第21回カリキュラム(ver1.0)
VRIO分析:強みを「持続的な優位」かどうかで評価し、投資すべき資産に集中する
(文房具カフェ/文房具カフェオンラインストア/ユウセイ堂)
この回は「強みを並べる」回ではありません。
第20回で見えた価値の核(工程)が、持続的に勝てる強みなのかを判定し、
どこに投資し、何を標準化し、何をやめるかまで方向づける回です。
数値は不要、まずは仮説でOKです。
0. まず第20回(バリューチェーン分析)の要点を簡単に復習(3分)
第20回では、社内活動を工程に分解して、
価値が生まれる工程と利益が削られる工程(ボトルネック)を特定しました。
- 工程は増やしすぎない(10個以内)
- 見る軸は2つ:価値(差別化)/利益(粗利・貢献利益)
- 最後に第15回の運用(KGI→ファネル→CJM→実験)へ接続して「回す」
ただし、バリューチェーンで「価値の核」が見えても、現場では次が迷いやすいです。
- その強みは他社も真似できるのでは?(=すぐ陳腐化する?)
- 強み候補が多く、どれに投資すべきか決めきれない
- 強みがあっても、組織として使いこなせていない(再現性がない)
そこで第21回は、強みを「持続性」の観点で評価する VRIO分析に進みます。
1. 今日のゴール(この回でできるようになること)
- VRIO(V/R/I/O)が何を指すか説明できる
- 御社3チャネル(店舗/自社EC/モール)で、強み候補をVRIOで評価し「投資対象」を特定できる
- 評価結果を、SWOT・バリューチェーン・週次運用(第15回)へ接続できる
この回のキーメッセージ
- 強みは「ある」だけでは不十分。持続的に勝てるかを判定する
- VRIOは投資判断のフィルター(全部やらない)
- 特に重要なのはI(模倣困難性)とO(組織)
この回の成果物(軽量)
- チャネル別:強み候補3つ(資産・能力)
- VRIO評価(高/中/低)+理由(各1行)
- 結論:投資する強みを1つ/標準化する強みを1つ/やめる or 外注を1つ
- 運用接続:KGI・ファネル段階・実験テーマ(1本)
2. VRIO分析とは何か:強みを「持続性」で評価し、投資の優先順位を決める
VRIO(ブリオ)は、企業の資源・能力(Resources / Capabilities)を、
次の4つの観点で評価するモデルです。
- V(Value:価値):顧客価値に効くか/機会を取れるか/脅威を受けられるか
- R(Rarity:希少性):競合も同じように持っていないか(当たり前ではないか)
- I(Imitability:模倣困難性):真似しにくいか(時間・コスト・ノウハウ・関係性・履歴が必要か)
- O(Organization:組織):組織として活かせるか(運用・仕組み・人・ルールで再現できるか)
VRIOの本質は「強みを褒める」ことではなく、
(1)投資すべき強み と (2)標準化すべき能力 と (3)やめる/外注する領域 を切ることです。
2-1. ここでいう「強み」は何を指す?(粒度の注意)
VRIOで扱う強みは、抽象語(例:ブランド力)より、行動に落ちる資産・能力にします。
- 例(店舗):体験導線の設計、現場オペの安定、混雑時の捌き、写真映えの演出
- 例(自社EC):要点サマリの情報設計テンプレ、企画背景コンテンツ資産、正規性の根拠提示
- 例(モール):合致確認テンプレ、誤認防止の表現ルール、検品・梱包の品質運用、レビュー蓄積
2-2. VRIOが効く理由(第17〜20回との接続)
- SWOT:S(強み)の「質(持続性)」を上げ、戦略の精度を上げる
- 5フォース:強い競争圧力に対して、真似されにくい差を作る
- バリューチェーン:価値の核となる工程に対して、投資する根拠を作る

3. どの順序でやるか:強み候補 → VRIO評価 → 投資判断
おすすめは次の 6ステップです(軽量版)。
Step 1:対象を決める(チャネル別に分ける)
- 店舗(文房具カフェ)
- 自社EC(文房具カフェオンラインストア)
- モール(ユウセイ堂)
Step 2:強み候補(資産・能力)を3つだけ挙げる
ここで増やすと決められません。まずは「価値の核」から3つに絞ります(第20回の工程がヒント)。
Step 3:VRIOを「高/中/低」で仮置きする
定量不要。理由が1行で言えるレベルで十分です。
Step 4:結論を3分類にする(投資/標準化/撤退)
- 投資(伸ばす):VRIOが揃い、持続的に勝てる可能性が高い
- 標準化(守る):価値はあるが希少性/模倣困難性が弱い → 運用で負けないようにする
- 撤退/外注(やらない):価値が薄い、または組織が活かせない
Step 5:第15回の運用へ接続(KGI→ファネル→CJM→実験)
- 投資する強みは、どのKGI(粗利/貢献利益)に効くか
- どのファネル段階の改善か(上流/中流/下流)
- CJMのどの接点で「不安/迷い/摩擦」を減らすか
- 実験(Primary/Secondary/Guardrail)に落とす
Step 6:学びログへ(横展開)
例:モールで「誤認防止テンプレ」が効いた → 自社ECの「条件誤解」対策にも転用、など。

4. 判定の読み方:VRIOの組み合わせで「競争上の意味」が変わる
VRIOは、4つのチェックの“通り方”で結論が変わります(典型パターンだけ覚えればOK)。
| 判定(VRIO) | 競争上の意味 | 推奨アクション |
|---|---|---|
| Vが低い | 価値に効かない(強みにならない) | やめる/外注/縮小 |
| Vは高いがRが低い | みんな持っている(競争均衡) | 標準化で負けない(コスト最適・品質安定) |
| V/Rは高いがIが低い | 一時的に勝てるが真似されやすい | 模倣困難性を上げる(テンプレ資産化・運用ノウハウ化・関係性構築) |
| V/R/Iは高いがOが低い | 宝の持ち腐れ(活かせていない) | 組織化(担当・手順・KPI・チェック・教育) |
| V/R/I/Oが高い | 持続的競争優位になり得る | 投資・強化(最優先で伸ばす) |
重要ポイント
現場で多いのは「Vは高いがOが低い(活かせていない)」です。
VRIOは“強み発見”というより、組織化(O)して再現性を作るために使うと効果が出ます。
5. 御社の例:3チャネル別VRIO(仮説例)
ここは理解のための仮説です。実務では「候補3つ → VRIO仮置き → 投資対象1つ」までできれば十分です。
5-A. 文房具カフェ(実店舗)
強み候補①:体験導線の設計(“おしゃれで特別”を成立させる運用)
- V:高(体験満足・想起・再来店に直結)
- R:中(体験型は多いが“文房具体験×空間×企画”は限定)
- I:中〜高(企画力+現場オペの積み上げが必要)
- O:中(属人化しやすい → 標準化余地)
結論(仮):Oを上げる(運用標準化)ことで持続性が上がる → 投資候補
強み候補②:予約前不安の“一枚集約”情報設計
- V:高(予定化→予約の摩擦と不安を下げ、機会損失を減らす)
- R:低〜中(やれば多くができる)
- I:低(模倣されやすい)
- O:高にしやすい(テンプレ化可能)
結論(仮):差別化より「標準化で負けない」領域(守りの強化)
強み候補③:SNSでの“休日の過ごし方”提案コンテンツ
- V:中〜高(想起・来店理由づくり)
- R:中(世界観の一貫性が出せれば希少性)
- I:中(継続の難しさが壁)
- O:低〜中(継続体制がないと途切れる)
結論(仮):O(継続運用)を整備できれば投資対象に化ける
5-B. 文房具カフェオンラインストア(自社EC)
強み候補①:正規性(公式ルート)+企画背景の説明資産
- V:高(正規性不安・買い逃し不安の低減/納得に直結)
- R:高(公式しか言えない情報・根拠がある)
- I:高(非公式は同じ根拠を作れない)
- O:中(ページ構造・制作体制・更新ルールが必要)
結論(仮):VRIOが揃いやすい「投資対象」。Oを上げると持続性が最大化
強み候補②:要点サマリ(締切/発送/注意)の情報設計テンプレ
- V:高(Search→Actionの不安・迷いを短時間で解消)
- R:中(やればできるが、徹底できる組織は限られる)
- I:中(形式は模倣可だが、精度と継続が壁)
- O:高にしやすい(テンプレ運用で再現性を作れる)
結論(仮):差を作るというより「勝ち筋を安定させる運用資産」→投資/標準化の境界
強み候補③:購入後体験(同梱・開封・使い方・次回予告)
- V:中〜高(満足→レビュー/共有→想起→次回購入)
- R:中(丁寧にやる事業者は多くない)
- I:中(やろうと思えばできるが、継続・設計が必要)
- O:低〜中(制作・封入・CS連携が必要)
結論(仮):O(運用連携)を作れれば、持続性が上がる
5-C. ユウセイ堂(モール型)
強み候補①:合致確認テンプレ(チェックリスト+非対応明確化)
- V:高(合致不安を潰し、CVR・返品・低評価に効く)
- R:中(できている店は意外に少ない)
- I:中(形式は模倣可だが、SKU運用の徹底が壁)
- O:中〜高(運用ルール化できれば再現可能)
結論(仮):Oを高める(SKU運用ルール化)ことで「真似されにくい運用品質」になりやすい
強み候補②:検品・梱包・出荷の品質運用(届く安心)
- V:高(低評価・返品の抑制=長期で露出/売上にも効く)
- R:中(やり切れていない店が多い)
- I:中〜高(現場品質と仕組みの積み上げが必要)
- O:中(教育・チェック・標準化が鍵)
結論(仮):持続的優位の候補。O(教育・標準)の投資が効きやすい
強み候補③:レビューの蓄積(社会的証明)
- V:中〜高(買い手の交渉力が強い環境で“安心”の根拠)
- R:中(同カテゴリで差は出る)
- I:高(時間と実績が必要=履歴資産)
- O:低〜中(レビュー獲得導線・CS連携が必要)
結論(仮):Iは強いがOが弱いと伸びない → レビュー獲得の仕組み化が課題
6. ミニ演習(5分):強み候補3つをVRIOで評価し、投資対象を1つ決める
担当チャネルを1つ選び、強み候補を3つだけ書いて、VRIOを「高/中/低」で仮置きしてください。
ミニ演習(記入用)
【担当チャネル】____(店舗/自社EC/モール) 強み候補①:____ V:高/中/低 R:高/中/低 I:高/中/低 O:高/中/低 理由(1行):____ 強み候補②:____ V:高/中/低 R:高/中/低 I:高/中/低 O:高/中/低 理由(1行):____ 強み候補③:____ V:高/中/低 R:高/中/低 I:高/中/低 O:高/中/低 理由(1行):____ 結論: - 投資する強み(1つ):____(理由:____) - 標準化する強み(1つ):____(理由:____) - やめる/外注(1つ):____(理由:____)
コツ:迷ったら「O(組織)」を見直してください。
“良いこと”より「再現できること」に寄せると、運用が回ります。
7. よくある失敗(VRIOを“使える形”にするための注意点)
- 強みを抽象語で書く(例:ブランド力)→ 行動に落ちる資産・能力にする(例:要点テンプレ、合致チェック運用)
- Vだけで判断する → R/I/Oが弱いと「一時的・属人的」で終わる
- O(組織)を軽視する → 宝の持ち腐れになる(担当・手順・KPI・教育が必要)
- 候補を増やしすぎる → 3つに絞って決める(投資判断のため)
- 運用に戻さない → KGI・ファネル・実験に落とすまでがセット
8. ChatGPTへの質問例(この回は合計5つ)
使い方:①〜③は担当チャネルのものを1つだけで十分です。④は横断、⑤は理解チェックです。
① 文房具カフェ(実店舗):体験の強みをVRIOで評価し、投資テーマを決める
あなたは社内マーケ講師です。 文房具カフェ(実店舗)のターゲットは、表参道/原宿エリアで休日に「ちょっとおしゃれで特別な体験をしたい」20代女性です。 実店舗の強み候補を5つ挙げ、それぞれをVRIO(V/R/I/O)で「高/中/低」で評価し、理由も1行ずつ書いてください。 最後に、今期の投資テーマを1つに絞り、 それを第15回の運用(KGI→ファネル→CJM→実験)に接続する形で「次の実験案(Primary/Secondary/Guardrail)」まで提案してください。
② 自社EC:正規性・作品理解の資産を“持続的優位”として言語化する
あなたは社内マーケ講師です。 文房具カフェオンラインストア(自社EC)のターゲットは 買い逃し回避/正規ルートの安心+作品理解・作品愛(デザイン)重視です。 自社ECの強み候補を「資産(コンテンツ・データ・関係性)」と「能力(情報設計・運用)」に分けて各3つ挙げ、 VRIOで評価してください。 特にO(組織:テンプレ化・更新ルール・制作体制)をどう作るべきか、具体案を3つ提案してください。
③ ユウセイ堂(モール):運用品質を“真似されにくい強み”にする設計
あなたは社内マーケ講師です。 ユウセイ堂(モール型)のターゲットは 検索・比較して早く確実に買いたい+合致不安・届く不安なく満足して買いたい、です。 モール運用の強み候補を5つ挙げ、VRIOで評価してください。 評価の結果、I(模倣困難性)とO(組織)を高めるための運用施策を5つ提案し、 Guardrail(不一致返品率・低評価率など)も3つ挙げてください。
④ 3チャネル横断:共通の“投資すべき強み”を1つ決める
店舗(文房具カフェ)/自社EC(文房具カフェオンラインストア)/モール(ユウセイ堂)について、 それぞれの強み候補をVRIOで評価した前提で、 3チャネル共通で投資すべき強み(例:安心の標準化、情報設計テンプレ、運用品質)を1つ提案してください。 その強みがKGI(粗利/貢献利益)にどう効くかも一言で説明してください。
⑤ 理解チェック:VRIOクイズ
今日のテーマ「VRIO分析」について理解チェック問題を5問作ってください。 形式:○×2問、選択式2問、短答1問。解答と解説付き。 例は、文房具カフェ/オンラインストア/ユウセイ堂から必ず入れてください。
9. 理解チェック(3問・5分)
- VRIOの4要素(V/R/I/O)はそれぞれ何を意味する?(一言ずつ)
- 「Vは高いがOが低い」状態を一言で表すと? その時に最優先でやるべきことは?
- VRIOの結果を週次運用(第15回の型)に接続するには、次に何をする?(KGI・ファネル・実験の観点で)
10. 今日のまとめ(3行)
- VRIOは、強み(資産・能力)を 価値/希少性/模倣困難性/組織で評価し、投資の優先順位を決めるモデル。
- 結論は「投資/標準化/撤退(外注)」の3分類に落とすと、現場が前に進む。
- 結果はSWOTのS(強み)の質を上げ、バリューチェーンの強化工程を絞り、KGI→ファネル→CJM→実験へ接続して回す。
次回予告(第22回)
次回は ビジネスモデルキャンバス(BMC)(ver1.0) を扱います。
VRIOで「投資すべき強み」が見えた前提で、価値・顧客・収益・コスト・活動を1枚で統合し、
3チャネルの役割分担と収益構造の整合性を確認します。
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