コース内容
Marketing Basic Lecture
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東光ブロズのマーケティングベーシックレクチャー

第23回カリキュラム(ver1.0)

アンゾフの成長マトリクス:成長の選択肢(浸透/開発/開拓/多角化)を整理し、3チャネルの“次の伸ばし方”を決める
(文房具カフェ/文房具カフェオンラインストア/ユウセイ堂)

この回は「思いつきで新施策を増やす」ためではありません。
第22回(BMC)で整理した現在の儲けの仕組みを前提に、
成長の“新しさ”がどこに入るのか(市場か/商品か)を揃え、
3チャネルの役割分担と投資の優先順位を言語化します。数値は不要、まずは仮説でOKです。

所要時間
30〜45分(読む20分+ミニ演習5分+ChatGPTで整理10分)

※成果物は重くしません。チャネル別に「今期はどこを狙うか」を1〜2象限に絞れれば十分です。

0. まず第22回(BMC)の要点を簡単に復習(3分)

第22回では、ビジネスモデルを9ブロック(BMC)で1枚に統合し、
右側(顧客・価値・収益)と左側(資源・活動・コスト)の整合性の弱点(ズレ)を見つけました。

  • 強み(VRIO)は Key Resources / Key Activities に落ちる
  • 収益は、可能なら 粗利/貢献利益 で語る(第12回)
  • 結論は「重点テーマ1つ」→ 第15回の運用(KGI→ファネル→実験)へ接続

ただしBMCは「現状の構造」を揃えるのに強い一方で、
次の問いが残ります。

  • 今期、成長のためにどこを新しくするのか(市場?商品?)
  • 3チャネルで、同じ成長を狙うのか/分担するのか
  • “やること”が増えすぎないように、成長の選択肢を整理したい

そこで第23回は、成長の方向を整理するアンゾフの成長マトリクスを扱います。

1. 今日のゴール(この回でできるようになること)

  1. アンゾフ(市場×商品)の4象限を説明できる
  2. 3チャネルで、今期の成長方針を1〜2象限に絞れる
  3. 選んだ象限を、第15回の運用(KGI→ファネル→実験)に接続できる

この回のキーメッセージ

  • 成長は「市場」か「商品」か、どこに新しさを入れるかで整理できる
  • 浸透が最も確度が高く、多角化が最も不確実
  • 象限を決めると、やらないことも決まる

この回の成果物(軽量)

  • チャネル別:今期の重点象限(1〜2)
  • 象限別:代表施策案(各2〜3)
  • 象限選定の理由(Impact/Confidence/Effort目線で一言)
  • 運用接続:KGI(利益)・主要KPI・実験テーマ(1本)

2. アンゾフの成長マトリクスとは何か:成長の“新しさ”を2軸で整理する

アンゾフの成長マトリクスは、成長戦略を次の2軸で整理します。

  • 市場(顧客):既存か、新規か
  • 商品(価値/提供):既存か、新規か

この2×2で、成長の選択肢は4つに分かれます。

① 市場浸透(既存市場 × 既存商品)

既存顧客に、既存の提供をより多く買ってもらう/来てもらう(CVR・再来店・頻度)

② 商品開発(既存市場 × 新規商品)

既存顧客向けに、新しい企画・新商品・新メニュー・新体験を出す

③ 市場開拓(新規市場 × 既存商品)

既存の提供を、別の顧客層・別地域・別チャネルへ拡張する

④ 多角化(新規市場 × 新規商品)

新しい顧客に、新しい提供で勝ちに行く(不確実性が最も高い)

2-1. この回の実務的な前提:優先順位は“確度”から

第10回で扱った「インパクト×確度×工数」の観点に揃えると、ざっくりこう捉えられます。

  • 市場浸透:確度が高い(運用改善・導線改善・CRMで積み上がる)
  • 商品開発:中(企画力が強みなら当たりやすいが、工数が増えやすい)
  • 市場開拓:中〜低(届け方・媒体・オペの適応が必要)
  • 多角化:低(未知が多い。実験設計が必須)


3. どの順序で考えるか:BMC→4象限→重点1〜2象限に絞る

おすすめは次の 6ステップです(軽量版)。

Step 1:対象(チャネル)を固定する

  • 店舗/自社EC/モールで、別々にアンゾフを当てる(混ぜない)

Step 2:「既存市場」と「既存商品」を定義する

  • 既存市場=今の主なターゲット(第4回以降の前提)
  • 既存商品=今の主力価値(USP/RTB、体験、主要SKUなど)

Step 3:4象限それぞれに“具体施策”を2〜3個ずつ置く

思考の漏れを防ぐために一度は全部出します(ただし、後で絞る前提)。

Step 4:象限ごとに「確度」と「必要な強み」を確認する

  • VRIOで投資対象になった資源・活動が活きる象限はどれか
  • 5フォースで圧力が強い土俵で、どの象限が合理的か

Step 5:今期の重点象限を1〜2に絞る

  • 原則:浸透は常に走らせる(運用で積み上がる)
  • 伸びの柱:商品開発 or 市場開拓をどちらか(or 小さく両方)
  • 多角化は、やるなら小さな実験で(第11回)

Step 6:第15回の運用へ接続(KGI→ファネル→実験)

  • 選んだ象限の施策を、Primary/Secondary/Guardrailで検証可能にする
  • KGIは利益(粗利/貢献利益)で置く(第12回)

4. 典型パターン:アンゾフが効くのは「やることが増えすぎる」時

パターンA:施策が散っている → “新しさの場所”を揃える

  • 症状:新商品、SNS強化、広告、イベント…が同時に走って何が効いたか分からない
  • 処方箋:今期は「浸透+商品開発」など、象限を決めて実験を絞る

パターンB:成長したいが利益が残らない → “浸透”で利益レバーを先に作る

  • 症状:売上は追うが、貢献利益が薄い/返品・CSで削られる
  • 処方箋:浸透(CVR・誤認防止・運用品質)で利益が残る型を先に作る

パターンC:多角化したい → “小さく検証”の前提が必要

  • 症状:新しいことをやりたいが、失敗コストが怖い
  • 処方箋:多角化は最小単位(SKU一部/週末枠/投稿単位)で、検証設計を先に作る

5. 御社の例:3チャネル別アンゾフ(仮説)

ここは理解のための仮説例です。実務では、各チャネルで「今期の重点象限」を1〜2に絞れば十分です。

5-A. 文房具カフェ(実店舗)

象限 施策例(2〜3) 狙う指標(例)
市場浸透 予約前不安(料金/所要時間/混雑/手順)の一枚集約/予約導線短縮/Googleマップ情報整備 予約完了率、予約到達率、キャンセル率(Guardrail)
商品開発 季節企画/イベント、体験メニューのアップデート、写真スポットの強化 客単価、再来店率、保存/シェア(想起)
市場開拓 平日需要(近隣ワーカー)向けの導線/訪日観光向けの基本情報整備(言語含む)/法人利用 平日稼働率、指名検索、予約構成比
多角化 体験×物販の新収益(限定セット)など(小さく試す前提) 粗利/日、在庫回転、クレーム(Guardrail)

今期の絞り(例):浸透+商品開発(まず“予約で落とさない”を固め、企画更新で想起と再来店を伸ばす)


5-B. 文房具カフェオンラインストア(自社EC)

象限 施策例(2〜3) 狙う指標(例)
市場浸透 要点サマリ前倒し(締切/発送/注意/正規)/FAQ上部整理/購入導線の摩擦削減 CVR、カート投入率、キャンセル率(Guardrail)
商品開発 新コラボ/新SKU、限定バンドル、購入後体験(同梱/背景)強化 AOV、レビュー率、再購入率
市場開拓 新しい流入源(媒体)開拓、ギフト層の訴求、海外発送等(要検証) 新規流入比率、CTR、獲得単価(可能なら)
多角化 デジタル体験/会員制など(不確実性が高いので小さく) LTV仮説、継続率、解約(Guardrail)

今期の絞り(例):浸透+商品開発(まず貢献利益が残るCVR改善を固め、企画資産で次の柱を作る)


5-C. ユウセイ堂(モール型)

象限 施策例(2〜3) 狙う指標(例)
市場浸透 合致確認チェックリストの標準化/誤認防止(非対応の明確化)/届く安心(検品・梱包)可視化 CTR、CVR、不一致返品率(Guardrail)、低評価率(Guardrail)
商品開発 需要の強い周辺SKU追加、関連商品セット、購入後の再購入導線強化 注文件数、AOV、再購入(可能なら)
市場開拓 別モール/別カテゴリへ展開(ただし運用テンプレが前提) 新カテゴリCVR、低評価率、CS負荷
多角化 新しい提供形態(定期便等)※不確実性大のため慎重 継続率、返品/解約、対応負荷

今期の絞り(例):浸透を最優先(競争構造が厳しいほど、誤認防止と安心差別化で“利益が残る型”を固める)


6. ミニ演習(5分):担当チャネルの「今期の象限」を1〜2に絞る

ミニ演習(記入用テンプレ)

【担当チャネル】____(店舗/自社EC/モール)

既存市場(誰?):____
既存商品(何?):____

4象限の施策案(各2つ):
- 市場浸透:①____ ②____
- 商品開発:①____ ②____
- 市場開拓:①____ ②____
- 多角化:①____ ②____

今期の重点象限(1〜2):____
理由(インパクト/確度/工数):____

運用接続(第15回):
- KGI(粗利/貢献利益):____
- 主要KPI(3つ以内):____
- 実験テーマ(If→Then):____
- Primary / Secondary / Guardrail:____ / ____ / ____

コツ:迷ったらまず浸透を選び、次に「商品開発 or 市場開拓」をどちらか小さく追加するのが現実的です。


7. よくある失敗(アンゾフを“使える形”にするための注意点)

  • 4象限全部やろうとする → 今期は1〜2象限に絞る(やらないことも決める)
  • 「新市場」「新商品」の定義が曖昧 → 既存のターゲット/価値からズレたら新扱い
  • 象限が決まっても運用に降りない → ファネル段階・KPI・実験に落とす(第15回)
  • 多角化が大きすぎる → SKU一部/週末枠/投稿単位など最小単位で
  • 利益が置き去り → KGIを粗利/貢献利益で置く(第12回)

8. ChatGPTへの質問例(この回は合計5つ)

使い方:まずは①〜③(担当チャネルのもの1つ)だけで十分です。④は横断整理、⑤は理解チェックです。

① 文房具カフェ(実店舗):アンゾフで今期の成長方針を決める

あなたは社内マーケ講師です。
文房具カフェ(実店舗)のターゲットは、表参道/原宿エリアで休日に「ちょっとおしゃれで特別な体験をしたい」20代女性です。
アンゾフの成長マトリクス(浸透/商品開発/市場開拓/多角化)を店舗に当てはめ、
各象限の施策例を3つずつ出してください。
次に、今期の重点象限を2つに絞り、理由(インパクト/確度/工数)を添えてください。
最後に、重点象限の施策を1つ実験(Primary/Secondary/Guardrail)に落として提案してください。

② 自社EC:浸透(CVR改善)と商品開発(コラボ)をどう両立するか

あなたは社内マーケ講師です。
文房具カフェオンラインストア(自社EC)のターゲットは
買い逃し回避/正規ルートの安心+作品理解・作品愛(デザイン)重視です。
アンゾフの4象限で施策案を各3つ出し、
「今期は浸透を必須」とした上で、商品開発か市場開拓のどちらを優先すべきか提案してください。
提案には、KGI(総貢献利益)にどう効くかを一言で添えてください。

③ ユウセイ堂(モール):浸透(安心差別化)に集中する場合の施策設計

あなたは社内マーケ講師です。
ユウセイ堂(モール型)のターゲットは
検索・比較して早く確実に買いたい+合致不安・届く不安なく満足して買いたい、です。
アンゾフで4象限の施策案を各2つ出した上で、
今期は「市場浸透」に集中する判断が合理的かを説明してください。
最後に、浸透施策を1つ選び、Guardrail(不一致返品率・低評価率など)つきで実験案を提案してください。

④ 3チャネル横断:今期の成長ポートフォリオ(象限×チャネル)を作る

店舗(文房具カフェ)/自社EC(文房具カフェオンラインストア)/モール(ユウセイ堂)について、
各チャネルの今期の重点象限(1〜2)を提案し、
象限×チャネルで「成長ポートフォリオ」を表でまとめてください。
最後に、全社共通で今期の重点テーマを1つ提案し、KGI(粗利/貢献利益)にどう効くかも一言で説明してください。

⑤ 理解チェック:アンゾフクイズ

今日のテーマ「アンゾフの成長マトリクス」について理解チェック問題を5問作ってください。
形式:○×2問、選択式2問、短答1問。解答と解説付き。
例は、文房具カフェ/オンラインストア/ユウセイ堂から必ず入れてください。

9. 理解チェック(3問・5分)

  1. アンゾフの4象限(浸透/商品開発/市場開拓/多角化)を、軸(市場×商品)つきで説明できる?
  2. 「新しい施策が増えて収拾がつかない」時、アンゾフを使うと何が決めやすくなる?(一言)
  3. 多角化を選ぶ場合、なぜ第11回の“実験設計”が重要になる?(理由を1つ)

10. 今日のまとめ(3行)

  • アンゾフは、成長の“新しさ”を 市場×商品 の2軸で整理し、4象限で選択肢を揃えるモデル。
  • 今期は象限を1〜2に絞り、やること・やらないことを明確にする(浸透は確度が高い)。
  • 選んだ象限は、KGI(粗利/貢献利益)→ファネル→実験に落として、第15回の週次運用で回す。

次回予告(第24回)

次回から戦術モデルに入り、7P(ver1.0)を扱います。
4Pに People / Process / Physical Evidence を追加して、特に店舗体験(サービス)と運用品質を設計し、
3チャネルそれぞれで「体験・導線・安心」を実装可能な形に落とします。

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