コース内容
Marketing Basic Lecture
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東光ブロズのマーケティングベーシックレクチャー

第29回カリキュラム(ver1.0)

Kanoモデル:顧客満足を「当たり前/一元/魅力」に分解し、改善の優先順位(インパクト×確度×工数)と実験設計をブレなく決める
(文房具カフェ/文房具カフェオンラインストア/ユウセイ堂)

この回は「満足度調査の理論」を深掘りする回ではありません。
第9回のファネルで特定した“止まりどころ”や、第10回の優先順位付け、第11回の実験設計に対して、
「何を直すと効くのか」を満足構造(Kano)で補強し、安全に・誠実に運用へ落とす回です。

所要時間目安
30〜45分(読む20分+ミニ演習5分+ChatGPTで整理10分)

※数値は不要。まずは仮説でOK。完璧な分類より「次に何を試すか」が決まることを優先します。

0. まず第28回(RFM分析)の要点を簡単に復習(3分)

第28回では、CRM(第13回)を「全員に同じ発信」にせず、RFM(最近×頻度×利益)で対象を切り、
“誰に何をするか”を運用できる形にしました。

  • RFMは分析ではなく 意思決定装置(セグメント→次の行動→施策→実験)
  • Mは売上より 粗利/貢献利益 に寄せるとKGI(利益)に接続できる(第12回)
  • 最後は必ず Primary/Secondary/Guardrail で小さく検証(第11回)

ただしRFMで「誰に」は切れても、次の課題が残ります。

  • 施策候補が多いと、結局「何から直す?」で迷う
  • “満足”の議論がふわっとして、施策が散る
  • 下流(購入/予約)だけ直して、当たり前品質の欠陥(返品/低評価/キャンセル)で事故る

そこで第29回は、改善対象を「満足の種類」で切るKanoモデルを導入し、
優先順位(第10回)と実験(第11回)をブレなくすることを狙います。

1. 今日のゴール(この回でできるようになること)

  1. Kano(当たり前/一元/魅力)の違いを説明できる
  2. 3チャネルで改善テーマをKanoに分類できる
  3. 分類結果を優先順位と実験に落とせる

この回のキーメッセージ

  • 当たり前は欠けると致命傷(返品/低評価/離脱)
  • 一元は改善すると素直に効く(CVR/予約率)
  • 魅力は差別化になるが、当たり前の上に乗る

この回の成果物(軽量)

  • チャネル別:当たり前/一元/魅力の仮説リスト
  • 今週やる改善テーマ(1〜2本)
  • 実験設計(Primary/Secondary/Guardrail)

2. Kanoモデルとは何か:満足を「3種類」に分けて、改善の順番を決める

Kanoモデルは、機能・要素が「顧客満足」にどう効くかを分類する考え方です。
実務で重要なのは、次の3分類だけです(ライト運用版)。

分類 意味 欠けた時 増やした時
当たり前品質(Must-be) “できていて当然”。満足は増えにくいが、欠けると強い不満 致命傷(離脱・返品・低評価・クレーム) 満足は増えにくい(ゼロを防ぐ)
一元的品質(Performance) 良いほど満足が上がり、悪いほど不満が増える 損失(CVR/予約率低下) 改善が素直に効く(数字で出やすい)
魅力品質(Attractive) あると嬉しい。なくても不満は出にくいが、あるとファン化や差別化 大事故にはなりにくい 差別化・想起・共有に効く(第13回にも接続)

2-1. なぜKanoが運用に効くのか

  • 当たり前を先に固める → Guardrail(返品/低評価/キャンセル)を守る
  • 一元で伸ばす → Primary(CVR/予約率/購入率)に効かせる
  • 魅力で差別化 → 競争圧力(第19回)に対して「値下げ以外」で勝つ

3. どの順序で使うか:Kano → 優先順位 → 実験(第10回・第11回に接続)

おすすめは次の6ステップです(軽量版)。

Step 1:止まりどころ(ファネル/CJM)を固定する

  • 店舗:予定化→予約
  • 自社EC:Search→Action
  • モール:合致確認→購入

Step 2:改善候補を5〜10個だけ出す(多すぎない)

第10回の「型(RTB/導線/見せ方/条件/露出)」で漏れなく出して、数は絞る。

Step 3:候補をKanoで仮分類する(当たり前→一元→魅力)

  • 当たり前:誤認防止、条件明確、基本導線、品質、約束の遵守
  • 一元:情報の分かりやすさ、速度、写真の分かりやすさ、比較のしやすさ
  • 魅力:体験のワクワク、限定感(事実)、作品背景の語れる要素、特別感

Step 4:優先順位は“基本ルール”を置く

  • 当たり前:Guardrailに触れるなら最優先(事故を止める)
  • 一元:Primaryに効きやすいので次点(伸ばす)
  • 魅力:当たり前が整ってから(差別化)

Step 5:第10回のスコア(Impact×Confidence×Effort)で上位1〜2本に絞る

Kanoは「順番のガイド」。最終決定はスコアで合意する。

Step 6:第11回の実験設計に落とす(Primary/Secondary/Guardrail)

  • 当たり前:Guardrailが主役(返品/低評価/キャンセル)
  • 一元:Primaryが主役(CVR/予約率)+Secondaryで理由を確認
  • 魅力:Primaryは中流指標(保存/再訪/滞在)→最終的に件数へ


4. 典型パターン:Kanoで“よくある迷い”を解消する

パターンA:魅力を作ったのに売れない(よくある)

  • 原因:当たり前(条件/合致/安心)が欠けていて、損失回避(第14回)が勝つ
  • 処方:先に当たり前を整備 → その上で魅力を上げる

パターンB:当たり前を増やしたのに伸びない

  • 原因:当たり前は“事故を防ぐ”が、伸ばすのは一元
  • 処方:一元(分かりやすさ・比較・導線短縮)を改善しPrimaryへ

パターンC:一元改善でCVRは上がったが、返品/低評価が増えた

  • 原因:誤認誘発・条件不明確で当たり前品質が崩れた
  • 処方:Guardrailを必ず置く(第11回)+誠実な表現(第14回)

5. 御社の例:3チャネルでKano分類→優先テーマ(仮説例)

※ここは仮説例です。実務では「レビュー/問い合わせ/低評価理由(定性)」があると分類精度が上がります。

5-A. 文房具カフェ(実店舗)

Kano分類 要素例 効き方(第9〜15回に接続)
当たり前 料金・所要時間・混雑/予約ルールの明確化/予約導線の迷わなさ/当日の案内 Guardrail(キャンセル/不満)を守り、予定化→予約の摩擦を減らす
一元 予約の手数(クリック数)、情報の見つけやすさ、混雑回避の分かりやすさ Primary(予約完了率/予約完了数)に効きやすい
魅力 “休日の過ごし方”提案/写真映え・体験の語れる要素/次回企画の予告(想起) 想起→再来店(第13回)に効く(ただし当たり前の上に)

優先テーマ(仮):当たり前(不安の一枚化)→一元(予約導線短縮)の順で、まず事故と摩擦を潰す。


5-B. 文房具カフェオンラインストア(自社EC)

Kano分類 要素例 効き方
当たり前 販売期間/締切/発送目安/返品条件の明確化/正規性の根拠/決済・送料の透明性 Guardrail(キャンセル・条件誤解問い合わせ)を守り、損失回避を先に潰す(第14回)
一元 要点サマリの分かりやすさ/比較のしやすさ/画像での納得(ディテール、使用イメージ) Primary(CVR/購入完了率)に効きやすい。Secondaryで「要点閲覧→カート」を確認
魅力 企画背景の連載/作品理解・作品愛の語れる要素/開封体験(同梱)/限定性(事実) 想起・共有(第13回)→次回購買へ(RFMで優良/新規に効く)

優先テーマ(仮):当たり前(条件/正規性の要点前倒し)→一元(要点→根拠→詳細の標準化)


5-C. ユウセイ堂(モール型)

Kano分類 要素例 効き方(特にGuardrail)
当たり前 合致条件(型番/対応/サイズ)の明確化/非対応の明示/誤認防止表現/配送・梱包の約束 不一致返品・低評価(致命傷)を防ぐ。モールは事故が露出/信頼を長期で削る(第19回)
一元 タイトル/画像での候補入り(CTR)/冒頭チェックリストでの確信速度(CVR)/比較表の分かりやすさ CTR/CVRに直結しやすいが、誤認誘発しない設計が必須(Guardrail併置)
魅力 “届く安心”の見える化(検品/梱包のこだわり)/Q&Aの充実/レビューでの安心強化 安心差別化として効くが、当たり前(合致)不備があると逆効果になり得る

優先テーマ(仮):当たり前(誤認防止・合致条件)を最優先→一元(冒頭チェックリストで確信速度)


6. ミニ演習(5分):改善候補をKanoに仕分けし、次の実験を1本決める

担当チャネルを1つ選び、改善候補を各3つだけ書いて分類してください。

ミニ演習テンプレ

【担当チャネル】____(店舗/自社EC/モール)
【止まりどころ(ファネル段階)】____(例:Search→Action)

当たり前(Must-be)候補(3つ):
- 1) ____
- 2) ____
- 3) ____

一元(Performance)候補(3つ):
- 1) ____
- 2) ____
- 3) ____

魅力(Attractive)候補(3つ):
- 1) ____
- 2) ____
- 3) ____

次に試す改善(1本):
- 仮説(If→Then):____
- Primary / Secondary / Guardrail:____ / ____ / ____
- 期間と比較方法(A/B or 前後 or 準実験):____

コツ:迷ったら「欠けたら事故るか?」で当たり前を判定。事故(返品/低評価/キャンセル)が出るなら当たり前寄りです。


7. よくある失敗(Kanoを“誠実に”使うための注意点)

  • 魅力に逃げる:当たり前が崩れていると、魅力は効かない(損失回避が勝つ)
  • 当たり前を盛りすぎる:満足は増えにくい。伸ばすなら一元もセットで
  • 分類で議論が終わる:Kanoは手段。最後は優先順位と実験へ
  • 誤認誘発の希少性/煽り:短期CVRは上がってもGuardrailで負ける(第14回)
  • Guardrail不在:当たり前改善は特に、返品/低評価の悪化を必ず見張る

8. ChatGPTへの質問例(この回は合計5つ)

使い方:①〜③は担当チャネル1つでOK。④は横断、⑤は理解チェックです。

① 文房具カフェ(実店舗):予約直前の改善候補をKanoで分類し、次の実験を決める

あなたは社内マーケ講師です。
文房具カフェ(実店舗)のターゲットは、表参道/原宿エリアで休日に「ちょっとおしゃれで特別な体験をしたい」20代女性です。
「予定化→予約」が詰まっている前提で、
改善候補を12個出し、それぞれを Kano(当たり前/一元/魅力)に分類してください。
次に、インパクト×確度×工数(1-5)で上位3つを選び、理由を説明してください。
最後に、上位1施策を実験(If→Then、Primary/Secondary/Guardrail)に落としてください。

② 自社EC:Search→Actionの施策をKanoで整理し、Guardrail込みでA/B案を作る

あなたは社内マーケ講師です。
文房具カフェオンラインストア(自社EC)のターゲットは
買い逃し回避/正規ルートの安心+作品理解・作品愛(デザイン)重視です。
Search→Actionが詰まっている前提で、改善候補を10個出してKano分類してください。
「当たり前(条件/正規性/誤認防止)」を満たしつつ
「一元(要点の分かりやすさ)」でCVRを伸ばすA/Bテスト案を1本作り、
Primary/Secondary/Guardrailと副作用対策も添えてください。

③ ユウセイ堂(モール):誤認防止を当たり前品質として最優先にしつつ、CTR/CVRを伸ばす

あなたは社内マーケ講師です。
ユウセイ堂(モール型)で「合致確認→購入」が詰まっている前提です。
改善候補を12個出し、Kano分類(当たり前/一元/魅力)してください。
その上で「当たり前(誤認防止)」を崩さずに「一元(確信速度)」を上げる施策を2つ提案し、
Guardrail(不一致返品率・低評価率など)を必ずセットで挙げてください。

④ 3チャネル横断:Kano×優先順位付けの共通ルールを作る

店舗(文房具カフェ)/自社EC(文房具カフェオンラインストア)/モール(ユウセイ堂)で、
改善優先順位の共通ルールを作りたいです。
Kano(当たり前/一元/魅力)ごとに、
- 優先度の基本ルール
- Primary/Guardrailの置き方
- 典型的な失敗と回避策
をそれぞれ箇条書きでまとめてください。

⑤ 理解チェック:Kanoモデルクイズ

今日のテーマ「Kanoモデル」について理解チェック問題を5問作ってください。
形式:○×2問、選択式2問、短答1問。解答と解説付き。
例は、文房具カフェ/オンラインストア/ユウセイ堂から必ず入れてください。

9. 理解チェック(3問・5分)

  1. Kanoの「当たり前/一元/魅力」はそれぞれ、欠けた時・増やした時にどう効く?(一言ずつ)
  2. モールで「当たり前品質」を先に固めるべき理由を1つ(返品/低評価などGuardrailの観点で)
  3. Kanoで分類した後、なぜ第10回の「インパクト×確度×工数」で最終決定するのが良い?

10. 今日のまとめ(3行)

  • Kanoは満足を当たり前/一元/魅力に分け、改善の順番(事故を止める→伸ばす→差別化)を決める。
  • 当たり前はGuardrailを守るための最優先領域。一元はPrimaryに効きやすい。魅力は当たり前の上に乗せる。
  • 分類→優先順位(Impact×Confidence×Effort)→実験(Primary/Secondary/Guardrail)へ落として、週次運用(第15回)で回す。

次回予告(第30回)

次回は ABC分析(ver1.0) を扱います。
商品・企画・SKUを「利益を作っている順」に並べ、限られた工数をどこに集中すべきか(選択と集中)を明確にします。
第12回(貢献利益)と第20回(バリューチェーン)の“投資先決定”に直結します。

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