第29回カリキュラム(ver1.0)
Kanoモデル:顧客満足を「当たり前/一元/魅力」に分解し、改善の優先順位(インパクト×確度×工数)と実験設計をブレなく決める
(文房具カフェ/文房具カフェオンラインストア/ユウセイ堂)
この回は「満足度調査の理論」を深掘りする回ではありません。
第9回のファネルで特定した“止まりどころ”や、第10回の優先順位付け、第11回の実験設計に対して、
「何を直すと効くのか」を満足構造(Kano)で補強し、安全に・誠実に運用へ落とす回です。
0. まず第28回(RFM分析)の要点を簡単に復習(3分)
第28回では、CRM(第13回)を「全員に同じ発信」にせず、RFM(最近×頻度×利益)で対象を切り、
“誰に何をするか”を運用できる形にしました。
- RFMは分析ではなく 意思決定装置(セグメント→次の行動→施策→実験)
- Mは売上より 粗利/貢献利益 に寄せるとKGI(利益)に接続できる(第12回)
- 最後は必ず Primary/Secondary/Guardrail で小さく検証(第11回)
ただしRFMで「誰に」は切れても、次の課題が残ります。
- 施策候補が多いと、結局「何から直す?」で迷う
- “満足”の議論がふわっとして、施策が散る
- 下流(購入/予約)だけ直して、当たり前品質の欠陥(返品/低評価/キャンセル)で事故る
そこで第29回は、改善対象を「満足の種類」で切るKanoモデルを導入し、
優先順位(第10回)と実験(第11回)をブレなくすることを狙います。
1. 今日のゴール(この回でできるようになること)
- Kano(当たり前/一元/魅力)の違いを説明できる
- 3チャネルで改善テーマをKanoに分類できる
- 分類結果を優先順位と実験に落とせる
この回のキーメッセージ
- 当たり前は欠けると致命傷(返品/低評価/離脱)
- 一元は改善すると素直に効く(CVR/予約率)
- 魅力は差別化になるが、当たり前の上に乗る
この回の成果物(軽量)
- チャネル別:当たり前/一元/魅力の仮説リスト
- 今週やる改善テーマ(1〜2本)
- 実験設計(Primary/Secondary/Guardrail)
2. Kanoモデルとは何か:満足を「3種類」に分けて、改善の順番を決める
Kanoモデルは、機能・要素が「顧客満足」にどう効くかを分類する考え方です。
実務で重要なのは、次の3分類だけです(ライト運用版)。
| 分類 | 意味 | 欠けた時 | 増やした時 |
|---|---|---|---|
| 当たり前品質(Must-be) | “できていて当然”。満足は増えにくいが、欠けると強い不満 | 致命傷(離脱・返品・低評価・クレーム) | 満足は増えにくい(ゼロを防ぐ) |
| 一元的品質(Performance) | 良いほど満足が上がり、悪いほど不満が増える | 損失(CVR/予約率低下) | 改善が素直に効く(数字で出やすい) |
| 魅力品質(Attractive) | あると嬉しい。なくても不満は出にくいが、あるとファン化や差別化 | 大事故にはなりにくい | 差別化・想起・共有に効く(第13回にも接続) |
2-1. なぜKanoが運用に効くのか
- 当たり前を先に固める → Guardrail(返品/低評価/キャンセル)を守る
- 一元で伸ばす → Primary(CVR/予約率/購入率)に効かせる
- 魅力で差別化 → 競争圧力(第19回)に対して「値下げ以外」で勝つ
3. どの順序で使うか:Kano → 優先順位 → 実験(第10回・第11回に接続)
おすすめは次の6ステップです(軽量版)。
Step 1:止まりどころ(ファネル/CJM)を固定する
- 店舗:予定化→予約
- 自社EC:Search→Action
- モール:合致確認→購入
Step 2:改善候補を5〜10個だけ出す(多すぎない)
第10回の「型(RTB/導線/見せ方/条件/露出)」で漏れなく出して、数は絞る。
Step 3:候補をKanoで仮分類する(当たり前→一元→魅力)
- 当たり前:誤認防止、条件明確、基本導線、品質、約束の遵守
- 一元:情報の分かりやすさ、速度、写真の分かりやすさ、比較のしやすさ
- 魅力:体験のワクワク、限定感(事実)、作品背景の語れる要素、特別感
Step 4:優先順位は“基本ルール”を置く
- 当たり前:Guardrailに触れるなら最優先(事故を止める)
- 一元:Primaryに効きやすいので次点(伸ばす)
- 魅力:当たり前が整ってから(差別化)
Step 5:第10回のスコア(Impact×Confidence×Effort)で上位1〜2本に絞る
Kanoは「順番のガイド」。最終決定はスコアで合意する。
Step 6:第11回の実験設計に落とす(Primary/Secondary/Guardrail)
- 当たり前:Guardrailが主役(返品/低評価/キャンセル)
- 一元:Primaryが主役(CVR/予約率)+Secondaryで理由を確認
- 魅力:Primaryは中流指標(保存/再訪/滞在)→最終的に件数へ

4. 典型パターン:Kanoで“よくある迷い”を解消する
パターンA:魅力を作ったのに売れない(よくある)
- 原因:当たり前(条件/合致/安心)が欠けていて、損失回避(第14回)が勝つ
- 処方:先に当たり前を整備 → その上で魅力を上げる
パターンB:当たり前を増やしたのに伸びない
- 原因:当たり前は“事故を防ぐ”が、伸ばすのは一元
- 処方:一元(分かりやすさ・比較・導線短縮)を改善しPrimaryへ
パターンC:一元改善でCVRは上がったが、返品/低評価が増えた
- 原因:誤認誘発・条件不明確で当たり前品質が崩れた
- 処方:Guardrailを必ず置く(第11回)+誠実な表現(第14回)
5. 御社の例:3チャネルでKano分類→優先テーマ(仮説例)
※ここは仮説例です。実務では「レビュー/問い合わせ/低評価理由(定性)」があると分類精度が上がります。
5-A. 文房具カフェ(実店舗)
| Kano分類 | 要素例 | 効き方(第9〜15回に接続) |
|---|---|---|
| 当たり前 | 料金・所要時間・混雑/予約ルールの明確化/予約導線の迷わなさ/当日の案内 | Guardrail(キャンセル/不満)を守り、予定化→予約の摩擦を減らす |
| 一元 | 予約の手数(クリック数)、情報の見つけやすさ、混雑回避の分かりやすさ | Primary(予約完了率/予約完了数)に効きやすい |
| 魅力 | “休日の過ごし方”提案/写真映え・体験の語れる要素/次回企画の予告(想起) | 想起→再来店(第13回)に効く(ただし当たり前の上に) |
優先テーマ(仮):当たり前(不安の一枚化)→一元(予約導線短縮)の順で、まず事故と摩擦を潰す。
5-B. 文房具カフェオンラインストア(自社EC)
| Kano分類 | 要素例 | 効き方 |
|---|---|---|
| 当たり前 | 販売期間/締切/発送目安/返品条件の明確化/正規性の根拠/決済・送料の透明性 | Guardrail(キャンセル・条件誤解問い合わせ)を守り、損失回避を先に潰す(第14回) |
| 一元 | 要点サマリの分かりやすさ/比較のしやすさ/画像での納得(ディテール、使用イメージ) | Primary(CVR/購入完了率)に効きやすい。Secondaryで「要点閲覧→カート」を確認 |
| 魅力 | 企画背景の連載/作品理解・作品愛の語れる要素/開封体験(同梱)/限定性(事実) | 想起・共有(第13回)→次回購買へ(RFMで優良/新規に効く) |
優先テーマ(仮):当たり前(条件/正規性の要点前倒し)→一元(要点→根拠→詳細の標準化)。
5-C. ユウセイ堂(モール型)
| Kano分類 | 要素例 | 効き方(特にGuardrail) |
|---|---|---|
| 当たり前 | 合致条件(型番/対応/サイズ)の明確化/非対応の明示/誤認防止表現/配送・梱包の約束 | 不一致返品・低評価(致命傷)を防ぐ。モールは事故が露出/信頼を長期で削る(第19回) |
| 一元 | タイトル/画像での候補入り(CTR)/冒頭チェックリストでの確信速度(CVR)/比較表の分かりやすさ | CTR/CVRに直結しやすいが、誤認誘発しない設計が必須(Guardrail併置) |
| 魅力 | “届く安心”の見える化(検品/梱包のこだわり)/Q&Aの充実/レビューでの安心強化 | 安心差別化として効くが、当たり前(合致)不備があると逆効果になり得る |
優先テーマ(仮):当たり前(誤認防止・合致条件)を最優先→一元(冒頭チェックリストで確信速度)。
6. ミニ演習(5分):改善候補をKanoに仕分けし、次の実験を1本決める
担当チャネルを1つ選び、改善候補を各3つだけ書いて分類してください。
ミニ演習テンプレ
【担当チャネル】____(店舗/自社EC/モール) 【止まりどころ(ファネル段階)】____(例:Search→Action) 当たり前(Must-be)候補(3つ): - 1) ____ - 2) ____ - 3) ____ 一元(Performance)候補(3つ): - 1) ____ - 2) ____ - 3) ____ 魅力(Attractive)候補(3つ): - 1) ____ - 2) ____ - 3) ____ 次に試す改善(1本): - 仮説(If→Then):____ - Primary / Secondary / Guardrail:____ / ____ / ____ - 期間と比較方法(A/B or 前後 or 準実験):____
コツ:迷ったら「欠けたら事故るか?」で当たり前を判定。事故(返品/低評価/キャンセル)が出るなら当たり前寄りです。
7. よくある失敗(Kanoを“誠実に”使うための注意点)
- 魅力に逃げる:当たり前が崩れていると、魅力は効かない(損失回避が勝つ)
- 当たり前を盛りすぎる:満足は増えにくい。伸ばすなら一元もセットで
- 分類で議論が終わる:Kanoは手段。最後は優先順位と実験へ
- 誤認誘発の希少性/煽り:短期CVRは上がってもGuardrailで負ける(第14回)
- Guardrail不在:当たり前改善は特に、返品/低評価の悪化を必ず見張る
8. ChatGPTへの質問例(この回は合計5つ)
使い方:①〜③は担当チャネル1つでOK。④は横断、⑤は理解チェックです。
① 文房具カフェ(実店舗):予約直前の改善候補をKanoで分類し、次の実験を決める
あなたは社内マーケ講師です。 文房具カフェ(実店舗)のターゲットは、表参道/原宿エリアで休日に「ちょっとおしゃれで特別な体験をしたい」20代女性です。 「予定化→予約」が詰まっている前提で、 改善候補を12個出し、それぞれを Kano(当たり前/一元/魅力)に分類してください。 次に、インパクト×確度×工数(1-5)で上位3つを選び、理由を説明してください。 最後に、上位1施策を実験(If→Then、Primary/Secondary/Guardrail)に落としてください。
② 自社EC:Search→Actionの施策をKanoで整理し、Guardrail込みでA/B案を作る
あなたは社内マーケ講師です。 文房具カフェオンラインストア(自社EC)のターゲットは 買い逃し回避/正規ルートの安心+作品理解・作品愛(デザイン)重視です。 Search→Actionが詰まっている前提で、改善候補を10個出してKano分類してください。 「当たり前(条件/正規性/誤認防止)」を満たしつつ 「一元(要点の分かりやすさ)」でCVRを伸ばすA/Bテスト案を1本作り、 Primary/Secondary/Guardrailと副作用対策も添えてください。
③ ユウセイ堂(モール):誤認防止を当たり前品質として最優先にしつつ、CTR/CVRを伸ばす
あなたは社内マーケ講師です。 ユウセイ堂(モール型)で「合致確認→購入」が詰まっている前提です。 改善候補を12個出し、Kano分類(当たり前/一元/魅力)してください。 その上で「当たり前(誤認防止)」を崩さずに「一元(確信速度)」を上げる施策を2つ提案し、 Guardrail(不一致返品率・低評価率など)を必ずセットで挙げてください。
④ 3チャネル横断:Kano×優先順位付けの共通ルールを作る
店舗(文房具カフェ)/自社EC(文房具カフェオンラインストア)/モール(ユウセイ堂)で、 改善優先順位の共通ルールを作りたいです。 Kano(当たり前/一元/魅力)ごとに、 - 優先度の基本ルール - Primary/Guardrailの置き方 - 典型的な失敗と回避策 をそれぞれ箇条書きでまとめてください。
⑤ 理解チェック:Kanoモデルクイズ
今日のテーマ「Kanoモデル」について理解チェック問題を5問作ってください。 形式:○×2問、選択式2問、短答1問。解答と解説付き。 例は、文房具カフェ/オンラインストア/ユウセイ堂から必ず入れてください。
9. 理解チェック(3問・5分)
- Kanoの「当たり前/一元/魅力」はそれぞれ、欠けた時・増やした時にどう効く?(一言ずつ)
- モールで「当たり前品質」を先に固めるべき理由を1つ(返品/低評価などGuardrailの観点で)
- Kanoで分類した後、なぜ第10回の「インパクト×確度×工数」で最終決定するのが良い?
10. 今日のまとめ(3行)
- Kanoは満足を当たり前/一元/魅力に分け、改善の順番(事故を止める→伸ばす→差別化)を決める。
- 当たり前はGuardrailを守るための最優先領域。一元はPrimaryに効きやすい。魅力は当たり前の上に乗せる。
- 分類→優先順位(Impact×Confidence×Effort)→実験(Primary/Secondary/Guardrail)へ落として、週次運用(第15回)で回す。
次回予告(第30回)
次回は ABC分析(ver1.0) を扱います。
商品・企画・SKUを「利益を作っている順」に並べ、限られた工数をどこに集中すべきか(選択と集中)を明確にします。
第12回(貢献利益)と第20回(バリューチェーン)の“投資先決定”に直結します。