コース内容
Marketing Basic Lecture
0/23
東光ブロズのマーケティングベーシックレクチャー

第19回カリキュラム(ver1.0)

5フォース分析:競争構造から「利益が削られる理由」を見抜き、勝ち筋(値下げ以外の差別化)を決める
(文房具カフェ/文房具カフェオンラインストア/ユウセイ堂)

この回は“競合調査”ではなく、競争の仕組み(構造)を理解し、SWOTのT(脅威)や戦い方の方向を精度高く定める回です。
数字は不要、まずは仮説でOKです。

所要時間
30〜45分(読む20分+ミニ演習5分+ChatGPTで整理10分)

※5フォースは「誰が競合か」より、なぜ利益が削られるのか(構造)を言語化するための道具です。

0. まず第18回(PEST分析)の要点を簡単に復習(3分)

第18回では、外部環境を P/E/S/T で整理し、
それを 機会/脅威 に変換して、SWOTのO/Tを強化しました。

  • PEST=「広い外部環境(マクロ)」
  • 最後に 監視KPI(早期警戒) を置いて、週次運用へ接続

第19回の 5フォース分析 は、PESTより一段狭い “業界・競争構造(ミクロ)”を分解します。
狙いは一言で、これです。

「なぜこの市場は儲かりにくいのか/どこで利益が削られるのか」を構造で説明できるようにする

1. 今日のゴール(この回でできるようになること)

  1. 5フォース(5つの力)が何を意味するか説明できる
  2. 御社の3チャネル(店舗/自社EC/モール)それぞれで、利益を削る力がどれかを特定できる
  3. 「だから値下げ」ではなく、値下げ以外の勝ち筋(差別化・防衛策)を言語化できる

この回のキーメッセージ

  • 5フォース=「競争の力学」で利益が削られる理由を読む
  • 強い力が多いほど、価格は下がり/コストは上がり/利益は残りにくい
  • 結論は値下げではなく、差別化・参入障壁・切替コスト・運用品質へ変換する
  • 結果はSWOTのT(脅威)更新→重点テーマ→第15回運用へ接続

この回の成果物(軽量)

  • チャネル別の「業界定義(土俵)」
  • 5フォースの強弱(強/中/弱)
  • 利益圧力ポイント(1文)
  • 値下げ以外の勝ち筋(方向)3つ
  • SWOTのT更新(ST/WTの方向も一言)

2. 5フォース分析とは何か:競争の“力学”で収益性を読む

5フォース分析(Porter’s Five Forces)は、業界の収益性を左右する「5つの力」を見立てるフレームです。
結論から言うと、

  • 5つの力が強いほど、価格は下がり、コストは上がり、利益が残りにくい
  • だから戦略は、
    ①強い力に「押し負けない設計」をする/②そもそも力が弱い土俵を選ぶ
    という方向になる

2-1. 5つの力(定義)

  1. 既存競合の強さ(Rivalry)
    似た提供が多いほど、比較・値下げ・広告競争になりやすい
  2. 新規参入の脅威(Threat of New Entrants)
    参入が容易だと、真似・新規が増えて競争が激化しやすい
  3. 代替品の脅威(Threat of Substitutes)
    「別の方法で同じ目的が満たせる」ほど、価格・選択が厳しくなる
    例:モールなら他店、店舗なら別の体験スポット、など
  4. 買い手の交渉力(Bargaining Power of Buyers)
    買い手が比較しやすいほど、価格・条件・品質への要求が強くなる(モールはここが強くなりやすい)
  5. 売り手(供給者)の交渉力(Bargaining Power of Suppliers)
    原価・供給条件が強く制約されるほど、利益が削られやすい
    例:製造・物流・IP(ライセンス)などが強い場合

2-2. よくある誤解(ここを避けると精度が上がる)

  • 競合一覧を作って終わる
    → 5フォースは“競合の名前”より「競争が起きる理由(構造)」が重要
  • PESTと混ぜる
    → PEST=マクロ環境、5フォース=業界構造。役割が違う
  • モールを“普通の小売業界”として一括する
    → モールは「比較が仕組みとして強い」ため、買い手の交渉力や既存競合が強くなりやすい
    (補足:モールは規約・露出仕様の影響も大きい)


3. どの順序でやるか:5フォース → “利益圧力” → 戦い方

おすすめは次の 6ステップです。

Step 1:分析対象(業界)を定義する

同じ会社でも、チャネルごとに「業界の土俵」が違います。

  • 店舗:表参道・原宿エリアの体験型カフェ/文具体験
  • 自社EC:公式コラボグッズのD2C(企画・開発・販売)
  • モール:検索・比較・短時間購買のマーケットプレイス

Step 2:各フォースを「強い/中/弱い」で仮置き

最初は定量不要。まずは構造で当たりを付けます。

Step 3:利益が削られる“圧力ポイント”を一文にする

  • 「買い手の交渉力が強く、比較で価格・条件が厳しくなりやすい」
  • 「供給者(物流・製造・IP)の影響で原価が動きやすい」など

Step 4:値下げ以外の“戦い方”に変換する

  • 差別化:比較されにくい要素を作る(安心・合致・体験・運用品質)
  • 切替コスト:買い手が迷わない/戻りやすい(CRM、再購入導線)
  • 参入障壁:模倣しにくい資産・運用(テンプレ、品質、ノウハウ)
  • 供給強化:品質・条件・変動費の安定(貢献利益を守る)

Step 5:SWOTのT(脅威)を更新する

5フォースで見えた「構造的に避けにくい脅威」をSWOTのTに反映します。

Step 6:重点テーマを1〜2個に絞り、第15回の運用へ

次の運用(KGI→ファネル→CJM→実験)で回せる形に落とします。

ポイント

5フォースは「勝ち筋の発見」よりも先に、利益が削られる理由の説明を強くするモデルです。
その上で「値下げ以外」の方向に変換します。


4. ミニ事例(構造の読み方):儲かりにくい市場の典型パターン

  • 比較が簡単(買い手の交渉力が強い)+参入が簡単(新規参入が強い)
    → 値下げ競争になりやすい
    → 対応:比較されにくい差(安心・合致・運用品質・独自性)を作る/標準化で事故を減らす
  • 供給者が強い(原価・条件が動く)
    → 利益が守りにくい
    → 対応:価値の見せ方(納得)で粗利率を守る/運用で変動費を抑える

5. 御社の例:3チャネルで5フォースを当てはめる(仮説例)

ここは理解のための仮説です。実務では「強い力がどれか」だけ先に特定できれば十分です。

5-A. 文房具カフェ(実店舗)

土俵:表参道・原宿で休日に“おしゃれで特別な体験”を求める層向けの体験型カフェ/スポット

  • 既存競合(強〜中):近隣に体験型スポットが多く、比較されやすい
  • 新規参入(中):ポップアップや新規店舗が出やすい
  • 代替(強):「休日の特別体験」は代替が多い(別カフェ、イベント、スポット)
  • 買い手の交渉力(中):価格より“体験の納得”が決め手になりやすいが、比較はされる
  • 供給者の交渉力(中〜強):人件費・家賃・原材料の影響を受けやすい(利益圧力)

戦い方の方向(例)

  • 代替が強い → 「文房具カフェである理由」を体験で固める(比較軸をずらす)
  • 供給圧力 → 客単価・回転・稼働(第12回)と、満足(第13回)で利益を守る
  • 予約・混雑の不安(第14回)を潰し、予定化→予約の摩擦を下げる

5-B. 文房具カフェオンラインストア(自社EC)

土俵:公式の安心×作品理解・作品愛が伝わるコラボグッズD2C

  • 既存競合(中):公式・非公式・類似商品など、選択肢が多いカテゴリもある
  • 新規参入(中):D2C自体は参入しやすいが、IP・企画・品質が壁になる
  • 代替(中):作品ファンは他グッズ・別コラボなど代替がある
  • 買い手の交渉力(中):比較はされるが、「正規性」「作品理解」「デザイン納得」が差別化になりやすい
  • 供給者の交渉力(中〜強):IP(ライセンス)、製造、物流の影響が利益に直結

戦い方の方向(例)

  • 供給者が強い → 貢献利益(第12回)基準で設計し、運用で変動費を抑える
  • 買い手の比較 → USP/RTBを“先に短く”出し、買い逃し・正規性の不安を潰す(第14回)
  • 参入障壁 → 作品理解・作品愛の表現を資産化(テンプレ・連載・背景の蓄積)

5-C. ユウセイ堂(モール型)

土俵:検索・比較して「早く確実に」買うマーケットプレイス

  • 既存競合(強):同一・類似商品が並びやすく競争が激しい
  • 新規参入(強):出店・出品は相対的に容易(競争が増えやすい)
  • 代替(強):他店、別商品、別チャネル、リユース等、代替が多い
  • 買い手の交渉力(強):比較が仕組みとして強い(価格・納期・レビューで判断)
  • 供給者の交渉力(中):商品によっては仕入条件が強く、利益が薄くなりがち

戦い方の方向(例)

  • 買い手の交渉力が強い → 値下げではなく「合致確認・届く安心」で比較軸を作る
  • 誤認・買い間違いは致命傷 → 返品・低評価が構造的に不利を増幅するため、誤認防止を最優先
  • 商品ページの標準テンプレ(合致チェック+注意点+届く安心)で、参入しにくい“運用品質”に寄せる

補足(モール特有)

5フォース外ですが、モールは「プラットフォーム規約・露出仕様」の影響が大きいです。
実務ではこれを “第6の力(チャネル提供者の力)”として別枠でメモしておくと運用に効きます。
ただし、この回はまず5フォースを崩さず理解することを優先します。


6. ミニ演習(5分):各チャネルで「最も強い力」を1つだけ選ぶ

各チャネルについて、最も強い(=利益を削りやすい)力を1つ選び、理由を一文で書いてください。

ミニ演習(記入用)

文房具カフェ(店舗):____(理由:____)
自社EC:____(理由:____)
ユウセイ堂(モール):____(理由:____)

最後に:その力に対する「値下げ以外の対策方向」(一言)
例:合致不安を潰す/条件の明確化/体験の独自性/運用品質の標準化 等

ポイント:この演習は「競合名」を書く場ではありません。構造(力)→利益圧力→対策方向の順で書きます。


7. よくある失敗(5フォースを“使える形”にするための注意点)

  • 業界定義が広すぎる(店舗・EC・モールで土俵が違うのに一括で見る)
  • 競合リストで終わる(構造的な圧力が見えない)
  • 値下げが結論になる(差別化・安心・運用品質など、別の勝ち筋に変換する)
  • 供給者/買い手を取り違える(モールは買い手の力が強くなりやすい)
  • SWOTに戻さない(Tを更新しないと戦略に反映されない)

8. ChatGPTへの質問例(この回は合計5つ)

使い方:①〜③は担当チャネルのものを1つで十分です。④⑤は横断整理と理解チェックです。

① 文房具カフェ(実店舗):5フォースから「体験で勝つ条件」を言語化

あなたは社内マーケ講師です。
文房具カフェ(実店舗)について、表参道/原宿エリアで休日に「ちょっとおしゃれで特別な体験をしたい」20代女性をターゲットとします。
この前提で5フォースを「強い/中/弱い」で評価し、
最も強い圧力を1つ選び、値下げ以外の対策方向を3つ提案してください。
最後に、その方向をSWOTのT(脅威)とST/WTの形で言い換えてください。

② 自社EC:供給(IP/製造/物流)と買い手の不安を5フォースで整理

あなたは社内マーケ講師です。
文房具カフェオンラインストア(自社EC)について、
「買い逃したくない」「正規ルートで安心して買いたい」+作品理解・作品愛(デザイン)重視のターゲットです。
5フォースを評価し、特に「供給者の交渉力(IP/製造/物流)」が強い場合に
利益(貢献利益)を守る戦い方を3つ提案してください。
加えて、買い手の交渉力を弱める(比較されにくくする)情報設計の方向も2つ提案してください。

③ ユウセイ堂(モール):強い競争構造で“安心差別化”を戦略にする

あなたは社内マーケ講師です。
ユウセイ堂(モール型)について、5フォースを評価してください。
その上で、買い手の交渉力と既存競合が強い前提で、
「合致確認」と「期待通り届く安心」を差別化軸にするための戦略方向を3つ提案してください。
最後に、守るべきGuardrail(不一致返品率・低評価率など)も3つ挙げてください。

④ 3チャネル横断:5フォースを1枚にまとめ、重点テーマを1つ決める

店舗(文房具カフェ)/自社EC(文房具カフェオンラインストア)/モール(ユウセイ堂)について、
各チャネルの「最も強いフォース」と「利益が削られる理由(1文)」を整理し、
3チャネル共通の重点テーマを1つ提案してください。
テーマがKGI(粗利/貢献利益)にどう効くかも一言で説明してください。

⑤ 理解チェック:5フォースクイズ

今日のテーマ「5フォース分析」について理解チェック問題を5問作ってください。
形式:○×2問、選択式2問、短答1問。解答と解説付き。
例は、文房具カフェ/オンラインストア/ユウセイ堂から必ず入れてください。

9. 理解チェック(3問・5分)

  1. 5フォースの5つを列挙できる?(既存競合/新規参入/代替/買い手/供給者)
  2. モールで「買い手の交渉力」が強くなりやすいのはなぜ?(仕組みの特徴で一言)
  3. 5フォースの結論が「値下げ」になりがちなとき、他にどんな方向へ変換できる?(1つ)

10. 今日のまとめ(3行)

  • 5フォースは、業界の収益性を左右する「競争の力学」を見立て、利益が削られる理由を構造で説明するモデル。
  • チャネルごとに土俵(業界定義)を分け、強い圧力を特定したら、値下げ以外の勝ち筋に変換する。
  • 結果はSWOTのT/Oに反映し、重点テーマを絞って第15回の運用(KGI→ファネル→CJM→実験)へ接続する。

次回予告(第20回)

次回は バリューチェーン分析(ver1.0) を扱います。
5フォースで見えた競争圧力に対して、御社の「企画→開発→販売→物流→CS→店舗体験」などの活動を分解し、どこで価値が生まれ、どこがボトルネックかを可視化します。

“`

上部へスクロール