第17回カリキュラム(ver1.0)
SWOT分析:強み・弱み・機会・脅威を「打ち手の方向(SO/ST/WO/WT)」に変換し、
3チャネルの勝ち筋を言語化する
(文房具カフェ/文房具カフェオンラインストア/ユウセイ堂)
この回はSWOTの“作り方”を覚えるだけでなく、運用に使える形(次の打ち手の方向)まで落とします。
数字は不要。まずは仮説でOKです。
0. まず第16回(第16回以降の全体図)の要点を簡単に復習(3分)
第16回では、第16回以降の新シリーズの方針を揃えました。
- 1回=1モデル(混ぜない)
- 戦略レベル/戦術レベルを分けて学ぶ
- 成果物は重くしない(1枚に落とす)
- これまでの運用型(第15回)
KGI(粗利/貢献利益)→ファネル→CJM→優先順位→実験→学びログ
に接続する
第17回は戦略モデルの最初として、最も汎用性が高い SWOT分析を扱います。
1. 今日のゴール(この回でできるようになること)
- SWOT(S/W/O/T)の違いを、例つきで説明できる
- SWOTを「一覧」で終わらせず、SO/ST/WO/WTに変換できる
- 御社3チャネル(店舗/自社EC/モール)で、勝ち筋(伸ばす強み)と課題(先に潰す弱み)を言語化できる
この回のキーメッセージ
- SWOTの目的は棚卸しではなく「打ち手の方向」を決めること
- 外部(O/T)→内部(S/W)の順で出すとブレにくい
- 最後は重点テーマ1〜2個に絞って運用へ接続
この回の成果物(軽量)
- 3チャネル分のSWOT(各3〜5個)
- クロスSWOT(SO/ST/WO/WT:各1〜2行)
- 今期の重点テーマ(1〜2個)
2. SWOT分析とは何か:目的は“棚卸し”ではなく「打ち手の方向」を決めること
SWOTの目的は、単に強み・弱みを並べることではありません。
本当に価値があるのは、次の一文です。
外部(機会・脅威)×内部(強み・弱み)を掛け合わせて、「戦い方の方向」を決める
2-1. 定義(新人が混乱しやすい点を先に潰す)
- S(Strength:強み)=内部要因(自社の中にある)
例:企画・デザイン力、体験設計、運用品質、表現力、ファン理解 など - W(Weakness:弱み)=内部要因(自社の中にある)
例:説明が分かりにくい、情報が散らばる、在庫/納期情報が伝わりにくい、運用負荷が高い など - O(Opportunity:機会)=外部要因(環境側にある)
例:市場トレンド、検索/SNSの変化、観光/人流の変化、ファン層の拡大、コラボ需要など - T(Threat:脅威)=外部要因(環境側にある)
例:模倣、競争激化、モールの比較圧力、配送/コスト上昇、炎上リスク、プラットフォーム変化など
2-2. ありがちな誤り(ここを避けると精度が上がる)
- 内部なのに外部として書く
×「競合が強い」→外部(T)
○「競合比較に耐える説明が弱い」→内部(W) - “事実”と“解釈”が混ざる
まず「観察できる事実」→次に「解釈(だから強み/弱み)」の順にする - 抽象語だけで終わる
×「ブランド力」
○「作品理解・作品愛が伝わる説明ができる」「正規性の根拠が明確」など、行動に落ちる表現にする

3. どの順序で作るか:SWOT → クロスSWOT(SO/ST/WO/WT)までがセット
おすすめは次の 5ステップです。
Step 1:目的(論点)を決める
SWOTは「何のためのSWOTか」を決めないと散ります。
- 3チャネルの役割分担を明確にしたい
- 次の半年で伸ばすべき勝ち筋を決めたい
- モールでの不一致返品を減らしつつ利益を伸ばしたい
Step 2:外部(O/T)を先に出す(現場がブレにくい)
O/Tを先に置くと、「環境に対してどう戦うか」が見えやすい(社内事情だけで閉じない)。
Step 3:内部(S/W)を出す
「外部に対して使える強みは何か」「脅威に弱い弱みは何か」が見えやすくなります。
Step 4:クロスSWOTで方向に変換(ここが本番)
- SO(強み×機会):強みで機会を取りに行く(攻め)
- ST(強み×脅威):強みで脅威を受ける(守り)
- WO(弱み×機会):弱みを改善して機会を取りに行く(課題解決)
- WT(弱み×脅威):負け筋回避(やらないこと/先に潰すこと)
Step 5:次の1〜2テーマに絞る(運用につなぐ)
第15回の運用型へ接続:
優先順位(インパクト×確度×工数)→実験へ
4. ミニ事例(イメージ):良いSWOTは「打ち手の方向」が一文で言える
良い例(方向になる)
- 「作品理解・作品愛が伝わる企画/表現力(S)を活かして、コラボ需要の機会(O)を獲得する(SO)」
- 「比較が厳しいモール環境(T)に対し、合致確認の仕組み(S)で買い間違い不安を消す(ST)」
悪い例(方向にならない)
- 「強み:SNS」
- 「弱み:競合」
- 「機会:市場が伸びている」
なぜ悪いか
次に何をするかが決まりません。強み・弱みは行動に落ちる表現にし、
最後はクロスSWOTで「方向」に変換します。
5. 御社の例:3チャネル別SWOT(仮説例)→ クロスSWOTで“方向”にする
ここは理解のための仮説です。実務では「まず粗く作る → 次の回で精度を上げる」でOKです。
5-A. 文房具カフェ(実店舗)SWOT(仮説)
O(機会:外部)
- 表参道・原宿エリアで「休日の特別体験」ニーズがある
- SNSで“体験”が共有されやすい(写真・動画が強い)
T(脅威:外部)
- 週末の混雑・待ちが体験価値を下げやすい
- 近隣の体験型スポットが多く、比較されやすい
S(強み:内部)
- 「おしゃれで特別な体験」を作れる空間・企画・導線
- 体験の写真映え/共有価値を作りやすい
W(弱み:内部)
- 来店前の不安(混雑/予約/所要時間/料金)が伝わりにくいと、予定化で止まる
- 予約導線が複雑だと摩擦が増える(第14回の“摩擦”)
クロスSWOT(方向)
- SO:体験価値(S)×体験需要(O) → SNSで「休日の過ごし方」を定型化し、予定化を促進
- ST:体験設計(S)×比較/混雑(T) → 予約/混雑情報の見える化で、体験価値低下を防ぐ
- WO:不安が伝わりにくい(W)×体験需要(O) → 料金・所要時間・混雑目安を“1ページ集約”し、予定化を押す
- WT:導線摩擦(W)×比較/混雑(T) → 予約導線の短縮と、混雑ピークの運用改善(やらないと負け筋)

5-B. 文房具カフェオンラインストア(自社EC)SWOT(仮説)
O(機会:外部)
- コラボ需要:買い逃し回避ニーズが強い
- 作品理解・作品愛のある公式/正規の“安心”が評価されやすい
T(脅威:外部)
- 類似品・転売・非正規が混在しやすく、正規性の不安が発生
- 受注・締切・発送条件が複雑だと離脱につながりやすい
S(強み:内部)
- 自社で企画・開発・販売まで行い、作品理解/作品愛を表現できる
- 正規ルートとしての信頼を構造的に持てる
W(弱み:内部)
- 条件(締切/発送/受注)の伝え方が弱いと、買い逃し不安が増える
- 説明量が増えるほど“要点が見えない”リスク(選択肢過多=第14回)
クロスSWOT(方向)
- SO:作品理解・作品愛の表現(S)×コラボ需要(O) → 企画背景・デザイン意図を「見どころ順」に整え、納得で買える状態を作る
- ST:正規性(S)×転売/非正規(T) → 正規の根拠(RTB)を上部に短く提示し、不安を先に潰す
- WO:条件伝達の弱さ(W)×買い逃し需要(O) → “要点サマリ(締切/発送/注意)”を前倒しし、購入に進める
- WT:情報過多(W)×条件複雑/競合(T) → 商品ページの情報設計を標準化(要点→根拠→詳細)し、迷いを減らす

5-C. ユウセイ堂(モール型)SWOT(仮説)
O(機会:外部)
- モールは「検索・比較して早く買う」需要が大きい
- 選びやすさ・届く安心が整うと、評価・レビューで伸びやすい
T(脅威:外部)
- 価格比較が強く、差別化しにくい
- 誤認・買い間違いが起きると、低評価・返品で不利になる
S(強み:内部)
- 期待通りに届ける運用品質を作れる(検品・梱包・対応)
- 合致確認の情報設計を磨けば信頼優位を作れる
W(弱み:内部)
- 商品同定(合致確認)が難しいと、購入直前で止まる
- SKUが多い場合、説明の統一が崩れると誤認が増える
クロスSWOT(方向)
- SO:運用品質(S)×検索・比較需要(O) → 「合致チェック+届く安心」の標準テンプレで選びやすさを作る
- ST:合致確認(S)×比較/低評価(T) → 誤認防止(非対応/注意点)を明確化し、返品・低評価を抑える
- WO:同定の難しさ(W)×検索需要(O) → タイトル/画像/冒頭チェックリストで合致確認を短時間化
- WT:説明のばらつき(W)×比較/誤認(T) → SKU運用ルール(テンプレ化)を作り、負け筋(低評価)を避ける

6. この回の“成果物”(軽量):1枚SWOT+方向(SO/ST/WO/WT)
この回のゴールは、下の形が「仮でも」作れていることです。
- 3チャネルそれぞれ
- SWOT(箇条書きで各3〜5個)
- クロスSWOT(SO/ST/WO/WTで各1〜2行)
- そして最後に
- 今期の重点テーマ(1〜2個)を置く(第15回の運用に接続するため)
運用への接続(第15回の型)
重点テーマが決まったら、優先順位(インパクト×確度×工数)→実験(Primary/Secondary/Guardrail)へ落とし、
翌週から回せる状態にします。
7. よくある失敗(SWOTを“使える形”にするための注意点)
- SWOTを並べただけで終わる(→必ずクロスSWOTまで)
- 強みが抽象的(→行動に落ちる表現に)
- 機会/脅威が自社事情(→外部環境として書く)
- 何でも入れる(→各3〜5個に絞る)
- 方向が多すぎる(→最後に重点1〜2個に絞る)
8. ChatGPTへの質問例(この回は合計5つ)
使い方:まずは①〜③のうち、自分の担当チャネルのものを1つだけでOKです。余裕があれば④⑤。
① 文房具カフェ(実店舗)SWOT→クロスSWOTを作る
あなたは社内マーケ講師です。 文房具カフェ(実店舗)のターゲットは、表参道/原宿エリアで休日に「ちょっとおしゃれで特別な体験をしたい」20代女性です。 この前提でSWOTを各4個ずつ作り、クロスSWOT(SO/ST/WO/WT)を各2つずつ提案してください。 最後に「今期の重点テーマ」を2つに絞り、理由も添えてください。
② オンラインストア(自社EC)SWOT→“要点前倒し”の方向まで落とす
あなたは社内マーケ講師です。 文房具カフェオンラインストア(自社EC)のターゲットは、 「買い逃したくない」「正規ルートで安心して買いたい」+作品理解・作品愛(デザイン)が重要です。 この前提でSWOTを各4個ずつ作り、クロスSWOT(SO/ST/WO/WT)を各1〜2個ずつ提案してください。 特に「買い逃し不安」「正規性不安」「情報過多」の論点がどこに入るかを明示し、 最後に“打ち手の方向”を3つに整理してください。
③ ユウセイ堂(モール)SWOT→誤認防止・合致確認の方向を出す
あなたは社内マーケ講師です。 ユウセイ堂(モール型)のターゲットは、 「モールで検索・比較して早く確実に買いたい」+「合致しているか」「期待通り届くか」の不安なく満足して買いたい、です。 この前提でSWOTを各4個ずつ作り、クロスSWOT(SO/ST/WO/WT)を各2つずつ提案してください。 最後に、誤認防止(返品/低評価の回避)の観点で最優先の方向を1つ選び、理由も説明してください。
④ 3チャネル横断:役割分担の“戦略文”を作る
店舗(文房具カフェ)/自社EC(文房具カフェオンラインストア)/モール(ユウセイ堂)について、 各チャネルのSWOTを踏まえた「役割分担の戦略文(各1文)」を作ってください。 さらに、3チャネル共通の重点テーマを1つ提案してください(例:安心の標準化 等)。
⑤ 理解チェック:SWOTクイズ
今日のテーマ「SWOT分析とクロスSWOT」について理解チェック問題を5問作ってください。 形式:○×2問、選択式2問、短答1問。解答と解説付き。 例は、文房具カフェ/オンラインストア/ユウセイ堂から必ず入れてください。
9. 理解チェック(3問・5分)
- SWOTのS/Wは内部要因、O/Tは外部要因。では「競合が値下げしている」はO/Tどちら?(理由も)
- クロスSWOTの SO / ST / WO / WT は、それぞれ何を狙う枠?
- SWOTの項目が多すぎると何が起きる?(運用面で1つ)
10. 今日のまとめ(3行)
- SWOTは棚卸しではなく、外部×内部を掛け合わせて“戦い方の方向”を決めるためのモデル。
- 必ず クロスSWOT(SO/ST/WO/WT)まで作り、最後に重点テーマを1〜2個に絞る。
- 次回以降は、SWOTで見えた方向性を前提に、外部環境(PEST)や競争構造(5フォース)などのモデルで精度を上げていく。
次回予告(第18回)
次回は PEST分析(ver1.0) を扱い、社会・技術・経済・規制などの外部変化を「機会/脅威」に変換し、
SWOTのO/Tを強化します。