第18回カリキュラム(ver1.0)
PEST分析:外部環境の変化を「機会/脅威」に変換し、SWOTのO/Tを強化する
(文房具カフェ/文房具カフェオンラインストア/ユウセイ堂)
この回は「最新ニュースの暗記」ではなく、外部変化を整理して“戦い方の前提”を揃える回です。
数値は不要。まずは仮説でOKです。
0. まず第17回(SWOT分析)の要点を簡単に復習(3分)
第17回では、SWOTを「棚卸し」で終わらせず、クロスSWOT(SO/ST/WO/WT)に変換して、
次の打ち手の方向を決めました。
- S/W=内部要因(自社の強み・弱み)
- O/T=外部要因(環境の機会・脅威)
- 価値があるのは「外部×内部を掛け合わせた方向」
ただし、SWOTを作るときに最もブレやすいのが O/T(外部要因)です。
そこで第18回は、外部環境を体系的に整理する PEST分析で、SWOTのO/Tを強化します。
1. 今日のゴール(この回でできるようになること)
- PEST(P/E/S/T)が何を指すかを説明できる
- 外部変化を「機会/脅威」として整理し、SWOTのO/Tに落とし込める
- 御社3チャネル(店舗/自社EC/モール)で、外部変化の影響が出やすいポイント(不安・条件・運用)に当たりを付けられる
この回のキーメッセージ
- PESTの目的は「時事ネタ集」ではなく戦略の前提を揃えること
- 各カテゴリは3つ以内に絞る(運用できる量)
- 必ず機会/脅威に言い換え、SWOTのO/Tを更新する
- 最後に監視KPI(早期警戒)を置く
この回の成果物(軽量)
- PEST(各カテゴリ1〜3個)
- 各項目の「機会/脅威」判定
- SWOTのO/Tの更新(貼り替え)
- 監視KPI(3〜5個)
2. PEST分析とは何か:外部環境を“同じ型”で整理する
PESTは、外部環境を次の4つに分けて整理するフレームです。
- P:Political / Legal(政治・法規制・ルール)
法令、ガイドライン、プラットフォーム規約、表示・広告・個人情報、取引条件の透明性など - E:Economic(経済)
物価、原価・物流費、為替、可処分所得、景気、観光需要など - S:Social(社会・文化)
価値観、ライフスタイル、コミュニティ(ファンダム)、体験志向、ギフト需要など - T:Technological(技術)
SNSアルゴリズム、短尺動画、検索・レコメンド、決済、物流追跡、AI活用など
目的:変化を集めることではなく、
「機会(O)/脅威(T)として扱える形」に変換して、戦略の前提を揃えること。

3. どの順序で作るか:PEST → 機会/脅威化 → SWOTへ接続
おすすめは次の 5ステップです(軽量版)。
Step 1:分析の“範囲”を決める(最初にここを固定)
- 期間:今後6〜12か月(現場運用に効く)
- 対象:3チャネル(店舗/自社EC/モール)
- 目的:SWOTのO/T精度を上げ、重点テーマ選定に使う
Step 2:PESTを各3個以内に絞る
増やすほど運用で使えません。
「影響が大きい」「起きそう」「自社に関係する」を優先します。
Step 3:それぞれを“機会/脅威”に言い換える
同じ変化でも、チャネルによって機会にも脅威にもなります。例:物流費の上昇
- 自社EC:貢献利益を押し下げる(脅威)
- 逆に、運用品質で安心を作れれば差別化にもなる(機会)
Step 4:SWOTのO/Tに貼り替える
第17回で作ったSWOTのO/Tが、PESTで更新されます(差し替え)。
Step 5:運用(第15回)へ接続する「監視項目」を置く
- 何が起きたら見直すか(例:返品率、低評価、配送遅延、SNS流入低下、予約完了率低下)
- どのKPIを“早期警戒”として見るか(第9回・第12回に接続)
ポイント
PESTは「起きたこと」を語るより、起きた時にどう判定し、どの数字で気づくかまでがセットです。
4. PESTでよくある失敗(ここを避けると使える)
- 抽象度が高すぎる:「社会が変化」ではなく「何がどう変わり、何に効くか」まで言う
- 多すぎる:各カテゴリ3つ以内(最大でも12個)に絞る
- 単なる時事ネタ集:必ず「機会/脅威」に言い換える
- 自社の行動に落ちない:「だから何を見る/何を整える」までセットにする
5. 御社の例:3チャネルでのPEST(仮説例)
※ここは“考え方の例”です。正確な情勢の断定ではなく、PESTの型を掴む目的で読んでください。
5-A. 文房具カフェ(実店舗)
P(政治・ルール)
- イベント運営や告知に関わるルール・表示の明確性が求められる傾向
→ 脅威:説明不足だとクレーム・不満
→ 機会:透明性が高い運営は安心につながる
E(経済)
- 物価・人件費の上昇で、運営コストが上がりやすい
→ 脅威:粗利を圧迫
→ 機会:体験価値で“納得”を作れれば価格調整の余地
S(社会)
- 「モノ」だけでなく「体験」への支出が続きやすい/SNSで共有しやすい
→ 機会:来店理由を作りやすい(想起にも効く)
T(技術)
- 予約・混雑情報の見える化(デジタル導線)が当たり前になりつつある
→ 機会:摩擦を減らして予定化を後押し
→ 脅威:整っていないと比較で不利
SWOT接続の例
O(体験需要・共有文化)を取りに行くには、W(予約前不安)を先に潰す、など(WO方向が明確になる)。
5-B. 文房具カフェオンラインストア(自社EC)
P(政治・ルール)
- 表示(価格・送料・納期・返品条件など)の明確性がより重要
→ 脅威:条件が分かりにくいと離脱・問い合わせ増
→ 機会:条件が明確なストアは安心で選ばれやすい
E(経済)
- 原価・物流費の変動が貢献利益に直結
→ 脅威:送料負担・決済手数料等で利益が削られる
→ 機会:貢献利益(第12回)を基準に設計すれば、利益を守りやすい
S(社会)
- ファンダムは「作品理解・作品愛が感じられる」公式の発信を重視
→ 機会:御社の企画背景・デザイン意図の強みが効きやすい
T(技術)
- SNSのフォーマット(短尺など)や検索行動が変化しやすい
→ 脅威:流入源の変化でセッションが上下
→ 機会:SNS→要点サマリ→購入の導線を整えると安定
SWOT接続の例
T(流入変動・条件複雑)に対して、S(正規性・作品理解の表現)を「上部で短く」出す(ST)など。
5-C. ユウセイ堂(モール型)
P(政治・ルール)
- モール側の規約・表示ルール・レビュー運用などの影響を受けやすい
→ 脅威:ルール変更で露出や表現が変わる
→ 機会:ルール順守と説明品質が信頼につながる
E(経済)
- 比較・価格圧力が強い中で、手数料・出荷コストが利益に効く
→ 脅威:値下げで貢献利益が消える
→ 機会:値下げ以外(合致確認・届く安心)で差別化すると守りやすい
S(社会)
- 「早く確実に買いたい」需要は強い/失敗したくない心理が出やすい
→ 機会:合致不安を短時間で潰せると選ばれやすい
T(技術)
- 検索・レコメンドの変化により、CTR・CVRが影響を受ける
→ 脅威:露出・クリックが落ちる
→ 機会:タイトル・画像・冒頭チェックリストでCTR/CVRを支えられる
SWOT接続の例
T(比較圧力)に対し、S(運用品質)を“届く安心”として可視化(ST)など。
6. ミニ演習(5分):PEST → 機会/脅威 → 次に見る指標 を1本だけ作る
次のどれか1チャネルを選び、各カテゴリ1つずつ(合計4つ)だけ書いてみてください。
- 文房具カフェ(店舗)
- 自社EC
- ユウセイ堂(モール)
書き方(テンプレ)
ミニ演習テンプレ
P:____(→機会/脅威:__) E:____(→機会/脅威:__) S:____(→機会/脅威:__) T:____(→機会/脅威:__) 最後に: この変化を早期に察知するKPI(1つ):____
例:モール T「検索仕様の変化」→脅威 → 監視KPI:検索結果CTR
7. ChatGPTへの質問例(この回は合計5つ)
使い方:①〜③は“各チャネル1本”で必要十分です。④⑤は横断整理と理解チェックです。
① 文房具カフェ(実店舗):PEST→機会/脅威→監視KPIを作る
あなたは社内マーケ講師です。 文房具カフェ(実店舗)のターゲットは、表参道/原宿エリアで休日に「ちょっとおしゃれで特別な体験をしたい」20代女性です。 今後6〜12か月を対象に、PESTを各2つずつ提案し、 それぞれを「機会」か「脅威」に分類してください。 最後に、脅威を早期に検知するための監視KPIを3つ(予約完了率など)提案してください。
② 自社EC:PESTを“条件不安/正規性不安/流入変動”に接続する
あなたは社内マーケ講師です。 文房具カフェオンラインストア(自社EC)のターゲットは 「買い逃したくない」「正規ルートで安心して買いたい」+作品理解・作品愛(デザイン)重視です。 今後6〜12か月のPESTを各2つずつ出し、 各項目が「条件不安」「正規性不安」「流入変動」「利益(貢献利益)」のどれに効くかをタグ付けしてください。 最後に、SWOTのO/Tにどう反映するか(書き換え例)も示してください。
③ ユウセイ堂(モール):PEST→“合致不安/届く不安/比較圧力”への影響を整理
あなたは社内マーケ講師です。 ユウセイ堂(モール型)のターゲットは 「検索・比較して早く確実に買いたい」+「合致しているか」「期待通り届くか」の不安なく満足して買いたい、です。 今後6〜12か月のPESTを各2つずつ挙げ、 各項目がCTR/CVR/返品(不一致)/低評価レビュー率/貢献利益のどれに影響しやすいかを整理してください。 最後に、最重要の脅威を1つ選び、対策の方向性(ST/WT)も提案してください。
④ 3チャネル横断:PESTから“共通の重点テーマ”を1つ作る
店舗(文房具カフェ)/自社EC(文房具カフェオンラインストア)/モール(ユウセイ堂)のPESTを前提に、 3チャネル共通で取り組むべき重点テーマを1つ提案してください。 (例:安心の標準化、条件の明確化、情報設計のテンプレ化 など) そのテーマがKGI(粗利/貢献利益)にどうつながるかも一言で説明してください。
⑤ 理解チェック:PESTクイズ
今日のテーマ「PEST分析」について理解チェック問題を5問作ってください。 形式:○×2問、選択式2問、短答1問。解答と解説付き。 例は、文房具カフェ/オンラインストア/ユウセイ堂から必ず入れてください。
8. 理解チェック(3問・5分)
- PESTの4要素をそれぞれ一言で説明すると?
- PESTの項目を「機会/脅威」に変換するのはなぜ?(SWOTとの接続を意識して)
- 監視KPI(早期警戒指標)を置くメリットを1つ挙げると?
9. 今日のまとめ(3行)
- PESTは外部環境を P/E/S/T で整理し、SWOTのO/Tを強化するためのモデル。
- 各カテゴリは増やしすぎず(各3個以内)、必ず 機会/脅威に言い換え、SWOTへ貼り替える。
- 最後に「監視KPI」を置くことで、外部変化を週次運用(第15回の型)に接続できる。
次回予告(第19回)
次回は 5フォース分析(ver1.0) を扱います。
PESTが「広い外部環境」だとすると、5フォースは「競争構造(なぜ価格比較が強いのか等)」を分解するモデルです。
SWOTのT(脅威)の精度をさらに上げます。