コース内容
Marketing Basic Lecture
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東光ブロズのマーケティングベーシックレクチャー

 

第20回カリキュラム(ver1.0)

バリューチェーン分析:価値が生まれる工程/利益が削られる工程を可視化し、「どこに手を入れるべきか」を決める
(文房具カフェ/文房具カフェオンラインストア/ユウセイ堂)

この回は“現場の作業手順書”を作る回ではありません。価値とコストの発生源を工程で捉え、戦い方を具体化する回です。
数値は不要、まずは仮説でOKです。

所要時間
30〜45分(読む20分+ミニ演習5分+ChatGPTで整理10分)

※ポイントは「工程を細かくする」ことではなく、価値の核/利益毀損の源泉(ボトルネック)を見つけることです。

0. まず第19回(5フォース分析)の要点を簡単に復習(3分)

第19回では、競争を「競合の名前」ではなく構造(力学)で捉えました。

  • 5フォース(既存競合/新規参入/代替/買い手/供給者)が強いほど、利益が残りにくい
  • 結論を「値下げ」にせず、値下げ以外の勝ち筋(安心・合致・運用品質・体験・情報設計)に変換する
  • 結果はSWOTのT(脅威)に反映し、重点テーマを絞って運用へ接続する

ただし、5フォースで「競争が厳しい理由」は分かっても、次の疑問が残ります。

  • 「その勝ち筋は、社内のどの工程を強くすれば実現できるのか?」
  • 「どの工程がボトルネックで、利益(粗利/貢献利益)を削っているのか?」

そこで第20回は、社内活動を工程で分解する バリューチェーン分析に進みます。

1. 今日のゴール(この回でできるようになること)

  1. バリューチェーン分析が何のためのモデルか説明できる
  2. 御社の3チャネル(店舗/自社EC/モール)で、価値が生まれる工程ボトルネック工程を言語化できる
  3. 「勝ち筋(差別化)」と「利益(粗利/貢献利益)」を、どの工程を強化するかに落とせる

この回のキーメッセージ

  • バリューチェーン=「内側の作り方」を工程で可視化する
  • 見る軸は2つだけ:価値(差別化)利益(粗利・貢献利益)
  • 工程は増やしすぎない(10個以内
  • 最後に第15回の型(KGI→ファネル→CJM→実験)へ接続して「回す」

この回の成果物(軽量)

  • チャネル別「工程10個以内」リスト
  • 価値が出る工程:2つ(理由つき)
  • 利益が削られる工程:2つ(理由つき)
  • 強化の方向:各工程1文
  • 運用接続:KGI/ファネル段階/実験(Primary/Secondary/Guardrail)

2. バリューチェーン分析とは何か:価値とコストを「工程」で見る

バリューチェーン分析は、企業活動を工程に分解し、

  • どこでお客様の嬉しさ/満足(価値)が生まれているか
  • どこでコストが発生し、利益が削られているか

を可視化するフレームです。

5フォースが「外の力学」なら、バリューチェーンは「内の作り方」です。
競争が厳しいほど、“内側の強化ポイント”を外さないことが重要になります。

2-1. 基本形(ポーターの枠組み)を、御社に合う言葉に置き換える

一般的には、活動は大きく2種類です。

① 主活動(Primary Activities)

「お客様に価値が届くまでの流れ」

  • 仕入・受入(Inbound)
  • 製造・運用(Operations)
  • 出荷・提供(Outbound)
  • 販売・マーケ(Marketing & Sales)
  • サービス(Service:問い合わせ・アフター・体験の余韻)

② 支援活動(Support Activities)

主活動を支える土台

  • 調達(Procurement)
  • 技術・仕組み(Technology/Systems)
  • 人材(HR)
  • 全社基盤(会計、品質、法務、ガバナンス)

2-2. この回での実務的な見方(2つの軸だけ覚える)

バリューチェーンは、最終的にこの2軸で評価すると使いやすいです。

  1. 価値(差別化)軸:お客様の「嬉しい」「満足」「安心」に直結する工程はどこか
  2. 利益(コスト)軸:粗利/貢献利益を押し下げている工程はどこか
    • 例:返品・低評価の原因、CS負荷、梱包/出荷ミス、情報の誤認、手戻り、混雑による機会損失 等

第12回の考え方に接続すると、工程強化は次の両方に効きます。

  • 件数(来店数・注文件数)を増やす
  • 1件あたり利益(粗利/貢献利益)を守る・増やす


3. どの順序でやるか:バリューチェーン→ボトルネック→次の強化ポイント

おすすめは次の 6ステップです(軽量版)。

Step 1:対象を決める(チャネル別に分ける)

  • 店舗(文房具カフェ)
  • 自社EC(文房具カフェオンラインストア)
  • モール(ユウセイ堂)

※土俵が違うので、まず分けるのが基本です。

Step 2:工程を“10個以内”で並べる(増やしすぎない)

例:企画→製造→撮影/説明→掲載→集客→購入/予約→出荷/提供→CS→レビュー/共有→次回導線 など

Step 3:「価値が出る工程」を2つ選ぶ

お客様の満足・安心に直結する工程を特定します(差別化ポイント)。

Step 4:「利益が削られる工程」を2つ選ぶ

返品・低評価・手戻り・混雑・出荷ミスなど、利益毀損の発生源を特定します(ボトルネック)。

Step 5:工程ごとに“強化の方向”を一文にする

例:「合致確認の標準テンプレを作り、誤認を減らす」など。

Step 6:第15回の運用型へ接続する

  • KGI(粗利/貢献利益)にどう効くか
  • どのファネル段階の改善か
  • 実験(Primary/Secondary/Guardrail)に落とす

ポイント

バリューチェーンは「綺麗な図」を作るためではなく、どの工程を強化すると勝ち筋と利益が同時に伸びるかを決めるために使います。


4. ミニ事例(典型パターン):工程改善が「差別化」と「利益」を同時に押し上げる

※特定企業の内部情報ではなく、再現しやすいパターンとして理解してください。

ミニ事例① 「情報設計の標準化」が、CVRと返品を同時に改善する

  • 工程:商品情報作成(Operations)+販売(Marketing & Sales)
  • 効果:誤認が減る → 返品/低評価が減る(利益が守れる)+購入が進む(件数が増える)

ミニ事例② 「購入後体験」が、想起と再購入を生む

  • 工程:サービス(Service)
  • 効果:満足が上がる → レビュー/共有が増える → 想起が増え、次の件数につながる

ミニ事例③ 「運用ミス削減」が、利益の下支えになる

  • 工程:出荷・提供(Outbound)+支援活動(仕組み・人材)
  • 効果:手戻り・問い合わせ・返金が減る → 貢献利益が安定する

5. 御社の例:チャネル別の簡易バリューチェーン(仮説例)

ここは理解のための例です。「どの工程が価値の核か」「どの工程がボトルネックか」を掴むことが目的です。

5-A. 文房具カフェ(実店舗)の簡易バリューチェーン(例)

工程(10以内の例)

  1. 企画(テーマ・体験設計)
  2. 店内準備(空間・導線・備品)
  3. 発信(SNS/マップ)
  4. 予約・来店前案内(混雑/料金/所要時間)
  5. 受付〜着席(初動の安心)
  6. 体験提供(ピーク体験)
  7. 会計・退店(最後の印象)
  8. 次回導線(イベント予告、SNS想起)
  9. フィードバック回収(定性)

価値が出る工程(例)

  • ①企画/⑥体験提供:休日に「ちょっとおしゃれで特別」を作る核
  • ⑦会計・退店:満足の余韻(第13回の想起にも効く)

利益が削られやすい工程(例)

  • ④予約・来店前案内:不安が残ると予定化→予約で止まり機会損失
  • ⑤受付〜着席:混雑で摩擦が出ると満足低下・回転/稼働に影響

強化の方向(例)

  • ④を「不安が一度で解消する」情報設計に(料金/所要時間/混雑目安を集約)
  • ⑤の導線を整備し、体験前の摩擦を最小化

5-B. 文房具カフェオンラインストア(自社EC)の簡易バリューチェーン(例)

工程(例)

  1. 企画(作品理解・作品愛の設計)
  2. デザイン/開発
  3. 製造・品質管理
  4. 撮影・説明作成(見どころ/条件/注意)
  5. 集客(SNS/検索/Owned)
  6. 商品ページ閲覧→購入(決済)
  7. 梱包・出荷
  8. CS(問い合わせ/交換等)
  9. 購入後体験(同梱、背景、次回予告)
  10. レビュー/共有→想起→次回購入

価値が出る工程(例)

  • ①企画/④説明作成:作品理解・作品愛が“伝わる”ことが価値
  • ⑨購入後体験:満足の確定、共有のきっかけ

利益が削られやすい工程(例)

  • ④説明作成が弱いと:条件誤解→問い合わせ/キャンセル(コスト増)
  • ⑦梱包・出荷:ミスが返品・低評価につながりやすい

強化の方向(例)

  • ④を「要点→根拠→詳細」の標準テンプレ化(第14回の迷い/不安対策にも一致)
  • ⑦の品質を守る仕組み(チェック・標準化)で貢献利益を守る

5-C. ユウセイ堂(モール型)の簡易バリューチェーン(例)

工程(例)

  1. 商品選定(SKU・カテゴリ)
  2. 仕入/在庫管理
  3. 商品同定情報の整備(型番・対応条件)
  4. タイトル/画像/説明の標準化
  5. モール内露出(検索・ランキング)
  6. 商品ページ閲覧→購入
  7. 検品・梱包・出荷
  8. CS(合致/配送/初期不良対応)
  9. レビュー/評価(信頼の蓄積)
  10. 再購入(お気に入り等)

価値が出る工程(例)

  • ③④:合致確認ができ、迷わず安心して買える(差別化の核)
  • :期待通り届く安心(運用品質)

利益が削られやすい工程(例)

  • ③④が弱い:誤認→不一致返品・低評価→長期で露出/売上に悪影響
  • が弱い:配送・梱包起因の低評価で不利が増幅

強化の方向(例)

  • ③④を“合致チェックリスト+非対応の明確化”で標準化(差別化と事故防止を両立)
  • ⑦の検品・梱包の標準化で、安心を守り貢献利益を安定化

6. ミニ演習(5分):自分の担当チャネルで「価値2つ/ボトルネック2つ」を選ぶ

担当チャネルを1つ選び、以下を埋めてください(箇条書きでOK)。

ミニ演習(記入用)

価値が出る工程(2つ):
1) ____ 2) ____

利益が削られやすい工程(2つ):
1) ____ 2) ____

来週から強化する方向(1文):
____

ポイント:工程名は抽象にせず、「説明作成」「検品・梱包」「予約前案内」など行動に落ちる粒度で書く。


7. よくある失敗(バリューチェーンを“使える形”にするための注意点)

  • 工程を細かくしすぎる → 10以内にまとめる(運用で使えない)
  • 価値とコストを混ぜて議論する → 価値軸と利益軸を分けて見る
  • 理想論で終わる → 「どの工程を強化するか」を一文で言える状態にする
  • 第15回の運用に戻らない → KGI・ファネル・実験に接続して初めて回り始める

8. ChatGPTへの質問例(この回は合計5つ)

使い方:①〜③は担当チャネルのものを1つだけで十分です。④は横断、⑤は理解チェックです。

① 文房具カフェ(実店舗):体験価値とボトルネックを工程で整理する

あなたは社内マーケ講師です。
文房具カフェ(実店舗)について、ターゲットは表参道/原宿エリアで休日に「ちょっとおしゃれで特別な体験をしたい」20代女性です。
実店舗の簡易バリューチェーン(工程10個以内)を作り、
価値が生まれる工程を2つ、利益が削られやすい工程を2つ選んで理由を説明してください。
最後に、来週試す改善の方向を1つ、Primary/Secondary/Guardrailつきで提案してください。

② 自社EC:企画→説明→購入→出荷→購入後体験までの“価値の核”を特定する

あなたは社内マーケ講師です。
文房具カフェオンラインストア(自社EC)のターゲットは
買い逃し回避/正規ルートの安心+作品理解・作品愛(デザイン)重視です。
自社ECのバリューチェーン(工程10個以内)を作り、
価値の核となる工程を2つ、利益(貢献利益)を削りやすい工程を2つ挙げてください。
特に「条件誤解」「出荷品質」「購入後満足」がどの工程に入るかも明示してください。

③ ユウセイ堂(モール):誤認防止と届く安心を“工程”として設計する

あなたは社内マーケ講師です。
ユウセイ堂(モール型)のターゲットは
検索・比較して早く確実に買いたい+合致不安・届く不安なく満足して買いたい、です。
モール運用のバリューチェーン(工程10個以内)を作り、
最重要のボトルネック工程を1つ選び、改善方向を3つ提案してください。
最後にGuardrail(不一致返品率・低評価率など)を3つ挙げてください。

④ 3チャネル横断:共通の「標準化すべき工程」を1つ選ぶ

店舗/自社EC/モールのバリューチェーンを前提に、
3チャネル共通で標準化すると効果が大きい工程を1つ選び、
標準化のメリット(価値面・利益面)をそれぞれ一言で説明してください。
(例:情報設計テンプレ、検品・梱包手順、案内の一枚化 など)

⑤ 理解チェック:バリューチェーン分析クイズ

今日のテーマ「バリューチェーン分析」について理解チェック問題を5問作ってください。
形式:○×2問、選択式2問、短答1問。解答と解説付き。
例は、文房具カフェ/オンラインストア/ユウセイ堂から必ず入れてください。

9. 理解チェック(3問・5分)

  1. バリューチェーン分析は「何を工程で可視化する」ためのモデル?(価値とコストの両面で)
  2. 工程を細かくしすぎると、なぜ運用に乗りにくい?
  3. バリューチェーンで見つけた改善点を、週次運用(第15回の型)に接続するには、次に何をする?

10. 今日のまとめ(3行)

  • バリューチェーンは、活動を工程に分解して 価値が生まれる場所/利益が削られる場所を見抜くモデル。
  • 価値軸(嬉しい・安心・満足)と利益軸(粗利/貢献利益)を分けて見て、強化ポイントを一文で言える状態にする。
  • 結果はSWOTのS/Wにも反映し、重点テーマを絞って KGI→ファネル→CJM→実験 の運用へつなぐ。

次回予告(第21回)

次回は VRIO分析(ver1.0) を扱います。
バリューチェーンで見えた「価値の核(強みの源泉)」が、持続的に優位になり得る強みか(価値・希少性・模倣困難性・組織)を評価し、投資すべき強みに集中するための回です。

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