第27回カリキュラム(ver1.0)
サービスブループリント:店舗体験(+EC/モールの提供工程)をフロント/バックまで分解し、People/Process/Physical Evidenceのボトルネックを“工程×指標”で改善できる形にする
(文房具カフェ/文房具カフェオンラインストア/ユウセイ堂)
この回は「店舗のオペ手順書を作る」回ではありません。
お客様が見ている体験(フロント)と、裏側の運用(バック)を同じ1枚でつなぎ、
「どこで不安・迷い・摩擦(第14回)が生まれ、利益(第12回)が削られているか」を工程で見抜く回です。
第24回(7P)で設計したPeople/Process/Evidenceを、“現場で回る改善単位”に落とします。
0. まず第26回(RACE)の要点を簡単に復習(3分)
第26回では、導線をReach / Act / Convert / Engageの4段階に分け、
段階×KPIで「どこが落ちているか」を週次で切り分けました。
- 弱い段階を1つに絞る → 施策が散らない
- Primary / Secondary / Guardrailで実験に落とす → 学びが残る
- PESOの役割分担を、RACEの段階KPIに変換すると運用が回る
ただしRACEで「Actが弱い/Convertが弱い」まで分かっても、現場で次が詰まります。
- Webの改善は見えるが、店舗の体験や運用のどこを直すかが曖昧
- 「現場が忙しい」などの事情で、改善が属人化しやすい
- フロント改善をしても、裏側が追いつかず、満足(Engage)やGuardrailが悪化する
そこで第27回は、フロントとバックを1枚でつなぐサービスブループリントを導入します。
1. 今日のゴール(この回でできるようになること)
- サービスブループリントの目的(何のための道具か)を説明できる
- 3チャネルで「フロント体験」と「裏側工程」を10ステップ以内で並べられる
- ボトルネックを1つ特定し、RACE×実験に落とせる
この回のキーメッセージ
- “止まり”は接客ではなく、しばしば工程のつなぎ目で起きる
- フロントの改善は、バックが追いつかないと事故(Guardrail悪化)になる
- 7PのPeople/Process/Evidenceは、ブループリントで初めて実装できる
この回の成果物(軽量)
- 簡易ブループリント(10行以内でOK)
- ボトルネック(1つ)+原因(不安/迷い/摩擦)
- 実験案(1本)
2. サービスブループリントとは何か:体験を“表と裏”でつなぎ、改善点を工程で特定する
サービスブループリントは、サービス提供を次の要素で1枚に可視化するフレームです。
CJMが「お客様の気持ちと接点」を強くするのに対し、ブループリントは「裏側を含む実装」を強くします。
2-1. ブループリントの基本要素(この回は5つだけ)
| 要素 | 意味 | 例(店舗/EC/モール) |
|---|---|---|
| ① 物的証拠(Evidence) | お客様が見て触れる“証拠” | 店頭案内/予約ページ/商品ページ要点/梱包・同梱物 |
| ② 顧客行動(Customer Actions) | お客様の行動の流れ | 予約→来店→体験/閲覧→カート→購入/検索→比較→購入 |
| ③ フロント(Frontstage) | お客様に見える従業員/システムの動き | 受付・案内/FAQ・チャット/Q&A回答・メッセージ |
| ④ バック(Backstage) | お客様に見えない裏側の運用 | 予約枠管理/在庫・出荷/検品・梱包/返品処理 |
| ⑤ 支援プロセス(Support) | 裏側を支える仕組み・ルール | テンプレ/チェック表/教育/ツール設定/品質基準 |
2-2. 3本の“線”だけ覚える(運用で迷わないため)
- 接点線(Line of Interaction):顧客行動 ↔ フロントの接点(ここで不安/迷い/摩擦が出る)
- 可視線(Line of Visibility):フロント ↔ バックの境界(見えない裏側が原因の事故を見抜く)
- 内部連携線(Line of Internal Interaction):バック ↔ 支援(属人化・手戻りの温床を特定)
結論:ブループリントの価値は「接点の改善」だけでなく、裏側のボトルネックが顧客体験と利益を壊す場所を見える化できる点です。

3. どの順序で作るか:ブループリント → ボトルネック → RACE×実験
おすすめは次の7ステップ(軽量版)です。
Step 1:対象の体験を“1つ”に絞る
- 店舗:予約→来店→体験→退店のうち、詰まりが大きい区間(例:予定化→予約)
- 自社EC:商品ページ上部→カート→購入(Search→Action)
- モール:合致確認→購入→不一致返品(Act→Convert+Guardrail)
Step 2:顧客行動を5〜7ステップで書く
- 最初は粗くOK。細かすぎると運用に乗りません
Step 3:各ステップの“Evidence(見える証拠)”を置く
- 第14回のポイント:不安の核心は早い位置に出す(要点/チェックリスト)
- 第13回のポイント:購入後/来店後のEvidenceはEngageに効く
Step 4:フロント(見える対応)を書く
- 店員/ページ/FAQ/自動返信など、「お客様が見ている対応」を書く
Step 5:バック(見えない運用)を書く
- 在庫・枠・出荷・検品・CS処理など、事故(Guardrail悪化)の根を見つける
Step 6:支援(ルール/テンプレ/教育/ツール)を書く
- ここが空白だと、改善は属人化し、再現できません(第15回の“学びログ”が残らない)
Step 7:RACEと指標に接続し、実験に落とす
- どの段階(R/A/C/E)の問題かをラベル化
- Primary/Secondary/Guardrailを置いて、1つだけ試す(第11回)
4. 典型パターン:ブループリントで見つかりやすい“詰まりの正体”
パターンA:フロントを直しても改善しない(原因はバックにある)
- 例:説明は良くなったのに、配送遅延/検品ミスで低評価が増える
- 当たり:バックの工程(検品・梱包・在庫管理)がボトルネック
- 処方:支援(チェック表/標準化/教育)を作って“再現可能”に
パターンB:お客様が迷う(情報があるのに判断できない)
- 例:仕様は書いてあるのに合致不安が消えない
- 当たり:Evidenceが散らばり、判断軸がない(第14回:選択肢過多)
- 処方:要点サマリ/チェックリスト化(Evidenceの順序設計)
パターンC:摩擦で止まる(手順が長い/次の一手が不明)
- 例:予約ページに行くまでが遠い、購入完了までが面倒
- 当たり:接点線(Interaction)の設計不良(第14回:デフォルト不足)
- 処方:導線短縮+“今やること”を1つにする
5. 御社の例:3チャネルの簡易サービスブループリント(仮説)
※ここは理解用の仮説例です。工程は「10行以内」で十分。完璧より運用で使える粗さを優先します。
5-A. 文房具カフェ(実店舗):予約〜来店体験の簡易ブループリント
| 顧客行動 | Evidence(見える証拠) | フロント(見える対応) | バック(見えない運用) | 支援(ルール/仕組み) |
|---|---|---|---|---|
| SNSで見かける | 投稿/ハイライト | 企画の要点提示 | 投稿計画 | 投稿テンプレ |
| 予約を検討 | 料金/所要時間/混雑目安 | 案内ページ誘導 | 予約枠管理 | 案内一枚化ルール |
| 予約する | 予約導線/フォーム | 最短導線 | リマインド | キャンセル規定 |
| 来店・受付 | 入口案内/導線 | 受付対応 | 席回し/混雑制御 | ピーク時オペ |
| 体験→退店→想起 | 写真スポット/次回予告 | 共有の一押し | 次回企画準備 | 予告の型/掲示 |
ボトルネックの当たり:「検討→予約」は不安(混雑/料金/所要時間)と摩擦(導線)が出やすい。
RACE接続:Act→Convert。Primary=予約完了率、Guardrail=キャンセル率。
5-B. 自社EC:商品ページ→購入→出荷→購入後の簡易ブループリント
- 顧客行動:SNS流入 → 商品ページ上部閲覧 → 条件確認 → カート → 購入 → 到着 → レビュー/次回想起
- Evidence:要点サマリ(締切/発送/正規/注意)/FAQ/購入確認メール/同梱物
- フロント:商品ページ構成・見出し/FAQ導線/購入後メール(注意+楽しみ方)
- バック:在庫/受注管理/出荷優先度/検品・梱包/CS対応(条件誤解の処理)
- 支援:商品ページテンプレ(要点→根拠→詳細)/出荷チェックリスト/問い合わせ分類ルール
ボトルネックの当たり:Act(不安解消)が弱いと、Convertが伸びず、キャンセル/問い合わせが増えて貢献利益が削られる。
5-C. ユウセイ堂(モール):合致確認→購入→不一致返品まで含む簡易ブループリント
- 顧客行動:検索結果 → 商品ページ → 合致確認 → 購入 → 到着 → 評価/返品判断 → 再購入
- Evidence:タイトル/画像/冒頭チェックリスト(型番/対応/サイズ)/非対応の明確化/梱包品質
- フロント:商品説明・Q&A回答・注意文言(誤認防止)
- バック:仕入・在庫精度/検品・梱包/出荷スピード/返品対応(不一致理由の集計)
- 支援:SKU説明テンプレ(合致→注意→届く安心)/検品基準/不一致原因のタグ運用
ボトルネックの当たり:合致確認のEvidenceが弱いと、CVRだけでなく不一致返品・低評価(Guardrail)が増え、長期で露出も落ちる。
6. ミニ演習(5分):担当チャネルの“1接点”をブループリント化する
いきなり全体を描かず、まずは「止まりが出る接点」だけを1枚にします。
(第15回の運用に乗せるため、まず小さく)
ミニ演習テンプレ(そのまま埋めてOK)
【担当チャネル】____(店舗/自社EC/モール) 【対象の接点(1つ)】____(例:予約直前/商品ページ上部/合致確認箇所) 顧客行動(1〜3ステップ):____ Evidence(見える証拠):____ フロント(見える対応):____ バック(見えない運用):____ 支援(ルール/テンプレ/教育/ツール):____ 止まりの分類:不安/迷い/摩擦(第14回) RACE段階:Reach / Act / Convert / Engage 実験(If→Then) もし____(変更点)をすると、____(Primary)が改善し、Guardrail(____)を悪化させずに進むはず。
コツ:バックと支援まで書くと、「フロントを直しても再発する原因(属人化/手戻り)」が見えます。
7. よくある失敗(ブループリントを“使える形”にするための注意点)
- 細かくしすぎる:最初は10ステップ以内。運用で使えないほど細かいと回りません
- フロントだけ描いて満足する:バックと支援が空白だと、改善は再現できません
- 感想で終わる:RACEのどの段階か、Primary/Guardrailは何かまで落とす
- 事故を見ない:低評価・不一致返品・キャンセルなど、Guardrail起点でボトルネックを見つける
- “誰がやるか”がない:支援プロセスに「テンプレ/チェック/教育」を置く(第15回の運用へ)
8. ChatGPTへの質問例(この回は合計5つ)
使い方:①〜③(担当チャネル1つ)で十分です。④は横断、⑤は理解チェックです。
① 文房具カフェ(実店舗):予約〜来店のブループリントを作り、摩擦/不安の改善を実験化
あなたは社内マーケ講師です。 文房具カフェ(実店舗)のターゲットは、表参道/原宿エリアで休日に「ちょっとおしゃれで特別な体験をしたい」20代女性です。 「予定化→予約→来店→体験→退店」までを、サービスブループリントとして10ステップ以内で作ってください。 各ステップに Evidence / フロント / バック / 支援 を1行ずつ入れてください。 最後に、最重要ボトルネックを1つ選び、不安/迷い/摩擦の分類と、 実験(Primary/Secondary/Guardrail)を1本提案してください。
② 自社EC:商品ページ上部〜購入〜出荷〜購入後体験までをブループリント化し、出荷品質のGuardrailを設計
あなたは社内マーケ講師です。 文房具カフェオンラインストア(自社EC)のターゲットは 買い逃し回避/正規ルートの安心+作品理解・作品愛(デザイン)重視です。 「商品ページ上部→カート→購入→出荷→到着→レビュー」までをブループリント化し、 Evidence/フロント/バック/支援を整理してください。 特に「条件誤解」「出荷品質」「購入後満足」をどの工程で担保するか明示し、 Act→Convert改善の実験案を1本、Primary/Secondary/Guardrailつきで提案してください。
③ ユウセイ堂(モール):合致確認〜購入〜不一致返品までのブループリントで、誤認防止を仕組み化
あなたは社内マーケ講師です。 ユウセイ堂(モール型)のターゲットは 検索・比較して早く確実に買いたい+合致不安・届く不安なく満足して買いたい、です。 「検索結果→商品ページ→合致確認→購入→到着→評価/返品判断」までをブループリント化し、 Evidence/フロント/バック/支援を整理してください。 最重要ボトルネックを1つ選び、誤認防止の改善方向を3つ、 Guardrail(不一致返品率・低評価率など)を3つ挙げてください。
④ 3チャネル横断:標準化すべき“支援プロセス”を1つ選び、テンプレ案を作る
店舗(文房具カフェ)/自社EC(文房具カフェオンラインストア)/モール(ユウセイ堂)について、 サービスブループリントの観点で「3チャネル共通で標準化すると効果が大きい支援プロセス」を1つ選び、 テンプレ(項目10個以内)を作ってください。 価値面(満足/安心)と利益面(粗利/貢献利益)への効き方も一言で説明してください。
⑤ 理解チェック:サービスブループリントクイズ
今日のテーマ「サービスブループリント」について理解チェック問題を5問作ってください。 形式:○×2問、選択式2問、短答1問。解答と解説付き。 例は、文房具カフェ/オンラインストア/ユウセイ堂から必ず入れてください。
9. 理解チェック(3問・5分)
- サービスブループリントは、何を「表と裏」でつなぐためのモデル?(一言で)
- ブループリントで「バック」と「支援」を書く理由は?(属人化/再現性の観点で)
- ブループリントで見つけた改善点を、週次運用(第15回の型)に接続するなら次に何をする?(RACE/実験のどちらでもOK)
10. 今日のまとめ(3行)
- サービスブループリントは、体験をEvidence/顧客行動/フロント/バック/支援で1枚にし、改善点を工程で特定するモデル。
- フロント改善だけでは事故が再発する。バックと支援(標準化/教育/チェック)まで書くと再現可能になる。
- 結果はRACE(どの段階か)→実験(Primary/Secondary/Guardrail)に落として週次運用へ接続する。
次回予告(第28回)
次回は RFM分析(ver1.0) を扱います。
第13回(広義CRM)を“配信の気合”ではなく、顧客状態(最近/頻度/金額)で切り分け、
再顧客化・リピート・想起の打ち手をセグメント別に設計できる形にします。