第22回カリキュラム(ver1.0)
ビジネスモデルキャンバス(BMC):価値・顧客・収益・コスト・活動を「1枚」で統合し、3チャネルの整合性と伸ばし方を見える化する
(文房具カフェ/文房具カフェオンラインストア/ユウセイ堂)

この回は「BMCを埋めること」が目的ではありません。
VRIOで見えた投資すべき強みを、BMC上で(価値→収益)と(活動→コスト)に接続し、
3チャネルの役割分担・収益構造・運用のボトルネックを同じ言葉で説明できる状態を作ります。
数値は不要、まずは仮説でOKです。
0. まず第21回(VRIO分析)の要点を簡単に復習(3分)
第21回では、強み(資産・能力)を V/R/I/O で評価し、
投資/標準化/撤退(外注) の判断に落としました。
- V:顧客価値・機会獲得・脅威対応に効くか
- R:当たり前ではないか(希少性)
- I:真似されにくいか(模倣困難性)
- O:組織として再現できるか(仕組み・運用)
ただしVRIOだけだと、現場では次が残ります。
- その強みはどの顧客に、どんな価値として届き、どう収益になるのか
- 強みを発揮するために、どの活動が必要で、どこにコストが出るのか
- 3チャネルで、同じことをやるべきか/分担すべきか
そこで第22回は、価値・顧客・収益・活動・コストを統合する BMC(ビジネスモデルキャンバス) を扱います。
1. 今日のゴール(この回でできるようになること)
- BMCの9ブロックを説明できる
- 御社3チャネル(店舗/自社EC/モール)で、BMCを“仮で1枚”作れる
- BMCから重点テーマ(整合性の弱点/伸ばす方向)を1つ決められる
この回のキーメッセージ
- BMCは「資料」ではなく、合意形成の共通言語
- 右側(顧客・価値・収益)と左側(活動・資源・コスト)が噛み合っているかを見る
- 強み(VRIO)はBMCのKey Resources / Key Activitiesに落ちる
この回の成果物(軽量)
- チャネル別BMC(9ブロック、各1〜3行)
- 整合性チェック結果(ズレ3つ)
- 重点テーマ1つ(今期の方向)
- 運用接続:KGI(粗利/貢献利益)/ファネル段階/実験テーマ(1本)
2. ビジネスモデルキャンバス(BMC)とは何か:9ブロックで「儲けの仕組み」を1枚にする
BMCは、ビジネスの仕組みを9つの要素で可視化し、
「何が価値で、誰に届け、どう収益化し、そのために何が必要で、コストはどこに出るか」を同時に見るためのフレームです。
BMCの価値は、“整合性の弱点”が見つかることです。
例:「価値は良いのに、届け方(Channels)が弱い」「収益は狙うが、コスト(Cost)が見えていない」など。
2-1. 9ブロック(用語)
| 領域 | ブロック | 一言 | 御社での例(イメージ) |
|---|---|---|---|
| 右側(市場側) | Customer Segments | 誰に | 店舗:休日の特別体験を求める20代女性 など |
| Value Propositions | 何を約束するか | 自社EC:作品理解・作品愛×正規の安心 など | |
| Channels | どう届けるか | SNS→商品ページ/Googleマップ→予約 など | |
| Customer Relationships | 関係の作り方 | 広義CRM:想起・再接触・再顧客化 など | |
| Revenue Streams | どう儲かるか | 店舗:客単価×客数、EC:貢献利益/注文×注文件数 など | |
| 左側(社内側) | Key Resources | 資産・強みの源泉 | VRIOの投資対象(テンプレ、運用品質、企画資産など) |
| Key Activities | 中核活動 | 合致確認情報の整備、検品・梱包、体験運用 など | |
| Key Partners | 外部協力 | 製造・物流・IP・プラットフォーム・決済 など | |
| 下段(経済性) | Cost Structure | 主なコスト | 人件費、物流、手数料、返品、CS、混雑ロス など |
(Amazonの例)
2-2. 第12回(粗利/貢献利益)との接続(ここが実務で効く)
- Revenue Streamsは「売上」ではなく、可能なら粗利/貢献利益で語る(第12回)
- Cost Structureは、固定費だけでなく変動費(送料負担・手数料・返品・CS)も含める

3. どの順序で作るか:右(市場)→左(内側)→整合性チェック
おすすめは次の 7ステップです(軽量版)。
Step 1:対象(チャネル)を固定する
- 店舗/自社EC/モールは別のBMCとして作る(混ぜない)
Step 2:右側(顧客→価値→届け方→関係→収益)から埋める
- Customer Segments:誰の、どんな状況か
- Value Propositions:何が嬉しく、何が安心か(USP/RTBがここに入る)
- Channels:どこで知り、どこで比較し、どこで買う/予約するか
- Customer Relationships:想起・再接触・再購入の設計(第13回)
- Revenue Streams:粗利/貢献利益で見た時、どこで利益が残るか
Step 3:左側(資源→活動→パートナー)を埋める
- Key Resources:VRIOで「投資」判定の資産がここに来る
- Key Activities:バリューチェーンの「価値の核」工程がここに来る
- Key Partners:供給(製造・物流・IP)やプラットフォーム(モール等)を明示する
Step 4:Cost Structureを“粗く”置く
ここで厳密に見積もる必要はありません。「利益が削られやすい工程」が見えることが重要です。
Step 5:整合性チェック(ズレを3つ探す)
- 価値(VP)が、チャネル(Channels)でちゃんと届く設計になっているか
- 不安(損失回避)が出る箇所に、RTB(根拠)が置かれているか(第14回)
- 収益(Revenue)を狙うのに必要な活動(Activities)が足りているか
- コスト(Cost)を増やす活動が、価値に見合っているか(やりすぎていないか)
Step 6:重点テーマを1つに絞る
- 例:情報設計テンプレの標準化/検品・梱包品質の組織化/予約前不安の一枚化 など
Step 7:第15回の運用へ接続する
- KGI(粗利/貢献利益)→ファネル→CJM→優先順位→実験→学びログ
- 重点テーマは、実験(Primary/Secondary/Guardrail)に落として回す
4. 典型パターン:BMCで見つかる“ズレ”はだいたい3種類
パターンA:価値は良いのに、届け方(Channels)が弱い
- 症状:VPは刺さるはずだが、流入が弱い/比較で伝わらない
- 処方箋:PESO/RACE(戦術モデル)で役割分担、要点サマリ・導線短縮
パターンB:収益は狙うが、活動(Key Activities)と組織(O)が足りない
- 症状:やりたいことはあるが、運用が続かない/属人化する
- 処方箋:テンプレ化、更新ルール、チェック体制、KPI接続(第15回)
パターンC:コスト(Cost)が見えておらず、貢献利益が残らない
- 症状:売上はあるが、送料・手数料・返品・CSで削られる
- 処方箋:第12回の貢献利益で設計、返品・誤認防止、Guardrailの設定
5. 御社の例:3チャネル別BMC(仮説例)
ここは理解のための仮説です。実務では「各ブロック1〜3行」で十分です。
5-A. 文房具カフェ(実店舗)BMC(仮説)
- Customer Segments:表参道/原宿で休日に“ちょっとおしゃれで特別”を求める20代女性
- Value Propositions:文房具体験×空間×企画で、休日の特別感を短時間で得られる
- Channels:Instagram/Googleマップ/公式サイト(予約・料金案内)
- Customer Relationships:企画更新で想起→再来店、来店後の共有導線(写真・次回予告)
- Revenue Streams:客数×客単価×粗利率(回転・稼働がレバー)
- Key Resources:空間・企画力・現場オペ・体験導線(VRIO投資対象の候補)
- Key Activities:企画設計、予約前案内、混雑運用、体験提供、次回導線
- Key Partners:近隣導線(周辺施設連携があれば)、決済/予約システム等
- Cost Structure:人件費・家賃・原材料、混雑による機会損失(稼働/回転の毀損)
ズレの当たり:VPは強いが、予約前不安(混雑/料金/所要時間)で止まる → Channels/Relationshipの設計が課題になりやすい
5-B. 文房具カフェオンラインストア(自社EC)BMC(仮説)
- Customer Segments:買い逃し回避/正規の安心+作品理解・作品愛(デザイン)重視層
- Value Propositions:公式の安心+企画背景が伝わるデザインで“納得して買える”
- Channels:SNS→商品ページ、Owned(特集・告知)、購入後メール/同梱
- Customer Relationships:発売前想起(連載/予告)→通知、購入後満足→レビュー/共有
- Revenue Streams:注文件数×貢献利益/注文(第12回)
- Key Resources:正規性の根拠、企画背景コンテンツ資産、情報設計テンプレ(VRIO投資対象)
- Key Activities:企画/開発、要点サマリ作成、商品ページ運用、出荷品質、CS
- Key Partners:製造・物流・決済・IP(供給者要因)
- Cost Structure:原価、送料負担、決済手数料、梱包、CS、キャンセル/返品
ズレの当たり:VP(安心・納得)を言うほど、条件が複雑だと離脱 → “要点サマリ前倒し”が右側(VP/Channels)と左側(Activities/O)を繋ぐ
5-C. ユウセイ堂(モール型)BMC(仮説)
- Customer Segments:検索・比較して早く確実に買いたい/合致不安・届く不安を避けたい層
- Value Propositions:合致確認が速く、期待通りに届く“安心な買い物”
- Channels:モール検索→商品ページ→購入(モール内接点が中心)
- Customer Relationships:お気に入り/フォロー、レビュー蓄積で社会的証明、再購入導線
- Revenue Streams:注文件数×貢献利益/注文(モール手数料・出荷費含む)
- Key Resources:合致確認テンプレ、誤認防止ルール、検品・梱包運用品質(VRIO投資対象の候補)
- Key Activities:商品同定情報整備、タイトル/画像/冒頭要点、検品・梱包、CS、レビュー対応
- Key Partners:モール(プラットフォーム)、配送、仕入先
- Cost Structure:モール手数料、出荷作業、梱包資材、CS、誤認返品・低評価の機会損失
ズレの当たり:競争構造が厳しい中、値下げは利益を削る → “合致確認+届く安心”をKey Activitiesとして標準化し、VPで比較軸をずらす
6. ミニ演習(5分):担当チャネルのBMCを“1枚”で作り、ズレを3つ見つける
担当チャネルを1つ選び、各ブロックを1〜2行で埋めてください(完璧不要)。
ミニ演習(記入用テンプレ)
【担当チャネル】____(店舗/自社EC/モール) Customer Segments(誰に): Value Propositions(何を約束): Channels(どう届ける): Customer Relationships(関係の作り方): Revenue Streams(どう儲かる:粗利/貢献利益目線): Key Resources(資産・強み): Key Activities(中核活動): Key Partners(外部協力): Cost Structure(主なコスト・利益が削られる点): 整合性チェック(ズレを3つ): 1) ____ 2) ____ 3) ____ 重点テーマ(今期1つ): ____(理由:____) 運用接続(第15回の型へ): - KGI:____(粗利/貢献利益) - 該当ファネル段階:上流/中流/下流(どれ?) - 実験テーマ(If→Then):____ - Primary / Secondary / Guardrail:____ / ____ / ____
コツ:ズレは「右側(価値・顧客)と左側(活動・資源)」の間に出ます。
特に “価値を言うほど、運用が追いついていない” ときに、BMCは効きます。
7. よくある失敗(BMCを“使える形”にするための注意点)
- 3チャネルを1枚に混ぜる → まずはチャネル別。横断は“比較”でやる
- 文章が長すぎる → 各ブロック1〜3行に削る(合意形成のため)
- Costを軽視する → EC/モールは変動費・返品・CSが利益を削る(第12回)
- Key Activitiesが抽象的 → 「合致情報整備」「要点サマリ」「検品・梱包」など行動粒度にする(第20回)
- 作って終わる → 重点テーマを1つに絞り、実験に落として運用へ(第15回)
8. ChatGPTへの質問例(この回は合計5つ)
使い方:①〜③は担当チャネルのものを1つで十分です。④は横断整理、⑤は理解チェックです。
① 文房具カフェ(実店舗):BMCを作り、体験×運用の整合性を点検する
あなたは社内マーケ講師です。 文房具カフェ(実店舗)のターゲットは、表参道/原宿エリアで休日に「ちょっとおしゃれで特別な体験をしたい」20代女性です。 この前提でBMC(9ブロック)を各1〜3行で作ってください。 次に、整合性の弱点(ズレ)を3つ指摘し、 今週の重点テーマを1つに絞ってください。 最後に、そのテーマを第15回の運用(KGI→ファネル→CJM→実験)に接続し、 実験案(Primary/Secondary/Guardrail)まで提案してください。
② 自社EC:BMCを「貢献利益」と「買い逃し不安」に接続して作る
あなたは社内マーケ講師です。 文房具カフェオンラインストア(自社EC)のターゲットは 買い逃し回避/正規ルートの安心+作品理解・作品愛(デザイン)重視です。 BMC(9ブロック)を作り、Revenue Streamsは「注文件数×貢献利益/注文」で書いてください。 次に、Cost Structureで利益を削りやすい要因を5つ挙げ、 それを抑えるためにKey Activitiesをどう変えるべきか提案してください。
③ ユウセイ堂(モール):BMCから「値下げ以外の差別化」を言語化する
あなたは社内マーケ講師です。 ユウセイ堂(モール型)のターゲットは 検索・比較して早く確実に買いたい+合致不安・届く不安なく満足して買いたい、です。 BMC(9ブロック)を作り、 Value Propositionsを「合致確認」と「届く安心」で2本立てにしてください。 次に、競争が厳しい中で利益を守るために、 Key ActivitiesとGuardrail(不一致返品率・低評価率など)をセットで3つ提案してください。
④ 3チャネル横断:BMCを並べて役割分担と共通投資テーマを決める
店舗(文房具カフェ)/自社EC(文房具カフェオンラインストア)/モール(ユウセイ堂)のBMCを前提に、 3チャネルの役割分担(各1文)を作ってください。 さらに、3チャネル共通で投資すべきKey Resource(例:安心の標準テンプレ等)を1つ提案し、 それがKGI(粗利/貢献利益)にどう効くかも一言で説明してください。
⑤ 理解チェック:BMCクイズ
今日のテーマ「ビジネスモデルキャンバス(BMC)」について理解チェック問題を5問作ってください。 形式:○×2問、選択式2問、短答1問。解答と解説付き。 例は、文房具カフェ/オンラインストア/ユウセイ堂から必ず入れてください。
9. 理解チェック(3問・5分)
- BMCの9ブロックを列挙できる?(右側5つ/左側3つ/下段1つの意識で)
- 「Value Propositionsは強いのに売れない」とき、BMC上で最初に疑うべきブロックはどれ?(理由も)
- BMCで見えた重点テーマを、週次運用(第15回の型)に接続するには次に何をする?(KGI・ファネル・実験の観点で)
10. 今日のまとめ(3行)
- BMCは、価値・顧客・収益・活動・コストを9ブロックで1枚に統合し、「儲けの仕組み」の整合性を見るモデル。
- 作る順序は 右(顧客/価値)→左(資源/活動)→コスト。ズレを3つ見つけ、重点テーマを1つに絞る。
- 重点テーマは、KGI(粗利/貢献利益)→ファネル→CJM→実験へ落として週次で回す。
次回予告(第23回)
次回は アンゾフの成長マトリクス(ver1.0) を扱います。
BMCで整理した現状のビジネスモデルを前提に、浸透/開発/開拓/多角化のどこを狙うべきかを整理し、
3チャネルの成長の打ち手(どこに新しさを入れるか)を決めます。
