第10回カリキュラム(ver1.0)
改善優先順位付け:ファネルで特定した“落ちている段階”に対して、次にやることを「インパクト×確度×工数」で決める
(文房具カフェ/文房具カフェオンラインストア/ユウセイ堂の例)
第10回は「やるべきことが多い」状態から抜け出し、
次の1〜2手を納得感ある理由付きで決める回です。
0. まず第9回(ファネル分解)の要点を簡単に復習(3分)
第9回では、KPIを段階(ファネル)に配置して「どこで落ちているか」を切り分けました。
代表的な落ち方は3つです。
- 上流不足(そもそも見られていない)
- 中流不足(比較・理解で止まる)
- 下流不足(不安・条件・導線で止まる)
ここまでで「どこが原因か」の当たりはつきましたが、実務では次が難しくなります。
- 施策案が複数出てきて、何からやるか決まらない
- 人によって「重要」の解釈が違い、議論が発散する
- すぐに打てる小改善より、大きな企画に意識が向き、着手が遅れる
そこで第10回でやること
改善を前に進めるために、施策候補を整理し、優先順位を合意できる形にする回です。
1. 今日のゴール(この回でできるようになること)
- 改善の優先順位付けが何のための作業か説明できる(=速く学び、確実に前進する)
- 施策候補を インパクト×確度×工数 で並べ替えられる
- 御社3チャネル(店舗/自社EC/モール)で、
次の1〜2手を “納得感ある理由付き” で選べる(仮説でOK)
この回のキーメッセージ
- 優先順位付け=「思いついた順」ではなく共通の物差し
- 段階(詰まり)を1つに固定すると議論が速い
- 施策は仮説(If→Then)にして比べる
- まずは粗いスコア(1〜5)で十分
今日のアウトプット(軽量版)
- 詰まり段階を1つ固定(例:Search→Action)
- 施策候補を8〜12個(漏れなく)
- 各施策を Impact / Confidence / Effort(1〜5)で採点
- 上位1〜2手+見るKPI を決定
2. 改善優先順位付けとは何か:施策を「合意できる物差し」で並べ替える
優先順位付けは、ひと言で言うと次の作業です。
定義(この回の結論)
施策を“勝てそうな順”に並べ、次にやることを決めるための共通言語を作る
ポイントは、単なる「思いついた順」ではなく、
同じ物差しで比較できる状態にすることです。
このカリキュラムでは、現場で使いやすいように以下の3軸で揃えます。
- インパクト(Impact):KGI/KPIに効きそうな大きさ
- 確度(Confidence):効く見込みの高さ(根拠の強さ)
- 工数(Effort):実行の重さ(時間・人・調整・開発)
3. どの順序で考えるか:ファネル→施策→優先順位(実務手順)
おすすめは次の 6ステップです。
Step 0:対象の“詰まり”を固定する(第9回の結果)
例:店舗=予定化→予約、自社EC=Search→Action、モール=合致確認→購入。
段階を1つに絞ると議論が速いです。
Step 1:詰まりに対応するKSFを確認する(第8回)
「何が満たされれば前に進むか」を状態で確認します。
(例:合致不安がない、買い逃し条件が明確、予約が簡単、など)
Step 2:施策候補を“型”で出す(漏れを防ぐ)
施策は、4P/4C・USP/RTBの観点で漏れなく出せます。
- RTBを足す(不安を潰す):情報項目、FAQ、比較表、注意点の明確化
- 導線を整える(迷いを減らす):入口→次の行動までの手数削減
- 見せ方を変える(理解を速くする):要点サマリ、見出し、ファーストビュー
- 条件を整える(誤解を減らす):送料、締切、返品、予約条件の明確化
- 露出を整える(そもそも届かせる):タイトル、検索対策、SNSの入口
Step 3:施策を「仮説」にする(重要)
施策はアイデアではなく、仮説にすると比較できます。
仮説の型(If→Then)
もし(施策)をすると、(どのKPI)が(どれくらい)改善し、結果として(KGI)に効くはず
Step 4:インパクト×確度×工数でスコアする(粗くでOK)
まずは相対評価で十分です(例:1〜5)。
- インパクト:KGI/KPIに効きそうか
- 確度:根拠があるか(CJM/問い合わせ/レビュー/定性)
- 工数:実行の重さ(関係者調整・制作・開発)
Step 5:上位から「次の1〜2手」を決める
大きい企画を選ぶより、学びが得られる手を優先します。
(早く回す=改善の速度が上がる)
Step 6:実行と検証の最小形を決める(次回につなぐ)
下記までセットにします(第11回の実験設計に接続)。
- いつまでに
- 何を変え
- どのKPIを見て
- 良し悪しをどう判断するか
4. 学ぶ意欲が上がる「典型パターン」:優先順位が上がりやすい施策の特徴(ミニケース3つ)
※企業名ではなく「起きやすい成功パターン」を示します。
ミニケース① “不安を潰す情報追加”は、確度が高いことが多い
- 問い合わせやレビューで不安が明確なら、RTB追加は効きやすい
- 工数が低〜中で済むケースも多い
学び:中流〜下流の詰まりには「RTB」から着手すると進みやすい。
ミニケース② “入口の見出し/要点サマリ改善”は、工数が低い
- 表現・構成を変えるだけで、理解が速くなり次へ進みやすい
学び:最初の一行(USP)と要点提示は、優先度が上がりやすい。
ミニケース③ “計測できない施策”は、学びが残らず優先度が下がる
- 効果が分からないと、次の改善が迷子になる
学び:第8〜9回で置いたKPIで追えない施策は、最初は避ける判断も合理的。

5. 御社の前提(ターゲット・約束)をもう一度確認
第10回も前提は固定します(第4〜9回と同じ)。
① 文房具カフェ(実店舗)
- ターゲット:表参道/原宿エリアで、休日に「ちょっとおしゃれで特別な体験をしたい」と思っている20代女性
- USP(例):休日の“おしゃれで特別”を叶える文房具体験
- RTB(例):体験導線/空間品質/企画性
② 文房具カフェオンラインストア(自社EC)
- ターゲット:買い逃し回避/正規ルートの安心 + 作品理解・作品愛(デザイン)重視
- USP(例):作品理解と作品愛が“デザインに出ている”、安心して買えるコラボ
- RTB(例):企画背景説明/デザインの見せ方/販売条件や発送目安の明確さ
③ ユウセイ堂(モール型)
- ターゲット:検索・比較で早く確実に買いたい + 合致・期待通りに届く不安なく満足したい
- USP(例):合致確認ができ、期待通りに届く“安心な買い物”
- RTB(例):型番・仕様の明確さ/誤認防止の表現/運用品質(検品・梱包・対応)
6. 御社の例:詰まり別に「施策候補→仮説→優先順位」を作る(仮説例)
ここは理解を助けるための 仮説例です。
実務では、第9回のファネルで落ちている段階を「1つ」に固定してから行います。
6-A. 文房具カフェ(実店舗)
想定される詰まり(例)
予定化→予約で止まる(「行きたい」まではあるが、予定に入れて予約しない)
施策候補(例)と仮説
- 料金・所要時間・混雑目安を1ページに集約(RTB強化)
仮説:検討段階の不安が減り、予約ページ到達率/予約完了率が上がる - 予約導線の短縮(トップ/Instagramから1クリックで予約へ)
仮説:予定化→予約の手数が減り、予約完了率が上がる - “休日の過ごし方”提案(利用シーンの明確化)
仮説:Desireが強まり、予約到達率が上がる
優先順位付けの例(相対評価:1〜5)
| 施策 | インパクト | 確度 | 工数 | 優先度の考え方 |
|---|---|---|---|---|
| 料金/所要時間/混雑の集約 | 4 | 4 | 2 | 不安が原因なら効きやすく、工数も軽い |
| 予約導線の短縮 | 4 | 3 | 2 | 詰まりが「手間」なら効く可能性が高い |
| 利用シーン提案 | 3 | 3 | 3 | 効くが、制作・表現調整が少し重い |
次の1〜2手の例
「不安を潰す情報集約」→「予約導線短縮」になりやすい(=速く学べて前進しやすい)。
6-B. 文房具カフェオンラインストア(自社EC)
想定される詰まり(例)
Search→Actionで止まる(詳細を見て比較するが、購入に進まない)
施策候補(例)と仮説
- 販売条件(締切/受注/発送)をファーストビュー近くに要点表示(RTB前倒し)
仮説:買い逃し不安が減り、カート投入率が上がる - FAQの“よくある不安”を上部に(正規性/条件/発送)
仮説:安心が増し、FAQ閲覧後の購入率が上がる - デザインの見せ方強化(拡大、ディテール、使用イメージ)
仮説:納得が増し、滞在・画像閲覧→カート投入率が上がる
優先順位付けの例
| 施策 | インパクト | 確度 | 工数 | 優先度の考え方 |
|---|---|---|---|---|
| 条件要点の前倒し表示 | 5 | 4 | 2 | 買い逃し不安に直撃、実装も軽い |
| FAQの上部整理 | 4 | 4 | 2 | 不安の受け皿、確度高い |
| デザイン見せ方強化 | 4 | 3 | 3 | 効くが制作工数が増えやすい |
次の1〜2手の例
「条件要点の前倒し」→「FAQ整理」が優先になりやすい(=Search不安を先に潰す)。
6-C. ユウセイ堂(モール型)
想定される詰まり(例)
合致確認→購入で止まる(仕様は見るが、確信が持てず買わない)
施策候補(例)と仮説
- 「合致確認」チェックリスト(型番/対応/サイズ)を冒頭に(RTBの要点化)
仮説:合致不安が減り、購入完了率が上がる - 比較表(何が違うか)+注意点(誤認防止)を標準化
仮説:買い間違いが減り、返品(不一致)率が下がる - 届く安心の明示(検品/梱包/配送条件/対応)を見える位置に
仮説:購入直前の不安が減り、購入完了率が上がる/低評価が下がる
優先順位付けの例
| 施策 | インパクト | 確度 | 工数 | 優先度の考え方 |
|---|---|---|---|---|
| 合致確認チェックリスト | 5 | 4 | 2 | ターゲット不安に直撃、低工数 |
| 比較表+注意点の標準化 | 4 | 4 | 3 | 効くが作業量が増えやすい |
| 届く安心の明示 | 4 | 3 | 2 | 下流不安に効く、工数は軽め |
次の1〜2手の例
「合致確認チェックリスト」→「届く安心の明示」が先に来やすい(=合致と不安の両方を速く潰す)。
7. よくある失敗(優先順位付けで起きがちなこと)
- インパクトだけで選ぶ:確度が低い大企画に偏り、学びが遅くなる
- 工数が見積もれていない:実行できずに棚上げになる
- KPIで測れない施策を選ぶ:良し悪しが分からず次に繋がらない
- 詰まりが曖昧なまま施策を選ぶ:第9回に戻って段階を固定する
8. ChatGPTへの質問例(この回は合計5つ)
使い方:まずは ①〜③(担当に近いもの1つ)だけでOK。余裕があれば④⑤。
※枠内は折り返し済みです(コピーボタンは使いません)。
① 文房具カフェ:予定化→予約の詰まりに対して施策をスコアリングする
あなたは社内マーケ講師です。 前提ターゲット:表参道/原宿エリアで休日に「ちょっとおしゃれで特別な体験をしたい」20代女性。 前提:ファネルで「予定化→予約」が詰まっていると仮定します。 この詰まりに対する施策候補を10個出し、 各施策に「インパクト(1-5)」「確度(1-5)」「工数(1-5)」を付けて、 上位3つを理由付きで提案してください。 最後に、上位施策のKPI(第9回の段階に対応)も各1つ添えてください。
② オンラインストア:Search→Action詰まりをRTB中心に優先順位付けする
あなたは社内マーケ講師です。 前提ターゲット:買い逃し回避/正規ルートの安心+作品理解・作品愛(デザイン)重視。 前提:AISASのSearch→Actionが詰まっていると仮定します。 RTB(条件・発送・正規性・FAQ)を中心に施策候補を8個出し、 インパクト×確度×工数でランキングし、上位3つを提案してください。 各施策について「どの不安を潰すか」と「見るべきKPI」を明記してください。
③ ユウセイ堂:合致不安と届く不安を分けて優先順位付けする
あなたは社内マーケ講師です。 前提ターゲット:モールで検索・比較して早く確実に買いたい/合致不安・届く不安をなくしたい。 前提:合致確認→購入が詰まっていると仮定します。 施策候補を「合致不安を潰す」「届く不安を潰す」に分けて各5個出し、 インパクト×確度×工数で上位3施策を選び、理由も説明してください。 最後に、誤認防止の観点で注意すべき表現も3つ挙げてください。
④ 3チャネル横断:同じ物差しで優先順位を統一する
文房具カフェ(店舗)/オンラインストア(自社EC)/ユウセイ堂(モール)で、 各チャネルの「最重要な詰まり段階」を1つずつ仮定し、 施策候補を各5個ずつ挙げて、インパクト×確度×工数で比較できる表にしてください。 最後に、全社として今週着手すべき“共通施策”があるなら1つ提案してください。
⑤ 理解チェック:優先順位付けのクイズ
今日のテーマ「改善優先順位付け(インパクト×確度×工数)」について理解チェック問題を5問作ってください。 形式:○×2問、選択式2問、短答1問。解答と解説付き。 例は、文房具カフェ/オンラインストア/ユウセイ堂から必ず入れてください。
9. 理解チェック(3問・5分)
- 優先順位付けで「確度」を入れる理由は?
- 施策を“仮説”の形(If→Then)にするメリットは?
- 工数が低い施策を先にやることの実務上の利点は?
10. 今日のまとめ(3行)
- 第9回で特定した「落ちている段階」を固定し、KSF(満たすべき状態)に対応する施策を出す。
- 施策は インパクト×確度×工数 で比較し、次の1〜2手を合意できる形で決める。
- 御社は、店舗=予定化→予約、自社EC=Search→Action、モール=合致確認→購入、が優先順位付けの起点になりやすい。
次回予告(第11回)
次回は 検証と実験(A/Bテスト含む) に進みます。
第10回で選んだ上位施策を、失敗しにくい形でテストし、
「勝ち筋」を再現可能な形にしていく手順を整理します。