コース内容
Marketing Basic Lecture
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東光ブロズのマーケティングベーシックレクチャー

 

第21回カリキュラム(ver1.0)

VRIO分析:強みを「持続的な優位」かどうかで評価し、投資すべき資産に集中する
(文房具カフェ/文房具カフェオンラインストア/ユウセイ堂)

この回は「強みを並べる」回ではありません。
第20回で見えた価値の核(工程)が、持続的に勝てる強みなのかを判定し、
どこに投資し、何を標準化し、何をやめるかまで方向づける回です。
数値は不要、まずは仮説でOKです。

所要時間
30〜45分(読む20分+ミニ演習5分+ChatGPTで整理10分)

※VRIOは「強みの棚卸し」ではなく、投資判断(集中)のためのモデルです。

0. まず第20回(バリューチェーン分析)の要点を簡単に復習(3分)

第20回では、社内活動を工程に分解して、
価値が生まれる工程利益が削られる工程(ボトルネック)を特定しました。

  • 工程は増やしすぎない(10個以内
  • 見る軸は2つ:価値(差別化)利益(粗利・貢献利益)
  • 最後に第15回の運用(KGI→ファネル→CJM→実験)へ接続して「回す」

ただし、バリューチェーンで「価値の核」が見えても、現場では次が迷いやすいです。

  • その強みは他社も真似できるのでは?(=すぐ陳腐化する?)
  • 強み候補が多く、どれに投資すべきか決めきれない
  • 強みがあっても、組織として使いこなせていない(再現性がない)

そこで第21回は、強みを「持続性」の観点で評価する VRIO分析に進みます。

1. 今日のゴール(この回でできるようになること)

  1. VRIO(V/R/I/O)が何を指すか説明できる
  2. 御社3チャネル(店舗/自社EC/モール)で、強み候補をVRIOで評価し「投資対象」を特定できる
  3. 評価結果を、SWOT・バリューチェーン・週次運用(第15回)へ接続できる

この回のキーメッセージ

  • 強みは「ある」だけでは不十分。持続的に勝てるかを判定する
  • VRIOは投資判断のフィルター(全部やらない)
  • 特に重要なのはI(模倣困難性)O(組織)

この回の成果物(軽量)

  • チャネル別:強み候補3つ(資産・能力)
  • VRIO評価(高/中/低)+理由(各1行)
  • 結論:投資する強みを1つ/標準化する強みを1つ/やめる or 外注を1つ
  • 運用接続:KGI・ファネル段階・実験テーマ(1本)

2. VRIO分析とは何か:強みを「持続性」で評価し、投資の優先順位を決める

VRIO(ブリオ)は、企業の資源・能力(Resources / Capabilities)を、
次の4つの観点で評価するモデルです。

  • V(Value:価値):顧客価値に効くか/機会を取れるか/脅威を受けられるか
  • R(Rarity:希少性):競合も同じように持っていないか(当たり前ではないか)
  • I(Imitability:模倣困難性):真似しにくいか(時間・コスト・ノウハウ・関係性・履歴が必要か)
  • O(Organization:組織):組織として活かせるか(運用・仕組み・人・ルールで再現できるか)

VRIOの本質は「強みを褒める」ことではなく、
(1)投資すべき強み(2)標準化すべき能力(3)やめる/外注する領域 を切ることです。

2-1. ここでいう「強み」は何を指す?(粒度の注意)

VRIOで扱う強みは、抽象語(例:ブランド力)より、行動に落ちる資産・能力にします。

  • 例(店舗):体験導線の設計、現場オペの安定、混雑時の捌き、写真映えの演出
  • 例(自社EC):要点サマリの情報設計テンプレ、企画背景コンテンツ資産、正規性の根拠提示
  • 例(モール):合致確認テンプレ、誤認防止の表現ルール、検品・梱包の品質運用、レビュー蓄積

2-2. VRIOが効く理由(第17〜20回との接続)

  • SWOT:S(強み)の「質(持続性)」を上げ、戦略の精度を上げる
  • 5フォース:強い競争圧力に対して、真似されにくい差を作る
  • バリューチェーン:価値の核となる工程に対して、投資する根拠を作る


3. どの順序でやるか:強み候補 → VRIO評価 → 投資判断

おすすめは次の 6ステップです(軽量版)。

Step 1:対象を決める(チャネル別に分ける)

  • 店舗(文房具カフェ)
  • 自社EC(文房具カフェオンラインストア)
  • モール(ユウセイ堂)

Step 2:強み候補(資産・能力)を3つだけ挙げる

ここで増やすと決められません。まずは「価値の核」から3つに絞ります(第20回の工程がヒント)。

Step 3:VRIOを「高/中/低」で仮置きする

定量不要。理由が1行で言えるレベルで十分です。

Step 4:結論を3分類にする(投資/標準化/撤退)

  • 投資(伸ばす):VRIOが揃い、持続的に勝てる可能性が高い
  • 標準化(守る):価値はあるが希少性/模倣困難性が弱い → 運用で負けないようにする
  • 撤退/外注(やらない):価値が薄い、または組織が活かせない

Step 5:第15回の運用へ接続(KGI→ファネル→CJM→実験)

  • 投資する強みは、どのKGI(粗利/貢献利益)に効くか
  • どのファネル段階の改善か(上流/中流/下流)
  • CJMのどの接点で「不安/迷い/摩擦」を減らすか
  • 実験(Primary/Secondary/Guardrail)に落とす

Step 6:学びログへ(横展開)

例:モールで「誤認防止テンプレ」が効いた → 自社ECの「条件誤解」対策にも転用、など。


4. 判定の読み方:VRIOの組み合わせで「競争上の意味」が変わる

VRIOは、4つのチェックの“通り方”で結論が変わります(典型パターンだけ覚えればOK)。

判定(VRIO) 競争上の意味 推奨アクション
Vが低い 価値に効かない(強みにならない) やめる/外注/縮小
Vは高いがRが低い みんな持っている(競争均衡) 標準化で負けない(コスト最適・品質安定)
V/Rは高いがIが低い 一時的に勝てるが真似されやすい 模倣困難性を上げる(テンプレ資産化・運用ノウハウ化・関係性構築)
V/R/Iは高いがOが低い 宝の持ち腐れ(活かせていない) 組織化(担当・手順・KPI・チェック・教育)
V/R/I/Oが高い 持続的競争優位になり得る 投資・強化(最優先で伸ばす)

重要ポイント

現場で多いのは「Vは高いがOが低い(活かせていない)」です。
VRIOは“強み発見”というより、組織化(O)して再現性を作るために使うと効果が出ます。


5. 御社の例:3チャネル別VRIO(仮説例)

ここは理解のための仮説です。実務では「候補3つ → VRIO仮置き → 投資対象1つ」までできれば十分です。

5-A. 文房具カフェ(実店舗)

強み候補①:体験導線の設計(“おしゃれで特別”を成立させる運用)

  • V:高(体験満足・想起・再来店に直結)
  • R:中(体験型は多いが“文房具体験×空間×企画”は限定)
  • I:中〜高(企画力+現場オペの積み上げが必要)
  • O:中(属人化しやすい → 標準化余地)

結論(仮):Oを上げる(運用標準化)ことで持続性が上がる → 投資候補

強み候補②:予約前不安の“一枚集約”情報設計

  • V:高(予定化→予約の摩擦と不安を下げ、機会損失を減らす)
  • R:低〜中(やれば多くができる)
  • I:低(模倣されやすい)
  • O:高にしやすい(テンプレ化可能)

結論(仮):差別化より「標準化で負けない」領域(守りの強化)

強み候補③:SNSでの“休日の過ごし方”提案コンテンツ

  • V:中〜高(想起・来店理由づくり)
  • R:中(世界観の一貫性が出せれば希少性)
  • I:中(継続の難しさが壁)
  • O:低〜中(継続体制がないと途切れる)

結論(仮):O(継続運用)を整備できれば投資対象に化ける


5-B. 文房具カフェオンラインストア(自社EC)

強み候補①:正規性(公式ルート)+企画背景の説明資産

  • V:高(正規性不安・買い逃し不安の低減/納得に直結)
  • R:高(公式しか言えない情報・根拠がある)
  • I:高(非公式は同じ根拠を作れない)
  • O:中(ページ構造・制作体制・更新ルールが必要)

結論(仮):VRIOが揃いやすい「投資対象」。Oを上げると持続性が最大化

強み候補②:要点サマリ(締切/発送/注意)の情報設計テンプレ

  • V:高(Search→Actionの不安・迷いを短時間で解消)
  • R:中(やればできるが、徹底できる組織は限られる)
  • I:中(形式は模倣可だが、精度と継続が壁)
  • O:高にしやすい(テンプレ運用で再現性を作れる)

結論(仮):差を作るというより「勝ち筋を安定させる運用資産」→投資/標準化の境界

強み候補③:購入後体験(同梱・開封・使い方・次回予告)

  • V:中〜高(満足→レビュー/共有→想起→次回購入)
  • R:中(丁寧にやる事業者は多くない)
  • I:中(やろうと思えばできるが、継続・設計が必要)
  • O:低〜中(制作・封入・CS連携が必要)

結論(仮):O(運用連携)を作れれば、持続性が上がる


5-C. ユウセイ堂(モール型)

強み候補①:合致確認テンプレ(チェックリスト+非対応明確化)

  • V:高(合致不安を潰し、CVR・返品・低評価に効く)
  • R:中(できている店は意外に少ない)
  • I:中(形式は模倣可だが、SKU運用の徹底が壁)
  • O:中〜高(運用ルール化できれば再現可能)

結論(仮):Oを高める(SKU運用ルール化)ことで「真似されにくい運用品質」になりやすい

強み候補②:検品・梱包・出荷の品質運用(届く安心)

  • V:高(低評価・返品の抑制=長期で露出/売上にも効く)
  • R:中(やり切れていない店が多い)
  • I:中〜高(現場品質と仕組みの積み上げが必要)
  • O:中(教育・チェック・標準化が鍵)

結論(仮):持続的優位の候補。O(教育・標準)の投資が効きやすい

強み候補③:レビューの蓄積(社会的証明)

  • V:中〜高(買い手の交渉力が強い環境で“安心”の根拠)
  • R:中(同カテゴリで差は出る)
  • I:高(時間と実績が必要=履歴資産)
  • O:低〜中(レビュー獲得導線・CS連携が必要)

結論(仮):Iは強いがOが弱いと伸びない → レビュー獲得の仕組み化が課題


6. ミニ演習(5分):強み候補3つをVRIOで評価し、投資対象を1つ決める

担当チャネルを1つ選び、強み候補を3つだけ書いて、VRIOを「高/中/低」で仮置きしてください。

ミニ演習(記入用)

【担当チャネル】____(店舗/自社EC/モール)

強み候補①:____
V:高/中/低 R:高/中/低 I:高/中/低 O:高/中/低
理由(1行):____

強み候補②:____
V:高/中/低 R:高/中/低 I:高/中/低 O:高/中/低
理由(1行):____

強み候補③:____
V:高/中/低 R:高/中/低 I:高/中/低 O:高/中/低
理由(1行):____

結論:
- 投資する強み(1つ):____(理由:____)
- 標準化する強み(1つ):____(理由:____)
- やめる/外注(1つ):____(理由:____)

コツ:迷ったら「O(組織)」を見直してください。
“良いこと”より「再現できること」に寄せると、運用が回ります。


7. よくある失敗(VRIOを“使える形”にするための注意点)

  • 強みを抽象語で書く(例:ブランド力)→ 行動に落ちる資産・能力にする(例:要点テンプレ、合致チェック運用)
  • Vだけで判断する → R/I/Oが弱いと「一時的・属人的」で終わる
  • O(組織)を軽視する → 宝の持ち腐れになる(担当・手順・KPI・教育が必要)
  • 候補を増やしすぎる → 3つに絞って決める(投資判断のため)
  • 運用に戻さない → KGI・ファネル・実験に落とすまでがセット

8. ChatGPTへの質問例(この回は合計5つ)

使い方:①〜③は担当チャネルのものを1つだけで十分です。④は横断、⑤は理解チェックです。

① 文房具カフェ(実店舗):体験の強みをVRIOで評価し、投資テーマを決める

あなたは社内マーケ講師です。
文房具カフェ(実店舗)のターゲットは、表参道/原宿エリアで休日に「ちょっとおしゃれで特別な体験をしたい」20代女性です。
実店舗の強み候補を5つ挙げ、それぞれをVRIO(V/R/I/O)で「高/中/低」で評価し、理由も1行ずつ書いてください。
最後に、今期の投資テーマを1つに絞り、
それを第15回の運用(KGI→ファネル→CJM→実験)に接続する形で「次の実験案(Primary/Secondary/Guardrail)」まで提案してください。

② 自社EC:正規性・作品理解の資産を“持続的優位”として言語化する

あなたは社内マーケ講師です。
文房具カフェオンラインストア(自社EC)のターゲットは
買い逃し回避/正規ルートの安心+作品理解・作品愛(デザイン)重視です。
自社ECの強み候補を「資産(コンテンツ・データ・関係性)」と「能力(情報設計・運用)」に分けて各3つ挙げ、
VRIOで評価してください。
特にO(組織:テンプレ化・更新ルール・制作体制)をどう作るべきか、具体案を3つ提案してください。

③ ユウセイ堂(モール):運用品質を“真似されにくい強み”にする設計

あなたは社内マーケ講師です。
ユウセイ堂(モール型)のターゲットは
検索・比較して早く確実に買いたい+合致不安・届く不安なく満足して買いたい、です。
モール運用の強み候補を5つ挙げ、VRIOで評価してください。
評価の結果、I(模倣困難性)とO(組織)を高めるための運用施策を5つ提案し、
Guardrail(不一致返品率・低評価率など)も3つ挙げてください。

④ 3チャネル横断:共通の“投資すべき強み”を1つ決める

店舗(文房具カフェ)/自社EC(文房具カフェオンラインストア)/モール(ユウセイ堂)について、
それぞれの強み候補をVRIOで評価した前提で、
3チャネル共通で投資すべき強み(例:安心の標準化、情報設計テンプレ、運用品質)を1つ提案してください。
その強みがKGI(粗利/貢献利益)にどう効くかも一言で説明してください。

⑤ 理解チェック:VRIOクイズ

今日のテーマ「VRIO分析」について理解チェック問題を5問作ってください。
形式:○×2問、選択式2問、短答1問。解答と解説付き。
例は、文房具カフェ/オンラインストア/ユウセイ堂から必ず入れてください。

9. 理解チェック(3問・5分)

  1. VRIOの4要素(V/R/I/O)はそれぞれ何を意味する?(一言ずつ)
  2. 「Vは高いがOが低い」状態を一言で表すと? その時に最優先でやるべきことは?
  3. VRIOの結果を週次運用(第15回の型)に接続するには、次に何をする?(KGI・ファネル・実験の観点で)

10. 今日のまとめ(3行)

  • VRIOは、強み(資産・能力)を 価値/希少性/模倣困難性/組織で評価し、投資の優先順位を決めるモデル。
  • 結論は「投資/標準化/撤退(外注)」の3分類に落とすと、現場が前に進む。
  • 結果はSWOTのS(強み)の質を上げ、バリューチェーンの強化工程を絞り、KGI→ファネル→CJM→実験へ接続して回す。

次回予告(第22回)

次回は ビジネスモデルキャンバス(BMC)(ver1.0) を扱います。
VRIOで「投資すべき強み」が見えた前提で、価値・顧客・収益・コスト・活動を1枚で統合し、
3チャネルの役割分担と収益構造の整合性を確認します。

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