく、どこで/何を直すかを当てるための“補助レンズ”として使います。

0. まず第13回(広義CRM:再顧客化・再接触・想起)の要点を簡単に復習(3分)

第13回では、CRMを「配信ツール」ではなく、次の3つを作る設計として捉えました。

  • リピート:最近利用した人がもう一度
  • 再顧客化:離れていた人が戻る
  • 想起:必要な瞬間に思い出され、候補に入る

その上で、チャネルごとに「次の行動」を1つに絞り、理由(コンテンツ)×接点×タイミングで組み立てるのが実務的でした。

ただし、CRMや導線改善を進めると、現場で次の疑問が必ず出ます。

  • 「なぜこの情報があっても、まだ不安が残るのか?」
  • 「なぜ“分かりやすくした”のに、行動されないのか?」
  • 「なぜ“次の一手”が見えているのに、迷うのか?」

そこで第14回は、上記の疑問に答えるために、行動経済学/行動心理学を 最小限だけ導入し、既存のフレームを強化します。

1. 今日のゴール(この回でできるようになること)

  1. お客様が止まる原因を 「不安(失敗回避)」「迷い(選択)」「摩擦(手間)」で説明できる
  2. その原因に対し、USP/RTB・情報順序・導線をどう直すべきか、当たりを付けられる
  3. 御社3チャネルで、心理学を「安全に」活用する観点(誤認や過度な煽りを避ける)を理解できる

この回のキーメッセージ

  • 心理学は説明のためではなく、修正箇所を当てるために使う
  • 止まる理由は概ね不安/迷い/摩擦で整理できる
  • 対策はRTB前倒し要点/チェックリスト順序導線短縮
  • 誠実さ(誤認防止・煽り禁止)を守るほど中長期で強い

今日のアウトプット(軽量版)

  • 担当チャネルの「止まりどころ」1つ
  • 原因分類(不安/迷い/摩擦)どれが主か
  • 最初の一手(RTB前倒し/順序/導線短縮)1つ
  • 検証の指標(Primary/Secondary/Guardrail)を仮で置く

2. この回で扱う行動科学は「6つだけ」:覚えるより、使いどころを固定する

ここでは概念を増やしません。現場で効く頻出パターンに絞ります。
目的は「心理学の理解」ではなく、CJM/ファネル上の“止まり”を直す当たりを早くつけることです。

2-1. 損失回避(Loss Aversion):「失敗したくない」が最優先になる

現象:得をするより、損を避けたい気持ちが強い。/マーケでの意味:迷いの正体は、しばしば「失敗リスク」。

  • 自社EC:買い逃し、正規性、条件誤解
  • モール:合致不安、期待と違う商品が届く不安
  • 店舗:混雑、予約失敗、料金/所要時間の不安

処方箋(安全な範囲)

  • RTB(根拠)を増やすより、「不安の核心」を先に短く出す
  • 誤解の余地を減らす(条件・対象・非対象の明確化)

2-2. 社会的証明(Social Proof):「他者の選択」が安心の根拠になる

現象:判断しきれないとき、レビューや事例が“安全”の根拠になる。

処方箋

  • レビュー、評価、利用者の声を「判断に必要な位置」に置く
  • 誇張・捏造・誤認誘発は禁止(長期で信頼を損なう)

2-3. 選択肢過多(Choice Overload):「情報が多いほど決められない」

現象:選択肢が多い/情報が散らばるほど決断が遅れる。

処方箋

  • 情報を減らすのではなく、最初に“判断軸”を与える
  • 「要点サマリ」「チェックリスト」「おすすめ理由」で迷いを減らす

2-4. デフォルト(Default):「次の一手」が自然に分かると進む

現象:人は“楽な方”に流れる。次の一手が見えると行動しやすい。

処方箋(誠実に)

  • 予約・購入までの手順を短縮し、「今やること」を明確にする
  • 不誠実な誘導(勝手な同意、隠し条件)はしない

2-5. フレーミング(Framing):「同じ内容でも、順序と見せ方で印象が変わる」

現象:提示順・言葉・比較の仕方で、納得感が変わる。

処方箋

  • USP → 要点(不安の核心)→ RTB(根拠)→ 詳細 の順に置く
  • “一文目”で「何が嬉しいか」「何が安心か」を固定する

2-6. 希少性(Scarcity):「締切・枠」が行動のきっかけになる(ただし煽らない)

現象:期限や枠があると行動が進む。

処方箋

  • 自社ECの受注期間、店舗の予約枠など、事実としての条件を明確に
  • 煽り(根拠のない「残りわずか」)はしない

 


3. どの順序で使うか:心理学は“原因分類→修正”の補助ツール

第9回(ファネル)と第7回(CJM)に接続して、次の順で使うと実務的です。

Step 1:止まっている接点を特定(CJM/ファネル)

  • 商品ページは見ているが買わない(Search→Action)
  • 予約ページまでは行くが予約しない(予定化→予約)
  • 合致確認はするが購入しない(合致確認→購入)

Step 2:原因を3分類する

  • 不安(損失回避):失敗したくない
  • 迷い(選択肢過多/フレーミング):判断軸がない
  • 摩擦(デフォルト不足):面倒・手順が長い

Step 3:処方箋を選ぶ(RTB・順序・導線)

  • 不安 → RTBの前倒し/チェックリスト化/レビュー
  • 迷い → 要点サマリ/比較軸提示/順序設計
  • 摩擦 → 手順短縮/次の一手の明確化

Step 4:実験で検証(第11回)

Primary / Secondary / Guardrail を置いて小さく試す(心理学を“推測”で終わらせない)。


4. 学ぶ意欲が上がる「ミニ事例」:心理×情報設計で改善が起きやすい典型

※特定企業の内部情報ではなく、再現しやすいパターンとして整理します。

ミニ事例① 不安の核心を上に出すとCVRが上がる

  • 条件(締切/発送/正規性)が下にあると不安が残り、離脱
  • 上部に要点を置くと「大丈夫」が早く作れ、次へ進む
  • 損失回避×フレーミング×デフォルトが同時に効く

ミニ事例② チェックリストで「合致確認」が早くなると購入が進む

  • 仕様が散らばっていると、確信に到達する前に疲れる
  • “判断に必要な項目”がまとまると、短時間で確信できる
  • 選択肢過多の回避(情報構造化)が効く

ミニ事例③ レビューは“場所”を間違えると効かない

  • レビューが下すぎると、迷いが出たタイミングで目に入らない
  • 迷いの直前(比較・購入直前)に置くと安心として機能する
  • 社会的証明は「提示タイミング」が重要


5. 御社の例:3チャネルで「止まりどころ」と「心理要因」を対応づける(分かりやすい形)

ここは実務の“当たり”を付けるための仮説例です。
数値は不要で、まずは「どの不安・迷い・摩擦が強いか」を掴みます。

5-A. 文房具カフェ(実店舗)

止まりどころ(典型)

  • 「行きたい」→「予定に入れる」→「予約する」の直前で止まる

心理要因(当たり)

  • 損失回避:混雑で入れない、予約失敗、料金・所要時間が想定と違う
  • 摩擦:予約導線が分かりにくい、手順が面倒
  • フレーミング:体験の魅力は伝わるが「自分の休日に当てはめられない」

処方箋(例)

  • 予約の前に必要な情報(料金・所要時間・混雑目安・当日の流れ)を一箇所に集約
  • 「次の一手(予約)」を1クリックで辿れる導線に
  • 利用シーン(休日の過ごし方)を提示し、想像コストを下げる

5-B. 文房具カフェオンラインストア(自社EC)

止まりどころ(典型)

  • Search(詳細比較)→Action(購入)の直前で止まる

心理要因(当たり)

  • 損失回避:買い逃し、条件誤解、正規性不安
  • 選択肢過多:情報が多いが判断軸がない(何を見れば安心か)
  • フレーミング:作品理解・作品愛が良いのに、決め手が上で伝わらない

処方箋(例)

  • 上部に「要点(締切/発送/正規/注意)」を短く提示(不安の核心を先に)
  • 作品理解・作品愛は“説明の量”より“見どころの順序”を整える
  • レビュー/実績/制作背景は、迷いが出る箇所に配置(社会的証明)

5-C. ユウセイ堂(モール型)

止まりどころ(典型)

  • 合致確認→購入 の直前で止まる(確信が作れない)

心理要因(当たり)

  • 損失回避:買い間違い、期待と違う、届く不安
  • 選択肢過多:似た商品が多く比較疲れ
  • 社会的証明:レビューは“安心”の根拠として強いが、提示位置が重要

処方箋(例)

  • 「合致確認チェックリスト(型番/サイズ/対応条件)」を冒頭に
  • 誤認防止(非対応・注意点)を明確にし、損失回避の不安を潰す
  • 「届く安心(検品・梱包・配送条件・対応)」を購入直前に見える形で提示

6. ミニ演習(5分):CJMの1接点を、3分類で見立てる

以下の接点を1つ選び、該当するものに○を付けてください(紙でも頭でもOK)。

  • 文房具カフェ:予約ページ直前
  • 自社EC:商品詳細ページの上部
  • ユウセイ堂:仕様・対応条件を読む箇所

質問

  1. 止まる理由は主にどれ?
    不安(損失回避)/迷い(選択)/摩擦(手間)
  2. “最初の一手”として打つべき改善はどれ?(1つ)
    RTBの前倒し(要点・チェックリスト)/情報順序の修正(USP→要点→根拠→詳細)/導線短縮(次の一手を明確に)

7. よくある失敗(心理学を扱う時の注意点)

  • 概念を増やしすぎる:この回は6つだけ。暗記ではなく用途固定
  • 心理学で“説明して満足”する:必ずCJM/ファネルに戻して「どこを直すか」に落とす
  • 煽り・誤認誘発に寄る:短期の数字が良くても、返品・低評価・信頼低下で中長期に不利
  • 根拠のない希少性:正確な条件提示はOK、根拠のない煽りはNG(御社の価値観にも不一致)

8. ChatGPTへの質問例(この回は合計5つ)

使い方:まずは ①〜③(担当に近いもの1つ)で十分です。必要に応じて④⑤。

① 文房具カフェ:予約直前で止まる理由を心理3分類で診断

あなたは社内マーケ講師です。
文房具カフェ(実店舗)のターゲットは、表参道/原宿エリアで休日に「ちょっとおしゃれで特別な体験をしたい」20代女性です。
CJM上で「予定化→予約」の直前で止まると仮定します。
止まる理由を「不安(損失回避)」「迷い(選択肢過多/フレーミング)」「摩擦(手間/デフォルト不足)」に分けて各3つずつ挙げ、
それぞれに対する“誠実な改善案”を1つずつ提案してください。
最後に、改善案を実験(Primary/Secondary/Guardrail)に落とす例も示してください。

② 自社EC:買い逃し不安・正規性不安を「先に短く」潰す構成案を作る

あなたは社内マーケ講師です。
文房具カフェオンラインストア(自社EC)で、Search→Actionが詰まっていると仮定します。
ターゲットの不安(買い逃し/正規性/条件誤解)を、損失回避の観点で整理し、
商品ページ上部に置くべき「要点サマリ」の構成案(見出しと箇条書き)を作ってください。
さらに、どの位置にレビュー(社会的証明)を置くと効果が出やすいかも提案してください。

③ ユウセイ堂:合致確認チェックリストと誤認防止の文言案を作る

あなたは社内マーケ講師です。
ユウセイ堂(モール型)で「合致確認→購入」が詰まっていると仮定します。
損失回避(買い間違い/期待違い/届く不安)を踏まえ、
商品ページ冒頭に置く「合致確認チェックリスト」のテンプレを作ってください(項目10個以内)。
また、誤認防止のための注意文言(言い回し)を5つ、誠実なトーンで提案してください。

④ 3チャネル横断:心理学を“点検表”にして運用する

文房具カフェ(店舗)/オンラインストア(自社EC)/ユウセイ堂(モール)の施策を点検するため、
行動心理の観点で「不安」「迷い」「摩擦」をチェックできる10項目の点検表を作ってください。
各項目に、該当した場合の代表的な改善方向(RTB前倒し/情報順序/導線短縮など)も添えてください。

⑤ 理解チェック:行動経済学ライト導入クイズ

今日のテーマ「行動経済学・行動心理学(ライト導入)」について理解チェック問題を5問作ってください。
形式:○×2問、選択式2問、短答1問。解答と解説付き。
例は、文房具カフェ/オンラインストア/ユウセイ堂から必ず入れてください。

9. 理解チェック(3問・5分)

  1. お客様が止まる理由を3分類すると?(不安/迷い/摩擦)
  2. 損失回避が強い場面で、最初に手当てすべきなのは「説明の量」か「不安の核心を先に出すこと」か、どちら?
  3. 社会的証明(レビュー等)が効かないのは、よくある理由として何がある?(ヒント:場所・タイミング)

10. 今日のまとめ(3行)

  • 行動科学は暗記ではなく、CJM/ファネルで特定した“止まり”の原因を当てる補助レンズ
  • 原因は概ね 不安(損失回避)/迷い(選択・順序)/摩擦(手間・デフォルト)で整理できる。
  • 対応は RTBの前倒し・要点/チェックリスト化・情報順序・導線短縮。必ず実験で検証し、誠実さを守る。

次回予告(第15回)

次回は、第1回〜第14回の総まとめ(運用設計)です。
週次の見方(粗利/貢献利益→ファネル→CJM→実験)をテンプレ化し、最後に行動科学の点検表を添えて「回る仕組み」を完成させます。

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