第3回カリキュラム(ver1.1)
STP:セグメントを分け、狙いを決め、勝ち方を言語化する
(文房具カフェ/オンラインストア/ユウセイ堂の例)
前回の3Cで「状況」が見えたら、次は“選ぶ(決める)”フェーズです。
今日のSTPで、誰に勝つか(ターゲット)/何で勝つか(立ち位置)を言葉にして固定します。
0. まず第2回(3C)の超短い復習(3分)
第2回では、3Cを「施策を考える前に状況を整理する棚」として学びました。
- Customer(顧客):属性ではなく、状況(何のために/どんな場面で)で捉える
- Competitor(競合):同業だけでなく、代替(別の手段/そもそも買わない)まで含める
- Company(自社):強み自慢ではなく、資産(強み)と制約(できないこと)を両方書く
そして3Cのゴールは「正解を出すこと」ではなく、次の意思決定に進むために、
“次に決めるべき問い”を明確にすることでした。
3C → STP のつながり(今日やること)
- 3Cで 状況が見えた
- でも、状況を見ただけでは「やること」は決まらない
- そこで今日のSTPで、
誰に勝つか(ターゲット)/何で勝つか(立ち位置)を“選びます”
すぐできる復習チェック(30秒)
- 文房具カフェで「代替」になり得るものを1つ言うと?
- ユウセイ堂のCompany(自社)で「制約」になり得るものを1つ言うと?
(答えは頭の中でOK。迷うなら第2回の要点に戻ってください)
1. この回の進め方(今日の学習の型)
- 本文を読む(15〜20分)
- ChatGPTに“御社の例で”STPを作らせ、読み比べる(10〜15分)
- 理解チェック3問で定着(5分)
ChatGPT利用のルール(社内向け)
- 社外秘・個人情報は入力しない(概算・匿名化・要約ならOK)
- 前提が不足しているときは「仮説」と明記して進めさせる(後述の質問例に含めています)
今日のゴール(この回でできるようになること)
- STPが何のための道具かを説明できる(=「誰に勝つか」を選ぶための意思決定フレーム)
- 文房具カフェ/文房具カフェオンラインストア/ユウセイ堂それぞれで、STPの「考え方」が違う理由がわかる
- 「ターゲット」と「ポジショニング」を、短い文章で言えるようになる(完璧でなくてOK、仮説でOK)
2. STPとは何か:3Cが「状況整理」なら、STPは「選ぶ(決める)」ための型
前回(第2回)の3Cは「顧客・競合・自社の状況を整理する棚」でした。
ただ、状況を整理しただけでは、施策は決まりません。
STPは、次の決断をするためのフレームです。
- S:Segmentation(セグメンテーション)
市場・顧客を“意味のある切り口”で分ける(ニーズや行動が違う塊を作る) - T:Targeting(ターゲティング)
分けた中から「狙う(優先する)層」を選ぶ - P:Positioning(ポジショニング)
その層の頭の中で「何者として選ばれるか」を言語化する
要するに
STPは
「誰に勝つか」「何で勝つか」を、ぼんやりではなく言葉にして固定するための型です。

2-1. 学ぶ意欲が上がる「成功事例」:STPで見ると、成功の理由が分解できる(ミニケース3つ)
ここでは「企業がSTPを使ったと宣言したか」よりも、STPの観点で“成功の構造”が説明できる例を示します。
STPはまさに、成功を“再現可能な形”に分解するための道具です。
ミニケース① LEGO
大人向けに明確にセグメントし、「大人のためのLEGO」というポジションを作った
- S(分ける):子ども向けだけでなく、「大人」をひとつの重要セグメントとして扱う
- T(狙う):大人向けに“複雑でプレミアムなセット”を用意する
- P(立ち位置):「大人が、集中して、ほどける時間を過ごす」方向の価値を前面に出す
(“大人向けに設計されたプレミアムセット”“unwind”などのメッセージ)
学び
セグメントを切ると、商品(難度・価格)も、メッセージも、売り場も変えやすい。
ミニケース② IKEA
「多くの人のために、手が届く価格で」—ターゲットを広く取りつつ、ポジションを一文で固定した
- T(狙う):「できるだけ多くの人が手に取れる」層を明確に志向
- P(立ち位置):IKEAのビジネスアイデアとして
「デザイン性・機能性のある家具を、できるだけ多くの人が買えるほど低価格で提供する」ことが明確に言語化されている
学び
ターゲットが広い場合でも、ポジション(何者か)が鋭いとブレにくい。
ミニケース③ 任天堂Wii
既存顧客だけでなく“非顧客”を見てターゲットを取り直し、市場を広げた
- T(狙う):既存のゲームファンだけでなく、潜在需要(非顧客)に目を向ける
- P(立ち位置):高性能競争の土俵で真っ向勝負する前提を置かず、別の価値軸で戦う
(非顧客から需要を掘り起こす重要性と、正面衝突のリスクを示す事例として整理されています。)
学び
ターゲットを取り直すと、競合の見え方も、勝ち筋も変わる。
3. STPの「やり方」:難しく考えず、3つの観点で進める
STPは学び始めで「難しそう」に見えますが、ポイントは次の3つです。
3-1. S(分ける):セグメントは「属性」より“ニーズ・行動・状況”で切る
セグメントの切り口は色々ありますが、実務で効きやすいのはだいたいこの4系統です。
- 属性系(年齢、地域など)
- 価値観・嗜好系(世界観が好き、こだわりが強い等)
- 行動系(検索する、比較する、リピートする、衝動買い等)
- ニーズ/状況系(何のために買うか、どんな場面か)
御社の場合、特に効きやすいのは
「状況(来店/購入の目的)」×「行動(検索・比較・共有・リピート)」です。
3-2. T(選ぶ):ターゲットは「魅力 × 自社適合 × 到達可能性」で選ぶ
ターゲットを選ぶときは、ざっくりこの3点で十分です。
- 魅力:その層は“欲しい”が強いか/市場として意味があるか
- 自社適合:御社の強み(企画・店舗体験・運用等)が刺さるか
- 到達可能性:その層に実際に届くか(店舗立地、SNS、モール検索など)
STPの肝
ターゲットは「全部」にはできません。
選ぶ=やらないことも決める、がSTPの肝です。
3-3. P(言語化):ポジショニングは“1文”に落とす
ポジショニングは、まずこの型で十分です。
ポジショニングの型
(誰に)〇〇な人に、
(何者として)私たちは△△で、
(何が違う)□□ができる。
(なぜ信じられる)なぜなら◇◇だから。
この「1文」があると、次の4Pやジャーニーで施策がブレにくくなります。
4. 御社の例:STPは3事業で“切り方”が変わる(仮説例)
ここは理解のために、あくまで仮説で例を出します。
(正解を決める回ではなく、「考え方を掴む」回です)
A) 文房具カフェ(実店舗)
S(分ける)例:状況で分ける
- 表参道で“体験”を探している
- 文房具そのものが好きで、試したい・触りたい
- コラボ目的で“世界観”を体験したい
- 落ち着いて過ごす場所を探している(仮説)
T(選ぶ)例:優先する層を決める
例:体験目的+共有(写真/投稿)しやすい層を優先、など
(店舗は「来店というハードル」があるため、“来る理由”が強い層を狙うとブレにくい)
P(1文)例:
「表参道で“文房具を軸にした体験”を探す人に、文房具カフェは“過ごすこと自体が価値”になる場所。企画や空間で、ここでしか得られない体験ができる。」(仮説)
B) 文房具カフェオンラインストア(自社EC:コラボグッズ)
S(分ける)例:行動・状況で分ける
- 推し作品の“買い逃し回避”が最優先(限定/受注/締切に敏感)
- 店舗に行けないが、世界観を手元で楽しみたい
- ギフトやまとめ買いで、失敗したくない(安心重視)
T(選ぶ)例:
例:買い逃し回避層を主ターゲットに置き、情報設計と安心設計を最優先する、など
(自社ECは「説明の質」と「購入の安心」が勝負になりやすい)
P(1文)例:
「推し作品のコラボを確実に手に入れたいファンに、文房具カフェオンラインストアは“企画の熱量と安心を両立した公式感ある購入体験”を提供する。」(仮説)
C) ユウセイ堂(モール型)
S(分ける)例:購買行動で分ける
- モール内検索で“目的買い”し、早く確実に買いたい
- 比較して最適を選びたい(レビュー・条件重視)
- 価格・ポイントで最終判断する(価格弾力性が高い)
T(選ぶ)例:
例:目的買い+安心重視層を取りにいき、「見つけやすい+不安が消えるページ」を優先する、など
(モールでは「見つかる」×「買われる」を分けて考えるのが重要)
P(1文)例:
「モールで迷わず安心して買いたい人に、ユウセイ堂は“条件が明確で選びやすい品揃え”を提供するストア。」(仮説)
5. よくある失敗(STPあるある)
- セグメントを分けすぎて、どれも薄くなる(→まずは3〜5個で十分)
- ターゲットが広すぎて、結局“誰にも刺さらない”(→「一番強い状況」を主語にする)
- ポジショニングが“いいこと全部入り”になる(→差別化1つ+根拠1つに絞る)
- 3Cの事実とズレたターゲットを置く(→第2回の3Cに立ち返る)
6. ChatGPTへの質問例(この回は合計5つ)
使い方:まずは ①〜③(自分の担当に近いもの1つ)だけでOK。余裕があれば④⑤。
※枠内をドラッグ選択してコピーしてください(折り返し設定済み)。
① 文房具カフェ:STPを“仮説”で作ってもらう
あなたは社内マーケ講師です。 表参道の「文房具カフェ」について、STPを仮説で作ってください。 条件: - Segmentation:状況(来店動機)ベースで4セグメント - Targeting:最優先ターゲットを1つ選び、理由を「魅力×自社適合×到達可能性」で説明 - Positioning:40〜60字の一文で - 最後に、仮説の精度を上げるための確認事項を5つ
② オンラインストア:コラボ特性込みでSTPを作ってもらう
あなたは社内マーケ講師です。 「文房具カフェオンラインストア(コラボグッズ)」のSTPを作ってください。 条件: - Segmentation:行動(買い逃し回避/比較/ギフト等)で4セグメント - Targeting:最優先ターゲット1つ+次点ターゲット1つ - Positioning:各ターゲット向けに一文ずつ(最大60字) - ありがちな失敗(炎上・不信・買い疲れ)リスクも3つ挙げてください
③ ユウセイ堂:モール前提でSTPを作ってもらう
あなたは社内マーケ講師です。 「ユウセイ堂(モール型)」のSTPを作ってください。 条件: - Segmentation:「検索→比較→購入」の行動で4セグメント - Targeting:優先ターゲットを1つ、次点を1つ - Positioning:一文(最大60字) - 最後に「見つからない課題(露出)」と「買われない課題(CVR)」に分けて、改善の方向性を各2つ
④ 3つを横断:役割分担(ターゲットの食い合いを避ける)
文房具カフェ(店舗)/オンラインストア(自社EC)/ユウセイ堂(モール)のSTPを整合させたいです。 3つがターゲットを食い合わず、むしろ循環が起きるように、 「各チャネルが主に担うべきターゲット」と「一文ポジショニング」を提案してください。 最後に、食い合いが起きる典型パターンも3つ挙げてください。
⑤ 理解チェック:STPクイズを作ってもらう
今日のテーマ「STP(Segmentation/Targeting/Positioning)」の理解チェック問題を5問作ってください。 形式:○×2問、選択式2問、短答1問。解答と解説付き。 例は、文房具カフェ/オンラインストア/ユウセイ堂から必ず入れてください。
7. 理解チェック(3問・5分)
- STPのS/T/Pはそれぞれ何を決める?(一言で)
- ターゲットを「全部」にすると起きがちな問題は?
- ポジショニングを1文にするメリットは?
8. 今日のまとめ(3行)
- STPは、3Cで整理した状況から 「狙う相手」と「勝ち方」を選ぶためのフレーム。
- セグメントは「状況・行動・ニーズ」で切ると実務で使いやすい。
- 御社は店舗/自社EC/モールの3つがあるため、STPは“事業ごとに”作り、横断で整合させると強い。
次回予告(第4回)
次回は ポジショニング/価値提案(Value Proposition)をもう一段深めます。
第3回で作った「一文ポジショニング」を、顧客に刺さる言葉と信じられる根拠(RTB)に落としていきます。