第28回カリキュラム(ver1.0)
RFM分析:顧客を「最近×頻度×利益」で切り分け、広義CRM(リピート/再顧客化/想起)を“誰に何をするか”で運用できる形にする
(文房具カフェ/文房具カフェオンラインストア/ユウセイ堂)
この回は「メルマガ文面を作る」回ではありません。
第13回(広義CRM)で学んだ リピート/再顧客化/想起 を、“対象(誰)”を切り分けて実装する回です。
RFMで「誰に何をするか」が揃うと、第15回の週次運用(KGI→ファネル→CJM→実験→学び)が一気に回りやすくなります。
0. まず第27回(サービスブループリント)の要点を簡単に復習(3分)
第27回では、体験を Evidence / 顧客行動 / フロント / バック / 支援 で1枚にし、
「どこで不安・迷い・摩擦(第14回)が出るか」「どこでGuardrailが悪化しやすいか」を工程で見抜きました。
- フロント改善だけでは事故が再発する → バックと支援(標準化/教育/チェック)まで書く
- RACEと実験(Primary/Secondary/Guardrail)に接続して初めて運用に乗る
ただし、工程を整えても次の課題が残ります。
- CRM(再接触)を回そうとしても、全員に同じ発信になりやすい
- 結果として、反応が薄く「結局センス/気合い」で運用が止まりがち
- 利益(第12回)に効くCRMが、どの顧客層で増えたのかが見えにくい
そこで第28回は、CRMを「誰に」届けるかを切り分けるRFM分析を扱います。
1. 今日のゴール(この回でできるようになること)
- RFM(R/F/M)の意味を説明できる
- 3チャネルで「顧客」と「取引」を定義し、RFMを作れる
- セグメント別に「次の行動」と施策を決め、実験に落とせる
この回のキーメッセージ
- CRMの成否は「文面」より対象の切り分けで決まる
- M(Monetary)は売上より粗利/貢献利益で見るとブレにくい(第12回)
- RFMは“分析”ではなく、次の1〜2手の意思決定装置
この回の成果物(軽量)
- R/F/Mの定義(チャネル別)
- セグメント3〜5個(名前は仮でOK)
- セグメント別の施策1本+KPI
2. RFM分析とは何か:顧客を「最近×頻度×利益」で切り分ける
RFM分析は、顧客を次の3軸でスコア化してセグメント化する方法です。
目的は「分析をきれいにする」ことではなく、CRMを“誰に何をするか”で運用できる状態にすることです。
2-1. R/F/Mの定義
| 指標 | 意味 | 実務での推奨(御社) |
|---|---|---|
| R(Recency) | 最後の購入/来店がどれだけ最近か | 「直近◯日以内」を基準に、休眠/アクティブを切る |
| F(Frequency) | 一定期間に何回買った/来たか | 2回目・3回目を増やす設計に直結(第13回) |
| M(Monetary) | 一定期間でどれだけ価値(売上/利益)を残したか | 売上ではなく粗利/貢献利益で見る(第12回のKGIに接続) |
2-2. 第13回(広義CRM)との接続:RFMは「誰にリピート/再顧客化/想起を狙うか」を決める
- リピート:Rが高い(最近)× Fを増やす(2回目/3回目)
- 再顧客化:Rが低い(離れている)層を起こす(ただしMや過去Fで優先度を変える)
- 想起:RFMは直接の指標ではないが、R低下を抑えるための“再接触設計”の対象を決める
ポイント:CRMの“正解”は1つではありません。RFMで対象を切って、セグメント別に小さく実験(第11回)します。
3. どの順序で作るか:RFM → セグメント → 施策 → 実験
おすすめは次の7ステップ(軽量版)です。
Step 0:チャネルごとに「顧客」と「取引」を定義する(最重要)
- 店舗:顧客=予約/会員/スタンプ等で識別できる単位、取引=来店(または会計)
- 自社EC:顧客=購入者ID(メール等)、取引=注文
- モール:顧客=購入者(プラットフォーム上の識別可能単位)、取引=注文(※規約の範囲で運用)
Step 1:期間(観測窓)を決める
- 目安:直近90日(短期の運用) or 180日(季節性がある場合)
- 店舗は企画周期に合わせて、90日/120日などもOK
Step 2:R/F/Mを計算する(まずは粗く)
- R:最終購入/来店日からの経過日数
- F:期間内の購入/来店回数
- M:期間内の粗利/貢献利益合計(難しければ売上→後で置換)
Step 3:スコア化(1〜5など)してセグメントを作る
- 厳密な統計より、運用できる区切りを優先
- 最初は3段階でもOK(高/中/低)
Step 4:セグメントに「狙う行動」を1つ置く
- 例:新規(R高/F低)→ 2回目購入、優良(R高/F高/M高)→ 次回も逃さず購入、離反リスク(R低/M高)→ 復帰
Step 5:施策をIf→Thenにして“比較できる仮説”にする
例:もし「2回目の不安(条件/合致/混雑)を先に潰す接点」を入れると、Fが増え、件数×利益(第12回)が増えるはず。
Step 6:KPI(Primary/Secondary/Guardrail)を置く
- Primary:リピート率、再購入率、再来店率、再購入件数 など
- Secondary:CTR、再訪率、通知登録、予約ページ到達、Q&A閲覧 など
- Guardrail:返品率(不一致)、低評価率、キャンセル率、苦情/配信停止 など
Step 7:第15回(週次運用)へ接続する
- スコアボードに「RFMセグメント別の件数/利益」を1行追加
- 学びログに「どのセグメントに効いたか」を残す(横展開できる)

4. セグメントの読み方:R/F/Mの組み合わせで“次に何をすべきか”が決まる
典型の見立て(運用で頻出)
- R高 × F低:新規・単発 → 2回目の壁(不安/迷い/摩擦)を潰す
- R高 × F高 × M高:優良(守るべき)→ 離反防止+次回の“逃さない”設計
- R低 × 過去F高 or M高:離反リスク(起こす価値が高い)→ 再顧客化の優先対象
- F高 × M低:頻繁だが利益が薄い → 客単価/粗利率改善(セット/上位提案/送料設計等)
セグメント名は“気持ちよく”しなくていい(重要)
立派な名称(Champions等)より、現場が迷わないラベルが重要です。
例:「新規(2回目待ち)」「優良(守る)」「離反リスク(起こす)」「休眠(低優先)」 の4つでも運用できます。
5. 御社の例:3チャネル別RFMの作り方と、施策の当たり(仮説)
※実務では「取れる範囲」でOK。取れない場合は、まず“識別できる母集団”(予約者/会員/購入者)から始めます。
5-A. 文房具カフェ(実店舗):来店(または予約)RFM
- 顧客:予約者/会員/スタンプ(識別できる単位)
- 取引:来店(or 会計)
- R:最終来店からの日数
- F:直近90日(例)での来店回数
- M:直近90日の粗利(来店粗利の合計が理想。難しければ客単価×粗利率の推計でも可)
施策の当たり:
R高×F低(新規)に「2回目の理由(次回企画)+来店前不安の一枚化」を入れると、Fが伸びやすい。
| セグメント例 | 狙う行動 | 施策例(誠実) | 見るKPI |
|---|---|---|---|
| 新規(R高/F低) | 2回目来店/予約 | 次回企画の“予告”+料金/所要時間/混雑目安の案内一枚 | 再来店率、予約完了率、保存/プロフィール遷移 |
| 優良(R高/F高/M高) | 継続+紹介 | 先行案内(枠の事実提示)+写真/共有導線の強化 | リピート率、紹介/同伴、キャンセル率(Guardrail) |
| 離反リスク(R低/過去M高) | 復帰 | “今行く理由”の提示(季節企画)+不安の先回り(混雑/予約) | 復帰率、予約ページ到達、問い合わせ(混雑/料金) |
5-B. 文房具カフェオンラインストア(自社EC):注文RFM(貢献利益基準)
- 顧客:購入者ID(メール等)
- 取引:注文
- R:最終購入からの日数
- F:直近180日(例)での購入回数
- M:直近180日の総貢献利益(第12回のテンプレを利用)
施策の当たり:
R高×F低には「買い逃し不安の先回り(条件要点)」が効きやすい。
R低×M高は“起こす価値”が高いので、再顧客化の優先対象。
| セグメント例 | 狙う行動 | 施策例 | Primary / Guardrail |
|---|---|---|---|
| 新規(2回目待ち) | 次回コラボ購入 or 通知登録 | 購入後メール/同梱で「次回の買い逃し回避の方法(締切/発送の見方)」を案内 | Primary=2回目購入率/Guardrail=キャンセル率 |
| 優良(守る) | 継続購買+レビュー | 先行情報(事実条件の明確化)+作品背景の連載(想起) | Primary=リピート率/Guardrail=返品・交換問い合わせ |
| 離反リスク(起こす) | 復帰購入 | 「今の企画の見どころ」+「条件要点(締切/発送)」を最上部で短く提示 | Primary=復帰率/Guardrail=配信停止・苦情 |
5-C. ユウセイ堂(モール型):モール制約下のRFM(できる範囲で)
注意:モールはプラットフォーム規約・個人情報制約が強い場合があります。
ここでは「規約の範囲で取得・連絡できる前提」で、RFMを注文履歴ベースに落とします。
- 顧客:モール上で識別できる購入者単位(注文履歴で集計可能な範囲)
- 取引:注文
- R:最終購入からの日数
- F:直近180日での購入回数
- M:直近180日の貢献利益合計(モール手数料・梱包・出荷等込み)
施策の当たり:モールは「買い手の交渉力が強い」土俵(第19回)。
なのでRFM施策も、値引きより合致確認(誤認防止)と届く安心でGuardrailを守る設計が優先。
| セグメント例 | 狙う行動 | 施策例(モール内で現実的) | Guardrail |
|---|---|---|---|
| 新規(R高/F低) | 同カテゴリ再購入 | 同梱で「次回迷わない合致チェック」+関連商品の導線(規約範囲) | 不一致返品率、低評価率 |
| 優良(R高/F高) | 継続購買+レビュー | 「届く安心(検品/梱包)」の可視化+レビュー依頼(誠実) | 配送/梱包言及の悪化 |
| 離反リスク(R低/過去F高) | 復帰 | 商品ページの標準テンプレ改善(合致チェック・非対応の明確化)で「戻っても失敗しない」状態に | 誤認由来の問い合わせ・返品 |
6. ミニ演習(5分):担当チャネルで“3セグメント”だけ作る
最初から細かいセグメントは不要です。3つだけ作ると運用に乗ります。
ミニ演習テンプレ(そのまま埋めてOK)
【担当チャネル】____(店舗/自社EC/モール) 【観測期間】____(例:直近90日 or 180日) Rの定義:____(例:最終購入からの日数) Fの定義:____(例:期間内の購入回数) Mの定義:____(例:期間内の貢献利益合計) セグメント①(例:新規/2回目待ち) - 条件(R/F/Mの目安):____ - 狙う行動(次の行動):____ - 施策(If→Then):____ - Primary / Guardrail:____ / ____ セグメント②(例:優良/守る) - 条件:____ - 狙う行動:____ - 施策:____ - Primary / Guardrail:____ / ____ セグメント③(例:離反リスク/起こす) - 条件:____ - 狙う行動:____ - 施策:____ - Primary / Guardrail:____ / ____
コツ:R(最近)をまず強く使うと迷いません。「最近の人に2回目」「離れた人に再顧客化」が基本線です。
7. よくある失敗(RFMを“回る運用”にするための注意点)
- セグメントを増やしすぎる:最初は3〜5個で十分。増やすほど実行できなくなる
- Mを売上だけで見る:値引き・送料負担・手数料で利益が消える(第12回)。可能なら貢献利益で
- 「誰に何をするか」が曖昧:セグメントごとに“次の行動”を1つにする
- 一斉配信の気合い勝負:RFMで対象を切り、実験(第11回)で勝ち筋を確定
- Guardrail不在:再顧客化で返品・低評価・苦情が増えると長期で負ける
- モール規約を無視:できる接点(商品ページ/同梱/モール機能)に落とす
8. ChatGPTへの質問例(この回は合計5つ)
使い方:①〜③(担当チャネル1つ)で十分です。④は横断、⑤は理解チェックです。
① 文房具カフェ(実店舗):来店RFMを作り、再来店(2回目)を増やす設計
あなたは社内マーケ講師です。 文房具カフェ(実店舗)のターゲットは、表参道/原宿エリアで休日に「ちょっとおしゃれで特別な体験をしたい」20代女性です。 店舗のRFM(R=最終来店からの日数、F=90日以内の来店回数、M=粗利ベース)を前提に、 運用しやすいセグメントを4つ(例:新規/優良/離反リスク/休眠)に分けて定義してください。 各セグメントについて「次の行動」「施策(再接触の理由×接点)」「Primary/Guardrail」を提案してください。 最後に、今週試す実験を1本(If→Then、Primary/Secondary/Guardrail)で作ってください。
② 自社EC:貢献利益ベースのRFMで、再購入と再顧客化を両立
あなたは社内マーケ講師です。 文房具カフェオンラインストア(自社EC)のターゲットは 買い逃し回避/正規ルートの安心+作品理解・作品愛(デザイン)重視です。 RFM(R=最終購入日、F=180日内注文回数、M=180日内の総貢献利益)でセグメントを5つ作り、 各セグメントに対して - 狙う行動(例:2回目購入、通知登録、復帰購入、レビュー) - 施策(買い逃し不安/正規性不安/条件誤解のどれを潰すか) - Primary/Secondary/Guardrail を整理してください。 最後に、KGI(総貢献利益)への効き方を「件数×貢献利益/注文」で一言でまとめてください。
③ ユウセイ堂(モール):規約制約を前提に、RFMを“できる接点”へ落とす
あなたは社内マーケ講師です。 ユウセイ堂(モール型)のターゲットは 検索・比較して早く確実に買いたい+合致不安・届く不安なく満足して買いたい、です。 モールの制約(直接のCRM連絡が難しい場合がある)を前提に、 注文履歴ベースでRFMセグメントを4つ作ってください。 各セグメントに対し、モール内で現実的な打ち手(商品ページ改善、同梱、レビュー運用、再購入導線等)を提案し、 Guardrail(不一致返品率・低評価率など)を必ず入れてください。
④ 3チャネル横断:RFMを共通言語にして“学びログ”を統一
店舗(文房具カフェ)/自社EC(文房具カフェオンラインストア)/モール(ユウセイ堂)で、 RFMを共通言語にして学びを横展開したいです。 各チャネルで共通に使えるセグメント名(5つ以内)を定義し、 チャネルごとに「そのセグメントで狙う次の行動」「代表施策」「Primary/Guardrail」を整理してください。 最後に、週次運用(第15回)で見るべきRFM関連KPIを5つ提案してください。
⑤ 理解チェック:RFM分析クイズ
今日のテーマ「RFM分析」について理解チェック問題を5問作ってください。 形式:○×2問、選択式2問、短答1問。解答と解説付き。 例は、文房具カフェ/オンラインストア/ユウセイ堂から必ず入れてください。
9. 理解チェック(3問・5分)
- RFMのR/F/Mはそれぞれ何を意味する?(一言ずつ)
- 御社の運用で、M(Monetary)を売上より粗利/貢献利益で見た方が良い理由は?(第12回との接続で)
- RFMでセグメントを作ったあと、なぜ実験(Primary/Secondary/Guardrail)に落とす必要がある?(第11回との接続で)
10. 今日のまとめ(3行)
- RFMは顧客を最近(R)×頻度(F)×利益(M)で切り分け、CRMを「誰に何をするか」で運用できる状態にする。
- Mは可能なら粗利/貢献利益で扱うと、KGI(利益)に直結し意思決定がブレにくい。
- セグメントは増やしすぎず(3〜5)、狙う行動→施策→実験へ落として週次運用に接続する。
次回予告(第29回)
次回は Kanoモデル(ver1.0) を扱います。
RFMで「誰に」を切れた状態で、次は「何を改善すると満足が上がるか(当たり前/一元/魅力)」を整理し、
第10回の優先順位付けと第11回の実験に直結する“改善の当て方”を強化します。